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[海外注目企業の継続支援編]2016年9月20日号
          ≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本です。
 
米国では、肥満の割合(BMI30以上)の人が約30%とも言われ、大きな問題になっています。
当然ながら、肥満が起因する生活習慣病(糖尿病など)で病院に通う人も数多くいます。医師からは食事と運動の指導があるわけですが、食事は改善できても、なかなか運動が続かない人が多いのも現状のようです。
 
そこで今回は、医療機関とフィットネスクラブに対してICT+人を使って運動サービスを提供し、最終的には「肥満・糖尿病患者の運動の継続」を支援するベンチャー企業「TrainerMD(トレイナーエムディー)」を紹介します。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---肥満・糖尿病患者の運動をICTと人で支援する「TrainerMD」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「試すが勝ち!」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 ストレスチェック受検率、海外 コネクテッドヘルスなど、8本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:肥満・糖尿病患者の運動をICTと人で支援する「TrainerMD」
 
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「TrainerMD(トレイナーエムディー)」について
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■運営企業名:YC Wellness, Inc

https://www.trainer.md/


 
■TrainerMDの由来:MDは医師のこと。医療とフィットネスの間のギャップを埋めたいといった意味合いもあります
 
■設立:2012年
 
■実績(以下のアワードを受賞)
・Mass Challenge(スタートアップ支援及び、コンペティション)でセミファイナリスト
・Harvard Business School Alumni 「New Venture Challenge」2014でファイナリスト
 
■経営メンバー:Joseph F Howly(起業家)の他に、医師、フィットネスアドバイザー、理学療法士が参画している
 
■サービス開始
2016年秋(おそらく10月-11月)に本格スタート
 
 
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「TrainerMD」の事業コンセプト
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それではまず、事業コンセプトをみましょう。
 
■ターゲット
・医療機関(内科など)
・フィットネスクラブ
・患者(肥満・糖尿病で病院に通う人など)
 
■提供する価値
・(医療機関に対して)患者との関係性が深まり継続的に来院する
・(フィットネスクラブに対して)メディカル知見とコーチングがわかるトレーナーを育てることができ、そのトレーナーが患者と接することで、継続的にフィットネスクラブに通う
・(患者に対して)肥満・糖尿病患者の場合、運動結果をフィットネスクラブのトレーナーと共有しパーソナルコーチングを受けながら、生活習慣を改善できる
 
■サービス
・Health Program360°
―オンライン(運動全般の記録を患者・トレーナー・医師で共有できるシステム)
―メディカル教育+コーチング教育(フィットネスクラブのスタッフにメディカル知識とコーチングノウハウを教えること)
 
■収益
・フィットネスクラブ、医療機関に対してHealth Program360°を販売することで収益をあげる
 
 
【解説】
 
同社が目をつけたのは、肥満・糖尿病などの患者で医師から運動するように言われ、フィットネスクラブに通うも長く続けられない人でした。
 
そこで同社が考えたのは、
 
・医師とフィットネスクラブのトレーナーが患者に寄り添うようにすること
・フィットネスクラブのトレーナーが、メディカル(医療的知識)とヘルスコーチングの両方がわかるようにすること
・有酸素運動を継続的に効果的に行えるようにすること
 
でした。
 
そのために、同社では機器と人を絡めた寄り添い型の支援サービスをいくつかラインナップします。
 
その第一弾として、
 
・Jabra(ワイヤレススポーツイヤホン、心拍機能あり)
 
を保険適用で安く買えるようにする(患者の保険を適用できる病院がTrainerMDと契約している場合のみ)とともに、Jabraで得た運動データを医師とトレーナーが共有、フィットネスクラブのトレーナーがメディカル知見とコーチングノウハウを使って、患者の運動継続を支援できるようにしました。
 
Jabraは音楽をワイヤレスで本格的に楽しめるものです。フィットネスクラブに通うも続かない人に、音楽の楽しさを感じながら運動できるとともに、心拍も計測できるということです。単なる心拍計ではなく、Jabraを選んだ背景には、ターゲットを強く意識し、楽しさも含めて運動を少しでも長く続けてもらいたいということがうかがえます。
 
