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[海外注目企業の継続支援編]2016年12月20日号
          ≫≫≫Author:脇本和洋
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こんにちは。脇本です。
 
2016年「海外注目企業の継続支援編」では、11個の事例を特集しました。
振り返ってみて、3つの切り口でまとめてみました。
 
(1)真の成功のために低迷期をどう乗り越えるか
1月「Weight Watchers」、3月「Medifast」、7月「Nutrisystem」があたります
 
(2)新事業には「新しい価値の創造」がキーになる
2月「Peloton」、4月「savorhealth」があたります
 
(3)「人とITC」を組み合わせることで継続支援する
8月「Mindoula」、10月「Ginger.io」、11月「Farewell」があたります
 
今回は、この3つの切り口で、各事例のポイントを振り返ってみましょう。
 
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---3つの切り口で2016年を振り返る
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「コミュニケーションの再定義」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 市場調査レポート、海外 mHealthWatch注目ニュースなど、9本
 
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【1】特集:海外注目企業の継続支援編
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テーマ:3つの切り口で2016年を振り返る
 
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1、真の成功のために低迷期をどう乗り越えるか
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今回特集した3社ともに株式上場している米国を代表する健康企業です。
ただ、どんな代表企業でも低迷期は必ずあります。
そこをどう乗り越えるか?各社の取り組みが見どころでした。
 
 
●Weight Watchers(世界最大のダイエットセンター)
 
2011年1,819億円だった売り上げは下降しつづけ、2015年は1,164億円に。まだ復活の兆しが見えません。主な低迷理由は、同社のダイエットメソッドに近い「カロリー計算アプリ(myfitnesspal他)」という無料の競争相手が出てきたことです。
 
対抗策として、「パーソナルコーチング」という継続支援サービスを2015年に開始しましたが、業績悪化を食い止めるまでに至っていません。約20年続けてきた「簡易にカロリー記録ができて健康的に痩せる」という価値以上のものを出さない限り、このまま低迷が続くはずです。2017年は、抜本的な改革がなされ再度成長する兆しを掴むことを期待します。
 
 
 
●Medifast(食事代替型ダイエット食品販売)
 
2013年324億円だった売上は、無料のカロリー計算アプリの影響を受け、2014年は285億円まで下がりました。2015年の売上も下降し272億円となりましたが、下げ止まり感があります。
 
そこには、すばやいコンセプトの見直しがありました。
 
「痩せてリバウンドしない」という同社の価値は変えずに、メソッドを2フェイズに簡素化し、食生活の行動をより具体的に示す「ガイドブック」を用意。さらに、ヘルスコーチが同社のモバイルアプリを使って見守ってくれる継続支援を強化しました。
 
 
 
●Nutrisystem(食事代替型ダイエット食品販売)
 
3月に発表された2015年業績では売上が462億円。同社史上最低だった2013年の358億円と比べると明らかにアップしてきました。
 
2013年に社長が交代し、思い切ったコンセプトの見直しをしました。
 
2012年以前は「短期間で痩せる」、2013年以降は「最初の1か月で5キロ確実に痩せ、その後も体重を減らし、最終的には体重を維持する」ということに変えました。それに合わせてメソッドも変更し、継続支援サービスでは外出時に同社商品を摂れない時に何を食べたら良いかわかる無料モバイルアプリを追加しました。
 
 
 
このように環境変化に対応した企業、遅れた企業とはっきりと違いが見えました。
 
【まとめ】
 
□環境は常に変わる。コンセプトの見直しを素早く行えるようにしておく
□継続支援サービスの改良だけでは、低迷を脱せない時がある
□ターゲット、価値、メソッドといった要素に大胆に着手する
 
 
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2、新事業には「新しい価値の創造」がキーになる
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新事業を行うベンチャーへの投資は、今年もStartup Healthやrock Healthといったヘルスケア専門のインキュベーターを通じても積極的に行われました。その中で、本メルマガでは「新しい価値」を創造しているベンチャー事例を2つ紹介しました。
 
 
●Peloton(自宅でできる通信対応エクササイズバイクを販売)
 
