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[海外注目企業の継続支援編] 2015年10月20日号
           ≫≫≫Author:脇本和洋
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「海外注目企業の継続支援編」を執筆している脇本和洋です。
 
先週、健康行動の支援技術を紹介する「継続ドライバ紹介」のセミナーを行いました。質問をたくさんいただき、私も大変勉強になりました。
健康行動は何を選ぶにせよ、「継続」が命と思っています。これからも継続に関して深く入り込み、研究成果、プロジェクト経験をお伝えしていきます。
 
それでは、今回のメインコンテンツです。今回は、「ストーリー」を使った継続支援をテーマにお届けします。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---「ストーリー(物語)」を使った継続支援
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「コミュニティのラボ化」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 新商品・サービス、海外 ウェアラブル動向など10本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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【テーマ:「ストーリー(物語)」を使った継続支援】
 
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ストーリーを使った継続支援とは
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「ストーリーを使った継続支援」は、創業や新しい商品・サービス立ち上げの経緯を物語としてみせ、顧客の感情を動かし、関係性を深め、商品・サービスの継続利用を促すものです。
 
顧客側からみると、ストーリーに共感し、企業のファンになり、継続的につながっていたいと思うということです。
 
今回は、ストーリーを使った継続支援をテーマに、3つの事例を紹介します。
 
 
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事例1:Patientslikemeのストーリー
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Patientslikemeは、難病患者のためのコミュニティサービスを提供。同じ病気や症状に苦しむ患者同士が、症状や治療法のデータを共有することで、新たな対策を見つける集合知サイトです。
 
●Patientslikemeのストーリー
 
Patientslikemeを創業した兄弟(B.HeywoodとJ.Heywood)には、Stephenというもう一人の兄弟がいて、1999年にALSという難病と診断されました。Heywood家族は、ALSの進行を遅らせる情報を収集したり、医師を回ったり、同じ症状の人を探したり、様々な手を尽くしました。しかし、進行を遅らせることができませんでした。
 
そこで、自分たちでサイトを立ち上げて、ALSにうまく対処している人を探して様々な方法を知り“兄弟の役に立ちたい”、そんな想いで創業しました。なので、このサイトの最初の会員は私たちだったと語っています。
 
その後、サイト会員が増えるにしたがって、家族としてALSにうまく対応できるようになり、同じ境遇の人や家族をもっと救いたい、そんな想いが根本にあります。
 
・参考>Our Storyの内容
 
 
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事例2:Redbullのストーリー
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Redbullは、1984年設立のエナジードリンクを販売するオーストリアに本社を置く企業。世界167か国に販売。2014年度の売上は、51.1億EUR(1EUR=130円として約6600億円)。
 
●Redbullのストーリー
 
1982年、大手食品会社で働いていたオーストリア人のマテシッチ氏は、海外出張で年の大半をすごしていました。当時、経済成長の著しい日本の高額納税者の一位がトヨタやソニーの経営者でなく、リポビタンDを販売する大正製薬の経営者であることを知ります。
 
また、東アジアでこのエナジードリンクが売られていることを知ります。そして同氏は、あらゆるエナジードリンクを試し、海外出張の長時間フライトの後に飲むと元気でいられることを自ら体感し、これをヨーロッパの人に届けたいと思いました。
 
1985年に大手食品会社を退職した後、収入ゼロの中で創業、タイのRedbull社と契約。しかし、ヨーロッパでは法律上、同食品の販売許可がおりませんでした。かなりの苦労の末、1987年にオーストリアで許可がおり販売を開始。しかし、隣国であり市場規模の大きいドイツでは販売許可がおりませんでした。
 
しかし、ドイツの若者の間で「怪しい素材が入っていて、効果がある」という噂がたち、ドイツ国内にオーストリアから密輸品が多く入り、夜のバーで流行るという社会現象になりました。その結果、ドイツ国内で発売許可がおりる前に認知が急上昇、販売後は爆発的に売れることになりました。
 