 
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サービスの流れ
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では次に、具体的なサービス内容を見ましょう。本年秋から本格スタートなので、詳しいことはまだわかりませんが、サイトを見る限りでは下記の流れが予想されます。
 
■ステップ1.病院で受診
患者が加入している保険会社からTrainerMDと契約している病院を紹介してもらい、医師が患者に対して運動が必要と判断し、かつ患者が希望する場合、医師がTrainerMDプログラムとJabraを処方する。
 
■ステップ2.フィットネスクラブでコンサルテーションを受ける
TrainerMDに契約しているフィットネスクラブでコンサルティングを受ける。
コンサルティングでは、メディカル知見をもち、コーチング教育を受けたトレーナーが以下のことを行う
 
【ヒアリングと体チェック】
・今までの健康面での経歴
・ライフスタイルについて
・何をゴールにしたいか
・運動の準備度を測定(おそらく柔軟性など)
・疾患に対する知識度合
 
【アドバイス】
・ゴールを3フェイズにわけて第一フェイズのゴールを説明
・どのような運動が患者にとってよいかを示す
(有酸素運動、ストレッチ、無酸素運動など、その人の体に合わせて最適に提案するものと思われる)
・Jabraを使う場合、その使い方を説明
 
■ステップ3.トレーニングセッションをもつ
トレーナーが患者にあったプログラムを考え、フィットネスクラブでトレーニングを実施。トレーニング内容は患者専用のウェブサイトにアップされ、自宅でも運動ができるようにする。また、Jabraを用いる場合は、運動時の心拍データがトレーナーと共有され、アドバイスがある。
 
■ステップ4.グループサポートミーティング(ワークショップ)
健康課題を同じくする患者が集まり、グループセッションを行う(運動や講習と思われる)
 
■ステップ5.振り返り
医師は患者がどの程度改善したかチェックし、プログラムが適切だったかを患者と振り返る。その後、フィットネスクラブのトレーナーとも振り返り、プログラムを見直す。
 
 
【解説】
同社のサービスはヘルスコーチングの成功の鍵である「振り返りを何度も行いながら自分に合った運動習慣を発見すること」を基本とし、特に有酸素運動についてはJabraを用いて効果的な運動を継続する支援をするとも言えます。
 
 
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「TrainerMD」にみる継続支援のポイント
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同サービスは、生活習慣病で運動の継続が難しい人に対して、どんな点に注意して継続支援をしていると言えるでしょうか。
 
今回はスポルツの考案した「継続ドライバ」
に対応させてみましょう。
 
 
●ヘルスコミュニケーション
専門家との直接のコミュニケーションにより継続を支援すること。本事例では、メディカル知見があり、コーチングノウハウを身につけたトレーナーが支援をしてくれます。
 
●パーソナライズ
カスタマイズにより健康行動を自分ゴト化し、継続を支援すること。トレーナーはサービスの中で、患者の生活の中に溶け込みやすい運動習慣を見つける支援をすると予想されます。
 
●モニタリング
健康行動・結果の記録により自己効力感を上げ、継続を支援すること。Jabraを用いて、記録をつけながら、その記録をトレーナーが見守ってくれます。
 
●コミュニティ
交流により継続を支援すること。グループサポートミーティングでは、同じ疾患の人が集まり学ぶ機会があります。
 
 
【解説】
継続ドライバの使い方としては、一つの継続ドライバを中核にすえ、いくつかを絡ませていくことがポイントです。本事例の場合、ヘルスコーチングを中核にして他のモニタリング、パーソナライズ、コミュニティを絡ませているといえます。
 
 
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「機器(アプリ)+人」の組み合わせに注目したい
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今回の事例いかがでしたか。
 
・メディカルとヘルスコーチングがわかるトレーナーが支援する
・「機器(アプリ)+人」で寄り添い感をつくる
・有酸素運動が効果的な患者に対して、医療保険で機器が買えるようにする
 
 
といった特長がある事例でした。
 
この中でも、特に
「機器(アプリ)+人」の組み合わせで、継続支援を行う事例が
近年増えています。
 
ただ、はっきりとした成功事例が表れていないのも現状でしょう。
 
今後は、
 
・ヘルスコーチングの中身をどうわかりやすく伝えるか
・日々の振り返りの中で、顧客にどう共感していくか
・どんな行動を基本習慣として示すか
・振り返りによりどう定着化したか、事例を示すこと
 
