健康ビジネス問題解決サポートメディアHealthBizWatch
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[ヘルスコーチングの視線編]2016年5月31日号
          ≫≫≫Author:里見将史
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
これまで「ヘルスコーチングの視線」では、ヘルスコーチングの解説やヘルスケアサービスの中での「ヘルスコーチング」の活用や具体的な事例をご紹介してきました。
 
そこで、今回から複数回に渡って実際にヘルスコーチングをサービスとして取り組んでいる現場の方々の生の声をインタビュー形式でご紹介していきたいと思います。
 
1回目は、NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンの最上輝未子代表に、糖尿病に特化した糖尿病療養指導のためのコーチングプログラム「糖尿コーチング」についてインタビューさせていただいたのでご紹介します。
 
もともとNPO法人ヘルスコーチ・ジャパンでは、人生を豊かにする3つの基盤として、心の基盤、体の基盤、関係性の基盤があると定義し、そんなしなやかさを備えることができるトレーニングプログラムを提供しています。
 
 
■□■□■□■ I N D E X ■□■□■□■
 
【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---「ヘルスコーチング最前線インタビュー:糖尿病コーチング」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「ご縁づくり」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 体重管理サービス、海外 ウェアラブル動向など、8本
 
─────────────────────
 
◆◇◆---------
【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
◆◇◆---------
 
テーマ:ヘルスコーチング最前線インタビュー:糖尿病コーチング
 
-----------------------------------
1.NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンについてお聞かせください。
-----------------------------------
 
(最上氏)
「ひとり一人の基盤づくりを通して組織と社会の元気づくりに貢献する」ことを理念とした講座を各地で提供しているNPO団体です。
2008年に福岡でスタートし、東京・大阪・福岡で定期的にメンタルコーチング・ヘルスコーチング講座を開催、これまでのべ4,768名が受講し、それぞれの所属コミュニティーで成果を出しています。
運営メンバーは約100名います。
 
糖尿病コーチングは、これらの本講座とは別ラインで行っている医療従事者専用の特別プログラムです。
 
 
-----------------------------------
2.糖尿病療養指導のためのコーチングプログラム提供に至った経緯をお聞かせください。
-----------------------------------
 
(最上氏)
わたしはもともと薬剤師として総合病院に勤務した経歴を持っています。
 
2000年にコーチングに出会った時、医療分野で大いに使えると直感したので、母校九州大学医学部の専門職大学院に入り、糖尿病患者を対象とした疾病管理システムの研究チームに加わらせていただきました。
 
奇しくも、特定保健指導が始まる前の年でした。
 
その後、NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンを立ち上げ、ビジネスコーチングとは一線を画した、メンタルコーチング・ヘルスコーチングの講座を開催していたのですが、そこに受講者としてお見えになったのが、糖尿病専門医の大石先生、森岡先生です。
 
話しをするうちに意気投合し、糖尿病患者の療養指導に特化したコーチング講座を大石先生の地元である京都で開催するようになりました。2012年のことです。
 
その後、試行錯誤を重ね、現在に至っています。
 
 
-----------------------------------
3.糖尿病療養指導のためのコーチングプログラムは、どんな専門家が関わって作り上げたプログラムなのでしょうか?
-----------------------------------
 
(最上氏)
糖尿病専門医であり、ご自身のクリニックで実際に糖尿病コーチングを実践していらっしゃる大石先生、森岡先生、そして、国際コーチ資格を持ち、プロコーチとして活動している伊藤三恵コーチ、高橋美佐コーチ、最上輝未子が関わっています。伊藤三恵コーチは、ベテランの1型糖尿病患者でもあります。
 
つまり、ヘルスコーチ・ジャパンの糖尿病コーチングは、糖尿病と日々向き合っている医師と患者、そして、プロコーチとして活動している国際的にも認められたコーチングのプロが、共にディスカッションを重ねながら創っていることになります。
 
講座では、大石医師・森岡医師がコーチ役、1型糖尿病患者である伊藤三恵さんや、同じく1型糖尿病患者である受講者の方がクライアント役となった、ガチな診察室コーチングを毎回見ることができます。
 
これは受講者の方に、かなりインパクトがあるみたいです。
 
こんな短時間で、こんな変化が起こるんだということ、しかも、現役の医師が使うとコーチングはこうなるんだということを生で見ることができるからです。
 
デモンストレーションでは、毎回コーチ役の医師は何をしていたのか、患者に何が起こっていたのか、プロコーチによる詳細な解説が入ります。
 
日本中どこを捜しても、これほど現場に即した講座はないと自負しています。
 
 
-----------------------------------
4.糖尿病療養指導のためのコーチングプログラム「糖尿病コーチング」はどんな方を対象としたどんなプログラムですか?
-----------------------------------
 
