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[海外注目企業の継続支援編]2016年8月23日号
           ≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本です。
 
家族が病気になると、同居する家族に、精神的・肉体的に長期間大きな影響がある疾患があります。
 
例えば、「うつ病」「認知症」です。
 
うつ病患者は全国に320万人、認知症患者は全国に242万人、それぞれ患者数は伸び続け、その数だけ体調を崩す家族が今後も増えていきます(私も過去に家族にうつ病・認知症患者がおりました)。
 
家族の日常生活への影響を減らし、適切に家族で対応することが、今後の日本社会にとって、まさに必要となっています。
 
そこで今回は、「うつ病」の患者・家族に対して“ICT+人”を活用してサービスを提供しているベンチャー企業「Mindoula(マインデューラ)」を紹介し、日本での展開ヒントを考えます。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---うつ病患者・家族のコンシェルジュ「Mindoula」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「インセンティブ」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 各種調査報告、海外 Sharecare動向など、7本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:うつ病患者・家族のコンシェルジュ「Mindoula」
 
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「Mindoula(マインデューラ)」について
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■企業名:Mindoula Health Inc.
 
■企業名の由来:Doula(デューラ)はもともとのギリシャ語ではCaregiver(助ける人、介護する人)という意味合いがあり、それとMind(心の病気)を掛け合わせてMindoulaと表現しています。
 
■設立:2013年
 
■実績(以下のアワードを受賞)
・TEDCO Technology Commercialization Fund award
・BioMaryland Biotechnology Development Award
・Finalist in the 2015 InvestMaryland Challenge
同社の心のスクリーニングテストは100万人が実施。
 
■推奨
・アストラゼネカ社(製薬企業)
「Mindoulaの革新的で、患者、家族、コミュニティに特化したプラットフォームは精神疾患患者のケアにおける様々な隔たりを十分に埋めるものだ」
 
・Axis Healthcare社(医療施設と提携しながら精神疾患を抱える患者へのセラピーやカウンセリングを行っている)
「Mindoulaの人を重視したアプローチは我々の方針とマッチしており、精神疾患で苦しむ患者や家族の世界を大きく変えるポテンシャルを秘めている」
 
 
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「Mindoula(マインドューラ)」の事業コンセプト
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それではまず、事業コンセプトをみましょう。
 
■ミッション
創設メンバーは、自分または家族が何らかの精神的疾患を抱えた経験がある。医学的な診断よりも、患者や家族といった“人”を助けるという視点に基づいたサービスを提供する
 
■ターゲット
うつ病を中心に、気分障害、不安症などの精神的な問題に起因する何らかの行動障害を抱える患者とその家族
 
■提供する価値
・(うつ病患者にとって)臨床心理士に常に見守られ、家族と一体感をもってうつ病に立ち向かうことができる
・(うつ病患者の家族)介護家族の孤立化を防ぎ、負担を軽減することができる
 
■メソッド(新しい価値を実現する方法)
・日々のアセスメントで患者の体調を把握し、日々の相談にのる(短期)
・地域の社会資源(公的・民間で提供されている様々なサービス)を生かし、プランをたてて実行を支援する(長期)
 
■サービス
「メンタルヘルス・コンシェルジュ」と呼んでいる。日々のサポート、ケアのコーディネート、問題行動などの対処法を示唆し、長期的な見通しを示すコンシェルジュ的なサポートを行う
 
■収益源
・一般への販売
・医療機関への販売
 
 
【解説】
 
・従来、うつ病患者は病院から薬をもらい、病院などで行っている認知行動療法などに参加して一時的に考え方を学ぶことが多かったです。そして、家族にその状況はあまり共有されない場合が多くありました。結果、患者本人と家族の間で情報が分断され、家族は孤立化し心理的な負担が増えていました。
 
・「Mindoula(マインドューラ)」は、患者本人と家族を一体として考えます。臨床心理士が患者を毎日見守るとともに、状況を家族と共有しながら長期的なプランを作ります。そのプランの中には、病院の活用、最新の治療法の紹介、地域の社会資源(公的・民間で提供されている様々なサービス)の紹介を含みます。
 
・つまり、同社の事業は今まで公的サービスではうまくいっていなかった点を埋める民間サービスと言ってよいでしょう。
 
 
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サービスの流れ
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では次に、具体的なサービス内容を見てみましょう。同社では2段階のサービスを提供しています。
 
■第一段階:Discovery(1-2週間 499ドル)
患者本人と家族の状況をよく理解するための複数のアセスメントを行ない、プランをたてる。
 
<アセスメントの内容>
 
1)Biopsychosocial assessments:生物・心理・社会的な観点からアプローチする心理アセスメント
2)Technology proficiency assessment:テクノロジー習熟度アセスメント
(ICTツールをどの程度使いこなせるかのアセスメントと思われる)
3)Crisis risk assessment:危機管理のリスク評価
4)Provider and family support assessment:家族その他の介護者によるサポートのアセスメント
 
