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[海外注目企業の継続支援編]2016年4月19日号
          ≫≫≫Author:脇本和洋
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「海外注目企業の継続支援編」を執筆している脇本和洋です。
 
今回注目する事例は、
 
Startup Healthというヘルスケア専門のインキュベーターが支援する「Savor Health(セイバーヘルス)」というベンチャー企業です。
 
インキュベーターは、独自の技術やアイデア、ビジネス戦略を持つ起業家に着目し、投資先との橋渡しや経営アドバイスなど具体的な事業化への支援を行う団体/組織のことです。
 
Startup Healthは、数多くのヘルスケア企業を支援していますが、現在特に力を入れて支援している企業の一つが「Savor Health」です。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---Startup Healthが注目する「Savor Health」の継続支援
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「mash upで新しいサービス発想を」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 アプリ動向、海外 ブレスレット型デバイスなど、11本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:Startup Healthが注目する「Savor Health」の継続支援
 
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「SavorHealth(セイバーヘルス)」とは
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■企業名:Savor Health
Savorとは「○○を味わう」という意味があるので、この社名には「健康・生きていることを味わう」という意味が込められているようです。
 
■設立:2011年
 
■設立の背景(思い)
創設者でありCEOでもあるSusan Brattonは、元々ウォールストリートで働き、ヘルスケア企業や保険会社を専門とする投資・金融関係の専門家でした。
 
ある時、近しい友人ががんにかかり亡くなるという悲しい経験をしました。その友人は当初がんと闘う気力にみなぎっていたのに、治療の過程でひどい口内炎ができ、食事を満足に摂れなくなった結果、生きる気力を失って亡くなりました。
 
彼女は、それを見て投資・金融関係の仕事を辞め、がんと食事に関する研究を始めました。その後Oncology Nutrition(がん治療と栄養療法)の専門家の助けを得て、Savor Healthを設立しました。
 
参考>動画による創業の解説
同社創業者の「Susan Bratton」が創業の理念、何ができるかを熱く語っています。
 
■ターゲット
・がん治療時(抗がん剤治療や放射線治療)における食欲維持や副作用がある中でも食事に気を使っている人、家族
・がん治療後の再発予防の食事に気を使っている人、家族
 
■提供している新しい価値
・がんの種類、ステージ、食欲、副作用などの個別の状況に合わせて、おいしく、見栄えよく、かつ最新エビデンスに基づく食事レシピと食事が「oncology nutritionists(がん専門の知識をもつ登録栄養士)」から得られる
 
■同社のサービス
・栄養療法の最新情報(無料)
・食事カウンセリング(有料)
・ミールデリバリー(有料)
 
■同社の評価記事
・AARPによる健康分野の注目スタートアップ企業ベスト10 (Health Innovation@50+ LivePitch)に選ばれる
・タイム誌の電子版で創設者/CEOのBratton氏のインタビュー動画が掲載される
・ハフィントンポスト・ウーマン紙でBratton氏が紹介される
・Everyday Healthでミールデリバリーのメニュー開発者の一人、Michael Ferraroシェフが取り上げられる
 
参考ページ>
 
 
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サービス1.同社が推奨する栄養療法の紹介
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「がんと栄養療法」に関する基本情報を公開しています。
現在PDF形式で以下の情報がダウンロードできます。(無料)
 
・がん栄養療法ガイドブック(Heal Well):アメリカがん研究協会、LIVESTRONG Foundationと共同編集したもの。
・外食時の食事の選び方(Dining Out Guide):レストランでおすすめするもの、避けた方がいいものなど
・がん治療中/治療後の体に良いスナックやデザートの紹介(Healthy Meal&snack Ideas):間食など
 
>参考ページ
 
 
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サービス2.栄養カウンセリング
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がん治療と栄養療法に関して専門的な知識を持つ登録栄養士に相談できるサービス。体調や症状に合わせた栄養療法プラン(食事プラン)を作ってもらえます。
 
■カウンセリングの流れ(概要)
 
1.予約をする
オンラインでカウンセリングの予約をする。カレンダーが表示されカウンセラーと時間の指定ができる。
 
2.初回カウンセリングを受ける
初回60分のカウンセリングで、医師の診断結果、処方薬、副作用、体力、周囲のサポート体制、食の好みといった内容を詳しく話す。(電話、ビデオ通話、メールを活用)
 
