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[ヘルスコーチングの視線編]2017年10月24日号
   ≫≫≫Author:里見将史
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ヘルスコーチングは「健康的な行動変容を支援する」ことが目的のコミュニケーションです。
そのため、ヘルスコーチングをサービスに取り入れるにはヘルスコーチである「人」の存在が重要になってきますが、「人」が中心のサービス提供には課題も存在します。
 
そこで、今号ではヘルスコーチングのサービス化、システム化ついて解説したいと思います。
 
 
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---「ヘルスコーチングの可能性を探る:ヘルスコーチングのシステム化」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「デジタルヘルス・ハッピー」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 アプリの治験、海外 高齢者遠隔見守りシステムなど、10本
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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<テーマ>
ヘルスコーチングの可能性を探る:ヘルスコーチングのシステム化
 
 
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1.ヘルスコーチングの基本的なアプローチ
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ヘルスコーチングの基本的なアプローチは、健康に向けた行動変容を支援することを中心に据えて寄り添うアプローチです。
これまでの「教える」「指導する」アプローチではなく目標に向かって行動が自走できるように寄り添うところが、これまでの様々な「ヘルスコミュニケーション」とは大きく異なる点です。
 
ヘルスコーチングは寄り添う時のコミュニケーション技法なので、1対1もしくは前号のこのメルマガでも紹介した複数人を対象としたグループやコミュニティでの提供が主流です。そのため、どちらの提供スタイルであってもヘルスコーチである「人」が必要だというのが一般的なイメージです。
 
しかし、ヘルスコーチングは対面や電話、そしてICTを活用した直接的なコミュニケーションでしか成立しないと思われがちなのですが、実はそんなことはありません。
 
 
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2.ヘルスコーチングのサービス化に向けた課題
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ヘルスコーチングのアプローチについては多くの方々に共感をされますが、いざヘルスケアサービスへの導入という視点に立った瞬間に、以下のようなポイントの質問を受けることが多いです。
 
1)ヘルスコーチの人材と品質
2)人がサポートすることによるコスト面
3)対応人数などの規模の拡大の可能性
 
ヘルスコーチングはコミュニケーション技法なので、対話、コミュニケーションの中で効果的に作用するものなのですが、だからと言って「人対人」の中でしか成立しないかというとそんなことはありません。
 
ヘルスコーチングのコミュニケーションの中には、アプローチ、コミュニケーションとしてのポイント、要素がいくつも存在しているのです。
 
そのため、ヘルスコーチである「人」が直接介入しなくてもヘルスコーチングのアプローチ、コミュニケーションの要素を分解して、ウェブやモバイル、アプリサービスに組み込むだけでも、利用者に対してヘルスコーチング的なアプローチが十分に可能です。
 
 
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3.ヘルスコーチングのアプローチ、コミュニケーション要素
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ヘルスコーチングはコミュニケーションが基本です。
そのため、決まりきった会話のパターンや決まったフレーズがあるわけでは一切ありません。
 
しかし、タイミングや対象者の状況によって意識してほしいポイントや意識を向けてほしい視点などの要素がいくつもあります。
 
以下はヘルスコーチングを行う上で、抑えておきたいポイント、要素の一例です。
 
1)目標のその先のイメージを描く
2)目標と行動の違い
3)行動の選択と取り組みの把握
4)パーソナライズ(個別対応)
5)気づく、気づかせる
6)成功体験の積み重ね
7)成功体験の気づかせ方
8)習慣化、定着化
9)強制的と自発的
10)継続と意志の強さとの関係
11)振り返りの意味
12)目標と現在の距離感
13)「しない」ではなく「する」に変換
14)できないことに気づく、認識する
15)無理しない、頑張らない
16)できることにフォーカス
17)フィードバックの意味
18)アドバイスではない、提案、提示
19)アセスメントの役割
20)ティーチングとコーチングの役割とタイミング
21)自ら選択する意味
22)視点を広げる
23)PDCAサイクル
24)ストレス、障害を認識する
25)ヘルスコーチングの対象者
 