といった課題をクリアしていくことが必要でしょう。
 
また、AIの活用も含めてこれから発展する注目サービスと考えています。
 
 
【スポルツ脇本】
 
 
 
 
<ご案内>-----
 
健康ビジネスでは、継続支援が成功のカギになります。
 
スポルツでは、先行事例から導きだした継続支援技術を「継続ドライバ」と称し、サービス企画に活用しています。
 
その継続ドライバをご理解いただくとともに、
 
・食事記録アプリで88万ユーザーを獲得している「あすけん」が行うサービスと継続支援
 
を学べるセミナーが開催されます。こちらもぜひ参考になさってください。
 
●セミナー:ヘルスケアにおける「継続支援」集中講座
2016年10月20日(木) 午後2時-午後6時
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「試すが勝ち!」
 
ウェルネスサービスの現場では時として最適解を探すより、別解を小さくいくつか試す方が効果的なことが多いですね。
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <8クリップ>
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[1]ピースマインド・イープ、ストレスチェック義務化後のストレスチェックの受検率に関する調査結果
義務化初年度のストレスチェックの受検率は平均78.7%。約6割の団体で90%以上の受検率となった一方で受検率が40-50%台団体も1割以上存在することが分かった。(2016/09/06)
 
[2]国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、平成28年度「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)利活用研究事業(2次公募)」の採択課題について
パーソナル・ヘルス・レコード利活用研究事業は、個人の健康・医療・介護情報を時系列的に管理できるPHR機能の実現のための技術的課題を解決するとともに、それらの情報を臨床及び臨床研究にも活用可能な環境の実現等に向けてAMEDが実施する委託事業。(2016/09/07)
 
[3]AppleとNike、ランニングの完璧なパートナーとなるApple Watch Nike+を発表
専用のNike Sport BandとApple Watch Series2を組み合わせたApple Watch Nike+は、ランニングを楽しむすべての人にぴったりの究極のツール。新しいNike+ Run Clubアプリケーションと密接に統合されている。(2016/09/08)
 
[4]NEDO、「ヘルスケアIoTコンソーシアム」設立、キックオフ総会を開催
NEDOのクリーンデバイス社会実装推進事業で、委託先の北海道大学、ニューチャーネットワークスは、東京大学、広島市立大学などと設立。「ヘルスケアIoTコンソーシアム」は、ヘルスケア情報を個人が自分の意志と権限で流通させ、健康増進に向け個人に合わせた行動変容をアシストする社会基盤づくりの確立を目指す。(2016/09/09)
 
[5]デジタルヘルス事例:波乱万丈の健康“超ビッグデータ”で予見する 動き出す「超ビッグデータプラットフォーム」プロジェクト(日経デジタルヘルスより)
2016年4月に本格始動したImPACTプログラム(革新的研究開発推進プログラム)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」プロジェクト。9月12日開催のキックオフシンポジウムでは同プログラムを構成する各プロジェクトのリーダーが登壇し、それぞれの狙いや展望を紹介した。(2016/09/13)
 
[6]Mimerse、VRを使用して恐怖症を治療するアプリをテスト
Mimerse社のアプリ「Itsy」の研究は現在も継続しており、クモ恐怖症の従来治療とアプリを利用した場合を比較している。VR治療は従来の治療セッションよりも手頃な予算でできる可能性があり、より実体験のように感じられる可能性がある。(2016/09/07)
 
[7]コネクテッドヘルスは非アクティブな患者を助ける
Parks Associates社は、新しい高性能なヘルスケアデバイスとアプリは、介護者による遠隔モニタリングという方法と同様に、患者が自分のヘルスケアプランに従うことに役立ったという。(2016/09/12)
 
[8]TomTom、フィットネストラッカー新モデルを発表
「TomTom Touch」は心拍数と身体組成の両方を計測、「TomTom Spark 3」はGPSが使用可能なフィットネスウォッチでルート探検機能を使うとユーザーは新しい場所を探検することができる、など。(2016/09/13)
 
 
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