3.食事プラン(栄養療法プラン)を受け取る
カウンセリング後、栄養士が食事プランを作ってくれる。がん予防に効果的な食事、がん治療中の副作用などの症状を和らげ、治療効果を高める食事、さらにがん治療後の体力の回復を助ける食事など、患者のステージに合わせたプランを提示してくれる。
食事プランがメールで送られてくる。プランは一週間分で7日分の朝、昼、夕食メニューと、14回分の間食用メニューが記載されている。
 
4.継続カウンセリングを受ける
次回からは毎週1回15分のカウンセリングを受け、その都度食事のアドバイスを受ける。
がんの進行に合わせて、適宜食事プランを見直し、継続カウンセリングを受けていくことを推奨している。
 
■価格
・初回カウンセリング:150ドル
・食事プラン:200ドル
・継続カウンセリング:40ドル
 
参考>
 
 
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サービス3.ミールデリバリー
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個々の患者のニーズに合わせて作った食事をデリバリーしてもらえるサービス。食事は基本的に一週間分が一括して届く。各料理が真空パックされ、低温状態で届き、冷蔵庫で保存する。食べる時はオーブンや電子レンジで容器ごと温めれば、すぐに食べられる。
 
がん治療時には、吐き気・おう吐、食欲不振、口内炎、味覚の低下などの様々な副作用がでてきます。その結果、「食べたくても食べられない」、「食べる気すら起きない」といった状態に陥り、結果として“がんを治せる“という自信や治療への意欲の喪失、栄養不良といった問題が起きやすくなります。
 
そこで同社では、味の嗜好性、料理の匂い、柔らかさなど様々な要素を考慮し患者が食べやすいように工夫をしています。
 
こうした工夫により患者が口から食事を摂ることで、患者は「食べられた」という満足感と自信を持つことができ、これが生きる喜びや治療への意欲を高めることにつながるのです。
 
 
■メニュー例:朝食+昼食+夕食+デザート:492ドル(7日分)
平均すると一日当たりの食費は70ドルくらい。
 
参考>
 
 
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「Savor Health」にみる継続支援のポイント
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スポルツが国内・海外の事例研究から整理した10個の「継続ドライバ」(顧客の健康行動の継続支援技術)的にみると、「Savor Health」は、「パーソナライズ」をうまく絡ませた事例と言えます。
 
参考>継続ドライバ
 
 
●変化対応がパーソナライズの真骨頂
 
がんの食事では、がんの種類、進行度、治療薬の種類、必要とされる栄養素、その人の嗜好など様々な要素を考慮する必要があります。
 
状態が進行していくだけに、「変化に対応する」ことが必要となり、そこにパーソナライズしていくことの価値がでてきます。同社は初期のカウンセリングだけでなく、継続カウンセリングで変化対応するしくみになっています。また、ミールデリバリーでも変化に合わせてパーソナライズしていきます。
 
 
●信頼できるプロによるパーソナライズ
 
また、パーソナライズしてくれる人が、がん治療と食事に関して専門的な教育を受けた登録栄養士であるという点が特長です。
 
同社の「oncology nutritionists」は登録栄養士の資格に加え、2000時間のがん栄養療法の実務経験を経て、がん栄養療法の資格(Oncology Nutrition specialization/CSO)を有しており、いわゆる“がん専門の栄養士”です。
 
こうした最新の治療知識を備えたプロによって食事プランを作ってもらえるというのは、患者にとって何より安心なことではないでしょうか。
 
 
 
今回の事例、いかがでしたでしょうか。
 
同社のビジネスは、カウンセリングと商品を絡ませた展開です。収益としてどちらが大きいかはよくわかりません。
 
しかし、カウンセリングで顧客と感情が十分に共有された後、専門家の推奨する食品を購入するというのは流れとして自然です。
 
・個の信頼から、商品展開していくモデル
 
とも言えるでしょう。
 
「商品を販売する時に付帯的に電話相談がつく」。
そんなモデルの真逆のビジネスとも言えます。
 
現在、商品展開はミールデリバリーだけでなく、サプリメント、シェイクなど種類を広げ始めました。
 
参考>同社のレコメンド商品
 
 
「サービス先行で食品を販売する」注目事例と言えないでしょうか。
 
 
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◇スポルツサービスのご案内
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●健康ビジネスの調査、企画の支援企業をお探しの方
私たちのサービスメニューの紹介です。我々が蓄積してきた海外・国内の成功事例を最大限使っていくスピードに特長があります。
 
●セミナー:継続ドライバの理解と「使い方」を学びたい方
継続支援の技術を10個に体系化した「継続ドライバ」を紹介するオープンセミナー。その「使い方」も紹介。6月23日開催です。
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「mash upで新しいサービス発想を」
 