(最上氏)
糖尿病療養指導に係わる人すべてを対象としています。
具体的には、医療従事者、家族、ピアサポートをしたい患者本人です。
最近は、チーム医療にも使えるということで、製薬会社のMRさんも多数参加されています。
 
 
-----------------------------------
5.「糖尿病コーチング」のプログラムの概要と特徴をお聞かせください。
-----------------------------------
 
(最上氏)
一番力を入れているのは、これまでの固定化した「療養指導者と患者の関係」とは全く違う「対等な関係」を作ることです。
 
このことは、医療者にはことのほか難しいようで、ついつい患者心理を無視した”教える人”になってしまい、患者の”依存”や”拒絶”を誘発する関わり方になっています。
 
プログラムは、基礎編・スキル編・関係性編から構成されていて、もっと本格的にコーチングを学びたい方は、一般ビジネスマンや経営者も参加している本講座の方に進まれます。
 
基礎編・スキル編では、コーチングの基本的なスキルを学びます。
 
関係性編では、医療従事者と患者がこれまで構築してきた関係をいちから見直し、関係性を再構築すると共に、患者心理への理解を深め、患者の本音を引き出す関わり方を学びます。
 
いずれ、受講者が持ち寄ったケーススタディを扱う実践編を行う予定ですが、現在のところ実現できていません。
 
「あなた治す人、わたし治してもらう人」から「糖尿病と共に闘うパートナーシップを築く」具体的な関わり方を学ぶのが「糖尿病コーチング」です。
 
 
-----------------------------------
6.これまでの一般的な糖尿病患者さんへのアプローチと「糖尿病コーチング」のアプローチで大きく異なる点はどんなところでしょうか?
-----------------------------------
 
(最上氏)
糖尿病コーチは下記のような関わり方をします。
 
・患者が本音を話せる関係性を作り、上手にそれを引き出す関わり方
・専門家として、患者が欲している情報を適切なタイミングで提供しながら、患者自身が自分に最もフィットした解決方法を探すプロセスを手伝う関わり方
 
一番やってはいけないのは「勝手な推測で代わりに解決モードに入り、医療者が考えるベストな方法を一方的に患者に押しつける関わり」です。
 
これをやると患者は、うそをつき、口数が少なくなり、診察室に入るたびに「すいません」と言うようになります。
 
 
-----------------------------------
7.「糖尿病コーチング」を使うとどんな変化が起こるのか、具体的な成果を教えてください。
-----------------------------------
 
(最上氏)
大石先生と森岡先生は、数年前から「糖尿病コーチング」を使った診療をなさっています。
 
大石先生のクリニックでは、看護師や管理栄養士のコーチングが診療プロセスの中に組み込まれていて、クリニック全体がチームとなり、ひとりの患者をサポートされています。
 
大石クリニックの紹介記事
 
森岡先生は、昔ながらの典型的なお医者さまであるお父様のクリニックを引き継がれ、診察にコーチングを導入されました。その結果、患者に次のような変化が起こったそうです。
 
・患者が謝りながら入ってきて謝りながら出て行くことがなくなる
・うそをつかなくなる(正直になる)
・「先生、こういうときはどうしたらいいんですか?」と積極的に医師に質問するようになる
・「こういう方法を試してみたいけどどうですか?」と自ら方法を考えるようになる
・なによりも、笑顔が増える!
 
これらの変化は、医師の関わり方が「どうやってこの人を変えてやろうか?」から、「その人が変わることをどうやって手伝おうか?」に変わったことで起こったそうです。
 
森岡先生のインタビュー動画
 
森岡先生が良く言われるのですが、最初の頃は「どうしてインシュリンが嫌なんですか?」の問いかけがなかなかできなかったとのこと・・・
でも、その問いを言えるようになって、患者は激変したそうです。
 
思い切って問いかけてみると、医者が想像もしないような意外な理由が出てくる。
そして、それに対して、安心できるような情報を伝えると患者は動き出す…。
 
是非、みなさんも糖尿病コーチングを学んで、ひとりでも多くの患者さんの笑顔を引き出してもらいたいと強く願います。
 
 
-----------------------------------
8.今後「糖尿病コーチング」をどのように拡大させていきたいですか?
-----------------------------------
 
(最上氏)
糖尿病は、生活習慣病の代表的な病気です。糖尿病患者に有効な関わり方は、すべての生活習慣病にも応用できます。
 
医療費高騰が社会問題となり、高齢化と共に健康への関心が高まっている今、運動・睡眠・食事に関わるすべてのヘルスケアサービスで有効に使うことができると確信しています。
 
たとえば、アメリカのように、それぞれの会社がお持ちの商材と組み合わせてヘルスコーチが当たり前のように活躍する日も遠くないと思っています。
 
 
 
今回は、NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンの最上輝未子代表に糖尿病療養指導のためのコーチングプログラム「糖尿コーチング」についてのインタビューでした。
医師はもちろん1型糖尿病患者であるプロコーチといっしょに作り上げてきているからこそ現場で活かせるプログラムだと感じています。
 
次回も、実際にヘルスコーチングに取り組んでいる現場の方の生の声をインタビュー形式でご紹介していきたいと思います。
次回もご期待ください!
 