上記のようなポイント、要素を抑えた上で、「行動」に目を向け対象者の気づきを与えていきながら「継続」していけるように寄り添うのが「ヘルスコーチング」なのです。
 
 
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4.ヘルスコーチングのサービス化、システム化イメージ
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上記のような要素をどのようにシステム化していくのか、具体的な例を挙げて説明したいと思います。
 
4-1「気づく、気づかせる」仕組み
 
ヘルスコーチングの会話の中心は利用者です。
そのため、ヘルスコーチングでは利用者の考えを身体の外に「言語化して出す」ことがポイントになってきます。
利用者は言語化する過程で、いろいろ考えたり、また考えを整理したりするのです。その時に、「気づき」が生まれるのです。
 
現状ウェブやモバイルを使ってヘルスケアサービスを見ていると、情報提供、アドバイス提供はしっかりされているのですが、利用者に発信してもうらう、コメントしてもらう工夫が少ないです。
コンテンツやアドバイス、チェックリストやアセスメントなどで利用者に届けただけでそのままにしてしまうのではなく、利用者から引き出す、例えばアンケート形式で回答してもらうひと工夫だけでも「気づき」を与える仕組みが提供可能なのです。
 
 
4-2 PDCA、振り返りの仕組み
 
ヘルスコーチングでは、目標を設定し、その目標に向けて細かいPDCAを回しながら進めていくのが基本的な進め方です。
そのPDCAの中でポイントになってくるのが「振り返り」です。
取り組みの振り返りや進捗の振り返りなどを定期的に行いながら振り返りを起点に次のアプローチを明確にしていくステップになるのです。
 
レコーディング系のサービスも、記録することは振り返りのタイミングでもあるのです。
しかし、その記録だけに留まってしまって「振り返り」を提供していないのがほとんどです。
レコーディングダイエットで成功するためには記録から課題を見つけて、その課題に対して取り組むことが必要なのです。
記録だけが成功の要因ではなく「記録→振り返り」が重要な要素なのです。
このように「振り返り」の機能をサービスに組み込むことはヘルスコーチである「人」が介在しなくても可能なのです。
 
 
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5.ヘルスコーチングのサービス化、システム化に向けて
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ヘルスコーチングのアプローチやコミュニケーションの中には、前述したようなポイントや要素があって、その要素自体は切り分けられるので、サービスに落し込んだり、システムに組み込んでサービスとして提供が可能です。
 
しかし、要素やポイントのシステム化だけで完璧にヘルスコーチングが実現できるかというと、そこには「人」の存在がまだまだ必要な部分があり、「人」でなくては寄り添えない部分がどうしても存在します。
 
「人」の代わりに「AI」が対応するということも近い将来はあるとは思いますが、「AI」がすべてを対応するのではなく、「AI」とヘルスコーチの役割を分けてサポートするスタイルがベストな組み合わせではないかと思います。
 
すでにNoomの「カラダ改善プログラム」では、最新のテクノロジー(AI)と専門のコーチの組み合わせでサービスを提供しています。
 
現時点では、ヘルスコーチングの「システム化」と「人」の寄り添いの組み合わせを追求していくことこそが、その先にある「AI」との組み合わせへの近道ではないかと予想しています。
 
 
 
今回は「ヘルスコーチングのシステム化」に向けたアプローチ、展開について解説しました。
 
今回ご紹介した「ヘルスコーチングのシステム化」については、ヘルスコーチングのサービス導入をご相談いただくケースで必ず受ける質問です。
 
特にオンラインのサービス、システムにヘルスコーチングを組み込むには、ヘルスコーチングをコミュニケーションとしてではなく、アプローチの要素として捉えて整理できていることが重要です。
 
私は2006年にコーチングの資格を取得し、ヘルスケアサービスのポイントとコーチングのコミュニケーション技法の中からオンランでのヘルスコーチングとしての要素を整理し確立しています。
 
ヘルスケアサービス領域を熟知し、且つヘルスコーチングの要素を整理している唯一の専門家として、オンラインでのヘルスケアサービスにヘルスコーチングを組み込むための企画、設計はもちろん運用を数多く実施しています。
 