自宅でエクササイズバイクを続けるのは難しいものです。同社は、ニューヨークのスピンバイク専門のスタジオを運営していますが、その場の体験(一体感、臨場感)を自宅でも味わえるよう、通信対応のバイクを提供、ニューヨークのスタジオで行われるクラス動画を毎日10本以上配信しています。
 
「自宅にいながらにして、教室に参加したかのような一体感、臨場感を感じながらバイクを楽しめる」という新しい価値の提供が、その原点にあります。
 
 
 
●Savorhealth(がんの人向けの食事サービス)
 
「がんになると、食べるものも大きく制限される。自分の好きなものは食べられなくなる」こうした当たり前の思い込みを払拭するサービスです。がん専門の栄養士「oncology nutritionists」が、がんの種類、進行度、治療薬の種類、必要とされる栄養素、その人の嗜好など様々な要素を考慮し、食べる楽しさを失いにくいメニューを提案してくれます。
 
メニューはカウンセリングで提供されます。ただし単なるカウンセリングでなく、メニューを作る時間のない人に向けてミールデリバリー(加工食品)を提供する点に特長があります。
 
「変化する自分の体調・ステージに合わせて、食事を長く楽しめる」という、新しい価値の提供が、原点にあります。
 
 
 
【2016年のまとめ】
 
□「新しい価値の創造」それが商品・継続支援サービスを考える前にすべきこと
□その発想には、「無意識のあたり前」に着目したい
□「あたり前」を逆転させると新しい価値に結びつきやすい
 
 
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3、「人とITC」を組み合わせることで継続支援する
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紹介した3事例とも、「人+ICT」を使って顧客に寄り添うことにより、継続率を高める先端事例でした。その中でもそれぞれ、工夫点が見られました。
 
 
●Mindoula(うつの患者と家族向けのサービス)
 
うつ患者が日々の気持ちを入力するとメンタルヘルスコンシェルジュという心理の専門家が見守り、適宜アドバイスをしてくれます。その中でも「家族支援プラン」というのがあり、家族に対しても治療の見通し感、サポートするコツを提供することが特徴でした。
 
 
 
●Ginger.io(うつの患者向けのサービス)
 
うつ状態が比較的よい時は「ヘルスコーチ」が日々寄り添い、うつ状態が悪い時は「セラピストや臨床心理士」がカウンセリングを行うサービスです。
 
患者とヘルスコーチは、日々のチャットを通し、その日の気分を共有します。さらに日々の基本的な生活習慣(規則正しい生活、他人と話すこと、体を動かすことなど)が実践できているかをアプリのデータを通じて共有します。ヘルスコーチは、基本的な生活習慣を身に着ける支援を行います。
 
ヘルスコーチは認知行動療法の基礎知識に関するトレーニングを受けていますが、セラピストや臨床心理士といった専門の資格は保有していません。そのため運営企業側も臨床心理士といった専門家を数多く雇わなくてよいという利点があります。
 
 
 
●Farewell(ダイエットしたい人向けのサービス)
 
プラントベース・ダイエット(菜食ダイエット)に基づいた食事法を提唱。ただ、このダイエット法はどうしても単調なものになってしまいます。そこを同社では、ヘルスコーチが継続支援のために寄り添ってくれます。
 
ヘルスコーチはWellcoachという健康分野のコーチの資格を保有するだけでなく、管理栄養士、統合衛生学の学位取得者、糖尿病療養指導士といった様々な専門資格も持っています。日々の食事の状況、体重、水分の摂取量、運動などを記録し、2週間に一度、電話でヘルスコーチと話し合い、進捗状況の振り返りや目標達成の妨げになっている点などを話すというサービスです。
 
【2016年のまとめ】
 
□継続支援では、今「人+ICTによる見守り」という方法に注目したい
□「ヘルスコーチング」という手法は米国では普及している。日本で応用したい
□寄り添う人は、必ずしもレベルの高い専門家でなくてもよい
 
 
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2017年に向けて
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2016年の「海外注目企業の継続支援編」いかがでしたでしょうか。
 
2017年は、成功企業・注目の動向はウォッチしつつも、今後社会に必要なテーマ(認知症予防、家族支援、姿勢、高齢者の運動・栄養不足、精神疾患など)にフォーカスをあて、事例をとりあげます。
 