1)から3)は患者本人のアセスメントであり、4)は家族のアセスメントです。
 
これらのアセスメントで、本人や家族の置かれている状況、何が問題になっているのかを把握し、下記の事柄をデザインする。
 
・Mindoulaのスタッフチームを選定
・Mindoulaのサービスのレベルをマッチング
・短期的目標、長期的目標を決める
・アクションプランをデザイン
 
 
 
■第二段階:Concierge Case Management(コンシェルジュ・ケースマネジメント)
目標を達成するため、チームでマネジメントする。4つのプランがある。
 
<バーチャルプラン>アプリ、電話、メールにてやり取りをする
1)Light:比較的軽度の不安障害やうつ病患者向け。99ドル/月
2)Basic:軽めの問題行動が見られるケース。199ドル/月
3)Plus:中程度の問題行動が見られるケース。349ドル/月
 
<バーチャル+リアル>同社に来社し相談する
4)Comprehensive:499ドル/月
 
 
 
参考>サービスを提供する専門家
サービスを提供する専門家は、Licensed Professional Counselor(日本の臨床心理士に相当)、Certified Case Manager(公認ケースマネージャー)、Certified Rehabilitation Counselor(公認リハビリテーションカウンセラー)、Certified Peer Support Specialists(公認ピアサポート・スペシャリスト)といった有資格者で構成される。サイトには13名が紹介されている。
 
 
 
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うつ病患者の「家族」にとっての価値
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「Mindoula(マインドューラ)」のサービスは、患者自身にとっては、家族を巻き込み一体感をもってうつ病に立ち向かえるというものですが、家族にとっての価値は何でしょうか。同サイトでは以下のように記述しています。
 
家族にとっての価値は、「介護家族の孤立化を防ぎ、負担を軽減すること」
 
具体的には、
 
・問題解決とクライシス・マネジメント(危機管理)
・ケアのコーディネートと精神障害や行動障害に対する医療について情報提供
・新しい治療法を探す
・自分のメンタルヘルスを管理する方法
・問題行動によるトラブルに対処する方法
・活力あふれる家族に改善する
 
などを行う。
 
また、家族向けサービスは、場合によっては家族の構成員それぞれに専門チームがつくこともある。
 
 
 
【解説】
・うつ病患者と同居する家族にとって、患者がどんな治療経過でどんな見通し感があるかが共有できないことが大きな課題です。
・また、家族は、自分自身のメンタルヘルスが不調になる場合が多かったり、患者との会話で配慮することが数多くでてきます。
・「Mindoula(マインドューラ)」では、患者の経過や見通し感を家族で共有でき、家族自身のメンタルヘルスに気を配る点が、斬新な点です。
 
 
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Mindoula(マインドューラ)にみる継続支援のポイント
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健康ビジネス成功のカギとなる「継続支援」。
同サービスではどのような支援をしているでしょうか。
 
サービスを中断する理由として想定されるのは、
 
・緊急性がある時に助けてもらえない
・専門家と相性が合わない
・途中で専門家が変わった時、過去の情報を最初から話さないといけない
・本当にこのままサービスを続けてよくなるか、不安になってくる
 
といったことが考えられます。
 
これらに対して同社では、以下の工夫をしています
 
 
●パーソナライズした継続的な見守り
 
同サービス会員は、スマホアプリ「Mindoula Messenger」を無料で利用できます。
 
このアプリでは、患者はその日の気分を5段階で評価します。継続的な変化をMindoulaの専門家がチェックし、その評価で対応レベル(個別の質問)を変えていきます。実際のやりとりはLINEのようなものとなります。
 
一方、Mindoulaの専門家は、自分が担当している患者の評価が一覧でわかり、誰を優先的に助ける必要があるかを判断しやすいものとなっています。
 
 
●緊急時対応(24時間対応)
 
うつ病では、患者・家族が緊迫した場面を迎えることがあります。
同アプリには、緊急時には24時間いつでも電話でつながるようにしています。
 
 
 
【解説】
同社の専門家は現在13名。チームで情報が共有され、24時間対応しています。そして、専門家と相性が合わない場合、変更も可能になっていると思われます。今後はどんな「うまくいった事例」があるかを提示し、長期的な利用価値を示し、サービスの中断を防ぐことが必要でしょう。
 
 
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日本での展開ヒント
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今回の事例はいかがでしたか?
 