 
 
【ヘルスコーチングのサポート】
 
オンラインを活用したヘルスコーチングプログラムに関しては、まだ日本でのサービス事例は私が知る限りでは、弊社がサポートした事例のみだと思います。
というのは、「ヘルスコーチング」をヘルスケアサービスの視点で捉えてオンライン上で設計できる専門家が存在していないためです。
 
私はコーチングの資格を取得し、健康ビジネスの領域に応用できないかと検討してきた中から、ヘルスケアサービスのポイントとコーチングのコミュニケーション技法の中からオンラインでのヘルスコーチングとしての要素を整理し確立しています。
 
ヘルスケアサービス領域を熟知し、且つヘルスコーチングの要素を整理している唯一の専門家として、オンラインでのヘルスケアサービスにヘルスコーチングを組み込むための企画・設計はもちろん、運用を数多く実施しています。
 
ヘルスケアサービスの活用や運用についてサポートしていますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。
 
 
 
 
◆◇◆---------
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
◆◇◆---------
 
≫≫≫「ご縁づくり」
 
お客様との関係をご縁づくりであると発想すると、お客様のことをもっと色々知りたくなってくる。そしてお役に立ちたい気持ちが育ち始める。
 
 
 
◆◇◆---------
【3】今週の注目デジクリップ! <8クリップ>
◆◇◆---------
 
[1]日本駐車場開発・おかん・ウエルネスデータ、国内外のリーディングカンパニーが集う東京・丸の内を健康経営の最先端地域へ「丸の内ヘルスアップ実証プロジェクト」始動
丸の内に勤務するビジネスパーソンの健康意識・行動を変容し、健康経営が企業活動に及ぼす影響を実証するための前後比較調査「丸の内ヘルスアップ実証プロジェクト」を発足。(2016/05/23)
 
[2]アステラス製薬、第一三共、武田薬品による健康成人を対象としたバイオマーカーのデータ基盤構築に関する共同研究契約締結について
本契約に基づき、3社は生体内タンパク質や代謝物をバイオマーカーとした臨床試験を実施する上で必要となる健康成人におけるバイオマーカーの基礎データを網羅的に取得し、共同で解析を行う。(2016/05/23)
 
[3]マニュライフ生命、楽しく歩いて社会貢献もできるウォーキングアプリ「Manulife WALK」を発表【PDF】
心身の健康促進をテーマとした新たな社会貢献活動の取り組み「Manulife Wellness Lab」をスタートし、プログラム第1弾として健康増進のためのウォーキングを促す無料アプリを発表。(2016/05/19)
 
[4]Polar Japan、「Polar Balance」を発表
活動量計/体重計と連動させた体重管理サービス。1日に必要な運動量は活動量計のアクティビティ目標と同期し、毎日の運動量と食事量をクリアしていけば中長期的に無理のないダイエットが実現できる製品。(2016/05/18)
 
[5]資生堂、銀座医院と協働で「健康美容ドック」を展開
健康美容ドックは、健康と美容が密接な関係にあり、また双方とも高いニーズがあることを踏まえ「美しい肌の実現には心身の健康を保つことが大切である」という考え方に基づいて銀座医院と協働で開発した女性のための新たな健康・美容提案。(2016/05/17)
 
[6]Fossil、時計と重ね付けできるブレスレット型ウェアラブル『MISFIT RAY』
Fossil Groupは、ウェアラブル端末MISFITシリーズの最新版としてブレスレット型の「RAY(レイ)」を日本でも発売すると発表。サイズは直径12mm、長さ38mm、重さは8gと軽くシンプルで、アクセサリ感覚で身に着けられる。(2016/05/19)
 
[7]Fitbit、ヘルスケア戦略を拡大し、FDA承認をクリアするデバイスをほのめかす
itbit CEOのJames Park氏は、先日の第一四半期の業績発表で、自社製品が医療分野において役割を拡大する可能性を語った。(2016/05/19)
 
[8]Apple、『Apple Watch』の機能はバンドで拡張
スマートウォッチのバンドを構成する各“駒”に電子機器モジュールとしての機能を持たせ、スマートウォッチの機能を拡張する技術を説明している。それぞれの駒は電気的に接続され、さまざまな信号をやり取りできる。(2016/05/18)
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━