・参考>レッドブルはなぜ世界で52億本も売るのか(日経BP)
 
 
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参考事例:わかさ生活のストーリー
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日本では、ストーリーをうまく使っている事例としてサプリメント販売を行う「わかさ生活」をあげることができます。同社社長の角谷氏は小学校の時に体験した事故が原因で視野の半分を失いました。
 
その後ブルーベリーと出会い自らの視野が回復。その思いを胸に、自分と同じ「目」で悩む人を救いたいという想いがあります。
 
・参考>わかさ生活 誕生物語
 
 
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「ストーリー」を企画する際のポイント
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実は今回紹介した3事例には、What(商品やサービス)による継続支援も充実しています。さらにストーリーによりWhy(なぜこの仕事をしているのか)を提示することで、継続支援を強化しています。
 
Why(なぜこの仕事をしているのか)をうまく提示できれば、顧客の心に訴えかけ、印象が強く残り、継続につながる可能性が高まります。
 
今迄私たちがストーリーの企画支援をしてきた経験を元に、企画のポイントを紹介します。
 
 
●「だれが、だれのためにやった」かをはっきり設定する
物語には、主人公が必要です。そして、だれのために考えたかが必要です。Patienstslikemeは「創業者が家族のため」、Redbullは「創業者がエネルギードリンクを飲んだ喜びをヨーロッパの人のために」、わかさ生活は「創業者が自分と同じ目のことで悩む人に」ということです。
 
●「山あり谷あり」を見せる
物語では、共感が必要です。そのために「山あり谷あり」を見せます。Patienstslikemeは「創業するまでの家族の苦悩と、創業後に会員となり自分たち家族がうまくいったこと」、Redbullは「販売許可がおりず苦難を極めた中で、密輸によって市場が広がったこと」、わかさ生活は「不遇の時代を長く送りながら、創業に結び付けたこと」ということです。
 
●伝えたい「教訓」を意識すること
物語では、聞いた後に最終的に何を感じてもらいたいか(教訓)を意識しておくことが必要です。つまり、自分ごととしてどのように解釈してほしいかです。Patienstslikemeは「家族を愛する大切さ」、Redbullは「好きなことを突き通す勇気」、わかさ生活は「どんな不遇にあってもあきらめない気持ち」といったことが、教訓として考えられます。
 
 
今回は、「ストーリー」を使った継続支援をテーマにお届けしました。企画の際には、是非これらのポイントを使ってみてください。
 
 
 
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下記は、継続支援に関するスポルツからのお知らせです。
 
 
【継続率向上のためのスポルツのサポートサービス】
 
■継続ドライバとは
 
スポルツでは、国内外の様々な健康ビジネス事例研究、専門家へのヒアリングから、顧客の健康行動の継続支援技術を探査・抽出・整理して「継続ドライバ」と命名、2007年から自主研究、現場への活用を行っています。
 
■継続ドライバのオープンセミナー(11月、12月開催)
継続ドライバ全体を紹介するオープンセミナーを定期開催しています。事例を使って一つ一つの継続ドライバを紹介します。
 
・11月17日開催
・12月10日開催
 
■健康食品、ウェブ、施設サービスの利用継続率を伸ばすための「継続支援企画」
継続ドライバを活用いただき、貴社施策の費用対効果を高めるというものです。社内セミナー、ベンチマーク調査、共同企画という3つのメニューでサポートしています。
 
 
 
【Health2.0 ASIA - JAPAN PatientsLikeMeのリシ・バレラオ氏講演】
 
 
11月4日に、5日に東京で開催される「Health2.0 ASIA - JAPAN」にて、今回の事例で紹介したPatientsLikeMeのディレクター リシ・バレラオ氏が4日のプログラムにスピーカーとして登場します。
 
・Health2.0 ASIA - JAPAN
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「コミュニティのラボ化」
 