日本でも、
 
・うつ病を代表とするメンタルヘルス患者
・認知症患者
 
が増える中、
体調を崩す「家族」が確実に増えていきます。
 
今まで、Mindoula(マインドューラ)のようなコンシェルジュ型サービスは
公的サービスとの違いがわかりにくく、課金しにくいものでした。
 
しかし、同社は、
 
・家族でうつに立ち向かえる
・24時間対応
・短期だけでなく長期的な見通しを示す
・公平な視点で社会資源(公的・民間で提供されている様々なサービス)を紹介する
 
といったことで違いをだし、サービスを展開しています。
 
 
日本でMindoula的サービスを展開する場合、
 
・コンシェルジュのノウハウをどう体系化するか
・社会資源をいかに網羅的に集めるか
・患者の気持ちのわかる専門家をいかに集めるか
・個々のケースにより、どうアレンジしたサービスを提供するか
・個々のケースをいかにフィードバックし、サービスを改善できるか
・サービスを活用した「うまくいった事例」をいかに示すか
 
といった課題はあるでしょうが、改めてこうした『家族支援』を含めたサービスの日本版がもっと必要となる時代ではないでしょうか。
 
【スポルツ脇本】
 
 
 
 
<ご案内1>-----
 
今回紹介した「Mindoula」のように、アメリカのヘルスケア関連のベンチャーは、いくつもあります。ベンチャー企業含め売上上位企業は、どんな動きをしているか定期的に俯瞰しておきたいものです。そこで、以下のセミナーを用意しました。ぜひご活用ください。
 
●モバイルヘルス勉強会「健康業界の最新マーケット構造 & 歩いて貯めるWAON POINTの効果」
「健康業界の最新マーケット構造」では、健康業界を4つのカテゴリー(モノ、流通、施設サービス、情報サービス)に分け、北米と日本の主たる企業(商品サービス)、ベンチャー企業をMAPにプロットし、それぞれのカテゴリーの中から注目事例を紹介します。
 
<ご案内2>-----
 
健康ビジネスでは、継続支援が成功のカギになります。今回の事例も「パーソナル感」「ICTの活用」といったサービスの工夫がありました。
 
スポルツでは、先行事例から導きだした継続支援技術を「継続ドライバ」と称し、サービス企画に活用しています。継続ドライバを理解いただくとともに、その活用手順を「体験」できるワークショップを開催します。ぜひご活用ください。
 
●セミナー:健康業界での成功のカギ「継続支援」を磨くための 「継続ドライバ」活用ワークショップ【9月少人数制】
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「インセンティブ」
 
健康行動継続に寄与するインセンティブには有形・無形の報酬2種類があります。マイレージやポイント制などが有形の代表で、無形はステイタスや役割などです。※継続ドライバver2.0解説
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <7クリップ>
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[1]ニールセン、特化型キュレーションメディアの利用状況を発表
2016年6月の利用者数1位はヘルスケア情報に特化した「welq(ウェルク)」の631万人。昨年10月の提供開始以降急速に利用者数を伸ばし、直近3ヵ月では2倍以上の増加。スマホからの利用者が急増。(2016/07/26)
 
[2]カゴメ、野菜の摂取方法に関する意識調査を実施
32.6%の人が普段の食生活で野菜は「足りていると思う」と回答したが、成人1日の野菜摂取量の目標となる350gを摂取できていたのはわずか4.2%。朝食に野菜を摂っていない人は、1日の野菜全体の摂取量が少ないことが判明。(2016/08/01)
 
[3]ニッセイ基礎研究所、「ポケモンGO」と高齢社会(その2)ー健康増進の“アプリ”と“サプリ”:研究員の眼
「ポケモンGO」は、人の移動を誘発する効果があり中高年の健康維持・増進に繋がるかもしれない。家に閉じこもりがちな高齢者が頻繁に外出するようになれば、社会的孤立の防止、健康寿命の延伸、医療・介護保険料の低減が期待できる。(2016/08/04)
 
[4]「企業がIoTに取り組むべき理由」が分かる、“16”の重要な統計データ(アイティメディア @ITより)
米マイクロソフトのDynamicsチームは2016年8月5日(米国時間)、公式ブログで、企業がIoT(Internet of Things)に取り組むべき理由が分かるとする「“16”の重要な統計データ」を紹介。(2016/08/09)
 
[5]独立行政法人経済産業研究所、IoTが創り出すビジネスモデル(上)(中)(下)
「あらゆるモノを接続 生産も営業も効率化」「雇用への影響大 職業訓練の充実必要に」「各国で戦略模索 日本は発想の転換を」。(2016/08/10)
 
[6]神経科学でアスリートの成績向上はかるヘッドホン『Halo Sport』
Halo SportはHalo Neuroscienceが得意とする神経科学的発想を取り入れたヘッドホン。ヘッドバンド内側にある多数の突起が大脳皮質の運動野を刺激することで、脳内の神経接続をより効果的にしてアスリートの能力を高める効果がある。(2016/08/03)
 
[7]Sharecare、Healtwaysの保健事業買収で1,700人の従業員を雇用
SharecareのCEO、Jeff Arnold氏は、Healthwaysの保健事業と引き換えに3,000万ドル相当の普通株をHealthwaysに対し支払う予定であると述べた。事業には1,700人の従業員が関わり、2億5,900万ドルの歳入があるようだ。(2016/08/09)
 
 
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