【脇本和洋】
 
 
 
-------ワークショップのご紹介------
 
健康ビジネスの成功のカギである「継続支援」。スポルツ独自の考え方である「継続ドライバ」を理解いただき、実際にケースにあてはめ「使えるようになる」ことを目標にしたワークショップのご紹介です。
 
●健康業界での成功のカギ「継続支援」を磨くための「継続ドライバ」活用ワークショップ【2月少人数制】
2017年2月22日(水)15:00-18:30
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「コミュニケーションの再定義」
 
お客様とのコミュニケーション機会(タッチポイント)が劇的に増加している中で我々はどんなコミュニケーションで貢献していきたいかの再定義が必要になってきました。
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <9クリップ>
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[1]サイバー・バズ、法人向けサービス「Doctors Me for Biz」を提供開始
Doctors Me for Bizは、オンライン上で医師・薬剤師・栄養士などの医療・健康領域の専門家が回答する健康相談サービスを開設できるサービス。450名の専門家が回答するQAサービスを自社サイトやLINEで提供できる。(2016/11/30)
 
[2]ヤクルト本社など、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株を含む乳製品の習慣的摂取が高齢者の高血圧発症リスクを低減【PDF】
中之条町在住の高齢者を対象にL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクを調査。その結果、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品を週3回以上習慣的に摂取することで高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆された。(2016/12/07)
 
[3]ジーンクエスト、遺伝子検査サービス一式をパッケージした ASPサービス「ジーンクラウド(gene cloud)」を開始
「ジーンクエストALL」「ジーンクエストLITE」ほかヘルスケア業界向けに提供している遺伝子検査項目の中から特定の検査項目を選択して遺伝子検査サービスを行うことができる、法人向けASPサービス。(2016/12/08)
 
[4]三菱総合研究所、MoffとウェアラブルIoTを活用したウェルネス新サービスの事業展開を目的とする業務・資本提携を締結
具体的には、運動時に体に装着したMoff Bandからリアルタイムに身体機能データを取得することにより、利用者本人が運動の結果を正しく確認し、身体機能の回復及び介護予防の効果を高めることが期待できるサービス。(2016/12/09)
 
[5]ルネサンス、エンターテイメントとフィットネスを融合させた新感覚ワークアウトスタジオ「CYCLE & STUDIO R Shibuya」来年3月渋谷にオープン【PDF】
日本初上陸となるVR技術を取り入れた圧倒的な映像美の中で楽しめるVRサイクルプログラム「THE TRIP」や、音楽に合わせレッスン参加者が一体となって盛り上がりながら本格的なトレーニングを行うライブトレーニングなど。(2016/12/13)
 
[6]シード・プランニング、市場調査レポート:2016年版 ITを活用した高齢者向けサービスのニーズ調査
1都3県に在住する55-69歳の男女600人を対象に「高齢化と10年後の日常生活に関するアンケート」を実施し、現在と対象者全員が65歳以上となる10年後の生活や、様々な生活支援サービスへの関心を調査。
 
[7]Mayo Clinic、音声解析アプリは心臓疾患の診断に有用である可能性を示唆
Mayo Clinicの研究者たちは、声の特徴と心臓病に関係があると見ている。医者は将来、音声分析ソフトウェアを非侵襲の補助的な診断ツールとして活用するかもしれない。(2016/12/08)
 
[8]Google、糖尿病にともなう失明の兆候をディープラーニングで早期発見へ
糖尿病の合併症として発症する糖尿病網膜症を網膜写真から見つけるためのディープラーニング用アルゴリズムを開発。糖尿病網膜症は、早期発見できれば治療可能だが、進行すると回復不可能な失明に至る恐ろしい病気。(2016/12/13)
 
[9]mHealth Watch注目ニュース:伊藤忠テクノソリューションズ、「Fitbit」を活用し健康経営ソリューションを強化
今回の注目ニュースで取り上げている伊藤忠テクノソリューションズの「Fitbit」の活用では、健康経営のためのソリューション強化のひとつとして、従業員の健康意識向上や健康状態を可視化・分析に役立てる、としている。(2016/12/19)
 
 
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