貴社サービスと他社サービスとのmash up(技術やコンテンツを組み合わせる)で顧客満足の創造を仕掛けてみましょう!
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <11クリップ>
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[1]ソシオネクスト、「viewphii」ラインナップを拡充 「メディカルIoT統合ソリューション」として新たに展開【PDF】
メディカル・ヘルスケア分野のソリューションとして新たに「モバイル連続血圧計ソリューション」「モバイル心電計ソリューション」をラインナップに追加。4月20日から東京ビッグサイトにて開催される「MEDTEC Japan 2016」で新しい「viewphii」の各ソリューションを展示する。(2016/04/05)
 
[2]リンクアンドコミュニケーション、健康アドバイスアプリ「カロリーママ」をリリース
毎日の食事や運動、体重などのすべての健康記録に管理栄養士がすぐアドバイスする健康アドバイスアプリ。毎日、毎食、食事を入力すると必ずすぐにアドバイスがあり、次に何を食べたら良いかまでわかる。(2016/04/07)
 
[3]スマートメディカル、メンタルヘルス・アプリ「EmoWatch」をリリース
Apple Watch初の音声感情解析アプリ。Apple Watchに音声を吹き込むだけで、いつでもどこでも自身の心の状態のチェックが可能。記録はiPhone上でグラフ化され、感情の推移がひと目で確認できる。(2016/04/07)
 
[4]「生体センシング、米国の開発動向を探る」第1回米国特許動向で斬る!心拍/脈拍センシング技術(日経デジタルヘルスより)
バイタルサインセンシング技術に関する米国特許分析と事業化動向。本稿は「心拍/脈拍」「血圧」「心電」「血中酸素」という4種類のバイタルサインの測定(センシング)技術に関して、米国で出願された特許を分析したもの。(2016/04/07)
 
[5]経済産業研究所、なぜ人々はメンタルヘルスを毀損するリスクを冒してまで長時間労働してしまうのかー仕事満足度とメンタルヘルス、労働時間に関する検証ー
本稿は、過労がメンタルヘルスを害することが世間的に広く認知されているにもかかわらず、長時間労働をする人の意思決定を検討した。実証分析の結果、まず労働時間が長くなるほど、労働者の仕事満足度が増していくような関係が見出されることが分かった。(2016/04/11)
 
[6]帝人、スーパー大麦Webサイト「大腸ラボ」を開設
「大腸の奥」の健康を考える情報サイト。「大腸の奥」の健康の重要性について啓発を図るとともに、スーパー大麦の機能とその研究結果について発信していく。(2016/04/11)
 
[7]FiNC社長・溝口勇児×田原総一朗対談:大企業が続々出資!高卒社長が仕掛ける「モバイル×健康」(PRESIDENT Onlineより)
田原総一朗「次代への遺言」完全版 PRESIDENT 2016年4月18日号より。個人向けオンラインヘルスケアサービス「ダイエット家庭教師」などを提供するFiNCの溝口社長との対談を掲載。(2016/04/11)
 
[8]肌に貼るだけで血糖値を測定&投薬!画期的なパッチが5年以内に実用化へ
糖尿病の治療法のひとつに、インスリンを注射する薬物療法があるが、これには採血したり注射を打ったりと痛みや煩わしさが伴う。今回開発されたパッチはこうした悩みを一挙解決する。(2016/04/06)
 
[9]スマートジュエリー企業Ringly、歩数計測ブレスレットを発表
ユーザーに電話、テキストメッセージ、メールを通知することに加え、活動(歩数)を記録できるブレスレット。ブレスレットのデータはスマートフォンのコンパニオンアプリに送られ、毎日の歩数や消費カロリーを表示する。(2016/04/08)
 
[10]自宅で遺伝子検査が可能な『Bento Lab』
生体サンプルから遺伝子を抽出したり、遺伝子を増殖させたり、簡単な遺伝子分析が行えるコンパクトなDNAラボキット。ケースの中には“遠心分離機”“サーマルサイクラー”“電気泳動ゲルユニット”が搭載されている。(2016/04/11)
 
[11]『mHealth Watch』注目ニュース:デバイスとアプリの満足度の違い
顧客のコンパニオンアプリに対する満足の基準値は、ハードウェア製品に対する満足度よりずっと低いことがわかった。さらに興味深いのは、ユーザーのアプリに対する評価とデバイスに対する評価が全てのウェアラブルデバイスで同じではないということ。(2016/04/11)
 
 
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