自社サービスユーザーのコミュニティはまさに商品開発・サービス品質向上のためのラボ(研究所)でもあります。コミュニティ構築・運営が企業サービス品質と鮮度の鍵を握ります!
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ!
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[1]厚生労働省、「データヘルス・予防サービス見本市2015」の開催について
開催日は12月15日(火)。社会全体における個人の健康づくりを促す仕組みづくりを目的として、医療保険者等と健康・予防サービスを提供する事業者等が出会い、協働・連携を推進させる場として開催する。本イベントは本年初めて開催する取組み。来場参加申込みは11月初旬より。(2015/10/07)
 
[2]エスエスケイ、足裏の力を再生させる足袋型トレーニングシューズ新発売
足が持つ本来の機能に注目し、体全体を支える足裏の力を再生させる力を持つ地下足袋タイプのトレーニングシューズをこの秋発表。足底筋膜が鍛えられ、地面をつかむプレーを可能する。(2015/10/07)
 
[3]ソフトバンクなど全20社、「ウェルネス経営協議会」の発足について
協議会は、各企業間で健康増進に関する取組みやデータを共有し、従業員のさらなる健康増進を目指す。また、ウェルネス経営が社会全体にもたらす効果を検証し、活動を通じて得られたデータを社内だけではなく国内外に発信することで、その活動の輪の拡大を目的とする。(2015/10/08)
 
[4]ソフトバンク、診察料をケータイ料金とまとめて支払える「スマート病院会計」を提供開始
診察料を後から携帯電話料金とまとめて支払えるため、受診後の会計をせずにそのまま帰れる、など。2016年12月には1,000以上の医療機関に拡大する予定。(2015/10/08)
 
[5]オムロンヘルスケア、総務省ICT健康モデル事業で女子中高生に痩せすぎのリスクを啓発する出張授業“夢を叶えるための美人レッスン”を実施
授業では、健康で美しい女性になるための基礎的な知識を習得し、日常生活で継続して実践できることを学習目標として設定。思春期の痩せすぎが骨粗鬆症や骨折、筋力不足、出生体重低下の原因になること、女性ホルモンと身体状態の関係を解説。(2015/10/08)
 
[6]メドピア、100%クラウド型診療プラットフォームのクリニカル・プラットフォームと業務資本提携
両社は、診療所を中心とした医療現場のICT化を推進することで、医療従事者の業務負担を低減し、医療の質および患者の満足度を向上することを目的として、業務資本提携契約を締結。(2015/10/19)
 
[7]新社会システ総合研究所、IT×ヘルスケア 双方に係る法的留意点ー改正薬事法(医薬機法)のインパクトと実務対応ー
開催日は11月18日(水)。本講演では、薬事法改正が「モバイルヘルス」に与えるインパクトと、ITとヘルスケアの双方の観点から法務上特に重要となるポイントと実務上の対策を紹介する。
 
[8]調査:米国では5人に1人がウェアラブル機器を使用
具体的なデバイス別の普及率は、活動量計リストバンド「Fitbit」が36%で最多。2位も活動量計で「Nike Fuel Band」の16%。スマートウォッチの認知度を飛躍的に高めた「Apple Watch」は16%で同率2位。(2015/10/09)
 
[9]イェール大学、心筋症を持つ人々のためResearchKitアプリをスタート
「イエール心筋症インデックス」というiPhoneベースの研究は、イエール大学医学大学院の研究者E. Kevin HallとMichele Spencer-Manzon博士が開発。参加者は、自分の生活の質と心臓関連の症状に関する自己評価テストを受けることになる。(2015/10/09)
 
[10]筋トレを効果的かつ安全にするウェアラブルデバイス『Ollinfit』
「Ollinfit」は、手首、胸、太ももの3カ所に取り付けるセンサからのデータを解析して“筋トレ”を効率よく安全に実行するためのデバイス。センサで捉えた筋肉の動きの情報はBluetooth経由でスマホに送信され、アプリで動き方が適切かどうか、どの程度の力が入っているかなどの情報に変換される。(2015/10/13)
 
 
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