オンラインでのヘルスコーチングの導入にご興味ある方は是非お声がけください。
 
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「デジタルヘルス・ハッピー」
 
デジタルヘルスで貢献できる顧客ハッピーがあるはず。あなたにはそれが見えていますか?
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <10クリップ>
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[1]キュア・アップ、日本初の「アプリの治験」開始へ
ニコチン依存症治療アプリ「CureApp禁煙」の治験開始を発表。今後はニコチン依存症治療アプリとしては日本初となる薬事承認・保険償還を目指し、さらに日本での薬事承認を得た後はグローバルにも展開を行い、日本発のイノベーティブな治療法として世界に広めていく予定。(2017/10/03)
 
[2]味の素、「アミノインデックス(R) リスクスクリーニング(AIRS)」新発売
1回の採血で現在がんである可能性を評価する従来の「AICS(R)」に、4年以内の糖尿病発症リスクと血液中の必須・準必須アミノ酸濃度に基づく栄養状態の評価等を行う「アミノインデックス(R) 生活習慣病リスクスクリーニング(AILS)」を追加。(2017/10/12)
 
[3]日本医療データセンターとリージャー、血液検査キット「DEMECAL(R)」とカラダの年齢「健康年齢(R)」のコラボレーションパッケージが誕生【PDF】
「DEMECAL 健康年齢セルフチェック」は、微量採血キットで自宅採血した後、検査センターにて「健康年齢」の計算に必要な中性脂肪、HDLコレステロール等を測定。自宅には血液検査結果に加え、検査結果を基に算出された「健康年齢」のレポートが郵送される。(2017/10/13)
 
[4]富士通、シニア向けSNSを活用したマーケティングサービスを販売開始
新サービスの提供開始に先駆け、資生堂、北海道ガス、ピップ、小学館が会員数約120万人の「らくらくコミュニティ」から得られたシニアに関するデータや知見を活かし、トライアルを実施。(2017/10/13)
 
[5]ネスレとファンケル、栄養や健康の問題解決に共同で取組むプロジェクトを始動【PDF】
プロジェクト第1弾として「ネスレ ウェルネス アンバサダー」向けカプセル製品「ネスレ ウェルネス抹茶 カロリミット(R)」などを共同開発。(2017/10/17)
 
[6]アイ・ティ・アール、国内の業界別・分野別IoT市場の調査を実施し、その中から分野別の市場規模および予測を発表
IoT市場は、活用企業が増加するとともに、1社あたりの投資額も増大することから、市場規模は2017年の約4,850億円から2020年に1兆3,800億円へと急速に拡大すると予測。(2017/10/17)
 
[7]新社会システム総合研究所、医療・ヘルスケアへのAI活用最新動向とドコモの5Gを開催
開催日は2017年12月15日(金)。NTTドコモは、通信事業に加えてスマートライフ事業の拡大に注力、ヘルスケア領域を重要な戦略サービスの一つとして位置付けている。5G通信時代を見据えた今後のヘルスケア事業戦略などを紹介する。
 
[8]日経デジタルヘルスより、デジタルヘルス事例:「採血なし血糖自己測定」糖尿病診療をどう変える?
日本で保険が適用されたアボット ジャパンの糖尿病患者向けグルコースモニタリングシステム「FreeStyle リブレ」。500円玉大のセンサーを上腕に貼り付けるだけで血糖値を連続測定でき、患者がその結果をリアルタイムに確認できる。(2017/09/27)
 
[9]人工知能を活用したウェアラブル型の高齢者遠隔見守りシステム『Aifloo Band』
「Aifloo Band」がユーザーの位置情報や動きを検知し、衛星を介して信号データをクラウド上に送信すると、人工知能システムがデータを分析し、ユーザーの活動量や食生活、睡眠時間などをモニタリングする。(2017/10/13)
 
[10]mHealthWatch注目ニュース、ゲームでスマホ画面を長時間凝視で片目を失明
今回は普段と違うアプローチで記事を紹介。中国でスマホゲームのやり過ぎで片目の視力を失った女性のニュース。スキマ時間にゲームをするくらいでは問題ないかもしれませんが、ゲームによっては中毒性があるものも多いので注意が必要。(2017/10/23)
 
 
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