介護保険制度改正や医療保険制度改革を受け、今、改めて保健予防が注目されている。株式会社NTTデータでは、保健予防分野で新たな事業を行っている。今回はその責任者であるライフサイエンスビジネスユニット長の窪寺氏に、その背景や事業内容について話を聞いた。
生活習慣病の広がりと終身雇用制の終焉が立ち上げの背景-まずは事業の概要について教えてください。
健康診断結果などのデータベースを構築し管理する、ASP型生涯健康管理サービスの「ヘルスデータバンク」、インターネットを介して生活習慣改善を支援する「クリエイティブヘルス三健人」、その他、レセプト分析サービス、在宅血液検査サービス、国際標準仕様による健診データ流通サービスを展開しています。
メインターゲットは企業の産業保健の現場と健康保健組合等の保険者で、健診データベースの構築と管理をベースに、保健予防活動や健康管理活動を支援しています。一見、企業団体相手のビジネスモデルのようですが、実際にサービスを利用するのは契約先の社員や被保険者を対象にしているのが特徴です。BtoBビジネスでありながら、実態としてはBtoBtoCビジネスを展開しています。 -今でこそ保健予防事業に参入する企業は多いと思いますが、御社が保健予防に着目して事業を立ち上げた背景はどのようなものでしたか?
それは大きな時代の変化、生活習慣病の広がりと終身雇用制の終焉と深く関わっています。現代病である生活習慣病は、日々の行動の積み重ねが原因となるため、その予防に時系列データは欠かせません。一方産業保健においては、従業員の健診データが毎年ストックされますが、転職などで離職すると、そのデータは次の会社に引き継がれることはありません。これではせっかくのデータを効果的に活用できません。ここにビジネスチャンスがあるのではないかと。 ヘルスデータバンクの優位性-データベース構築となれば、自社構築はもちろん他社でも手掛けられます。その中でNTTデータの優位性はどのようなところにありますか?
データベースをつくるには、アウトソーシングこそ適切な方法であると考えています。アウトソーシングというとプライバシーやセキュリティに懸念を抱きがちですが、そういった問題を起こすのはアウトソーシング先というより、多くが社内情報の精通者です。さらに今IT技術は日進月歩で進化しており、ハード、ソフト含めて必ずシステム更改が発生します。重ねてデータベース運用には専門の管理者も必要です。自社構築したとしてもそういったコストが毎月発生し、結局はアウトソーシングの方が安全で効率的になることも多いのです。 -ヘルスデータバンクは今、何社くらいで導入されているのですか?
グループ会社をひとつと数え、現在30数団体の企業や健康保険組合にご利用いただいています。登録者数は100万人を超えており、うち有効利用している人は約75万人(2006年3月末時点)を数えます。2、3年後には登録者数を500万人、さらには、1,000万人に伸ばしたいと考えています。 ポイントサービスが話題のクリエイティブヘルス-インセンティブを導入してウォーキング習慣を定着させるという、ポイントサービスを開始されたということですが、それについて簡単に説明ください。
NTTデータでは、1998年から生活習慣改善を支援するサイト「三健人」を運営してきました。そのサイトがリニューアルし、今年5月に「クリエイティブヘルス 三健人」として運営を開始しました。キーワードは自然治癒力、つまり自分の体の声を聞きながら健康な体づくりをしようというものです。 -ウォーキングは継続が難しいと思われますが、インセンティブによってどのくらいの継続効果が見込めるのでしょうか?
サービス提供に先駆け、昨年末から3ヶ月間の実証実験を行いました。オムロンヘルスケア社製の歩数計を無料で1,800個配布したところ、うち1,200名がサイト登録を行いました。その中で実際にポイントをギフトに換えたのが600名。三分の一の人がウォーキングを継続したということになります。詳細の分析は必要ですが、これはかなり高い継続率といえます。インセンティブが効果的なのではないかという感触をつかみました。 -ポイントサービスでの事業展開はどのようにお考えですか?
これから健康保険組合などにヘルスポイントサービスの提案を行っていきます。ウォーキングだけで健診データが飛躍的に改善することは難しいとは思いますが、ウォーキングをきっかけに健康に対する意識が変われば、1年後、2年後に何か形になって現われるでしょう。ウォーキングを推奨しそのデータを蓄積することが、保険者にとって大いに役立つはずです。 保健予防事業のこれから-保健予防分野では御社は一歩先んじているわけですが、これからは競争が激しくなることが予想されます。その中で、今後どのような事業展開をお考えですか?
これまで個々人の健診データは、医療スタッフによって管理されてきたといっても過言ではありません。会社も社員に健康診断を受けさせ、適宜対処してきました。しかしこれからは個々人が自ら責任を持って自分の健康を管理するよう、動機付けていきたいですね。つまりBtoBtoCではなく、BtoCの事業に進出したいと思います。 -個人に対しては、どのようにアプローチしていくのですか?
今われわれはBtoBビジネスモデルによる財産を数多く持っています。その強みを生かし、エンドユーザーである個人をたくさん抱える企業とのコラボレーションを積極的に進めたいと考えています。そういった企業と協調して、個人契約によるデータベースが構築できるよう仕向けていきたいですね。
■取材を終えて
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