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[ヘルスコーチングの視線編]2017年11月28日号
   ≫≫≫Author:里見将史
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ヘルスコーチングは、健康意識がある程度高い人、行動意欲がある人のほうが効果が期待できるコミュニケーションです。
 
しかし、健康経営の施策などでは健康意識や行動意欲が低い人も含めたアプローチが必要になってきます。その時ポイントになってくるのが、次のステージに導くためのヘルスコーチングの要素やアプローチです。
 
そこで、今号では次のステージに導くためのアプローチとして、ヘルスコーチングでの「気づき」について解説したいと思います。
 
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---「ヘルスコーチングの可能性を探る:企業ウォーキングイベントの落とし穴」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「競合を超える」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 調査レポート、海外 デジタルヘルス動向など、14本
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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<テーマ>
ヘルスコーチングの可能性を探る:企業ウォーキングイベントの落とし穴
 
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1.無関心の人を動かすためには「外側からの動機」への刺激
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企業、組織における健康経営などの取り組みでは、参加する人の「ヘルスリテラシー」のレベルの格差が大きいのはもちろん、「ヘルスリテラシー」以前の問題で、健康情報には興味があったとしても、健康への「取り組み」「行動」にはまったく興味・関心を示さない人も多く含まれます。
 
知識や意識、行動意欲が異なる人達を一つの企業、組織として捉え、一つの取り組み、一つのアプローチだけで全員を動かそうとしても上手くいきません。
真剣に健康経営に取り組もうとしている企業が直面する課題の一つでもあります。
 
健康への「行動」には興味・関心が無い、行動変容ステージでいう「無関心層」にあたる人達をどう動かすのかというのは、職域向けのヘルスケアサービスではこれまでにもいろいろとトライしてきていますが、明確な答えは見つかっていないのが実情です。
 
会社や上司からの「強制参加」的なアプローチが出来るのも職域ならではの特徴の一つなのですが、この「強制力」がはたらくとひとまず参加はするものの「やらされ感」満載なので長続きしないことのほうが多いです。
 
参加者自身から重い腰を上げさせるためには、やはり興味・関心がない「健康」ではなく、目的を興味・関心があることにすり替える別の刺激、アプローチが必要になってきます。
しかし、ここには落とし穴があって、健康以外の刺激でアプローチしてせっかく興味・関心を惹きつけたとしても、その先を準備していないのでその時点で「行動」がストップしてしまうのです。
 
 
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2.「外側からの動機」に対する次のステップ
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せっかく「健康」以外の興味・関心で惹きつけて行動のきっかけを作り出したのに、しっかりと次のステップへのシナリオや導きが用意されていないケースを良く見ます。
 
例えば、企業で行われている健康施策としての「ウォーキングイベント」です。
 
この「ウォーキングイベント」では、インセンティブとしてポイントを付与して最終的には商品と交換できたり、他のポイントに交換できるなどの仕掛けがあります。
 
イベントに参加してもらうための「動機」「モチベーション」としては、「ポイント」「商品」は魅力的です。
しかし持続させ飽きさせないためには「ポイント」や「商品」を常に魅力的にする必要があって、そもそも「ポイント」や「商品」を提供し続けない限り継続してくれなくなってしまいます。常に新しい刺激が必要ということです。
 
通常、このような「ウォーキングイベント」では、イベント開催中は歩くことへの意識は高まるので歩数は増加しますが、イベント終了後はどうなるでしょう?
 
イベント終了後は、イベント前より多少は平均歩数が上がることはあるようですが、やはり「ポイント」や「商品」が目的であるため、インセンティブを提供し続けない限り、本来の施策としての目的である「より多く歩くこと」への意識は低下してしまい、生活に根付いていかないことになってしまうのです。
 
「ポイント」や「商品」などインセンティブをメインにした「ウォーキングイベント」自体が効果がないということでは一切ありません。
 
健康への「行動」には興味・関心が無い「無関心層」の人が、「ポイント」や「商品」の刺激でせっかく参加してくれたのだから、次のステップである「行動できる」「行動を続ける」ステージに引き上げる仕掛けや仕組みまで含めてアプローチしておく必要があるのです。
 
そこで、次のステップである「行動できる」「行動を続ける」ステージに引き上げる仕掛けや仕組みとして重要になってくるのが「自らの気づき」です。
 
「自らの気づき」とは、レコーディングダイエットのケースで例えるなら、食事や体重など記録していてもダイエットに成功する人としない人が出てくるのは、記録から自ら気づきを得てダイエットのための行動に取り組んだかどうかの違いです。
レコーディングダイエットでは、「記録する=痩せる」のではないのです。
「記録」→「自らの気づき」→「行動」→「痩せる」のサイクルを自分で回し続けているのです。
 
しかし、現状の記録系のヘルスケアサービスを見てみると、「自らの気づき」に対してアプローチせず、利用者が自分で発見することに頼ってしまっている、云わば本人に任せっきりなのです。
 
 
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3.「内側からの動機」にスイッチするには「気づき」へのアプローチ
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ヘルスコーチングでは、「気づき」をどう見つけてもらうかという視点が重要な要素です。
 
人が行動変容を起こす時の要因として「外側からの動機」と「内側からの動機」の二つあると言われていますが、「外側からの動機」は一時的であって、やはり長期的な継続という視点では「内側からの動機」が必要だからです。
 
・「外側からの動機」
行動の要因、きっかけが外側からの強制、評価、賞品、賞罰などのケース
・「内側からの動機」
行動の要因、きっかけが自ら内側から起こる興味、関心、意欲などのケース
 
上記で紹介した企業の健康施策としての「ウォーキングイベント」のケースでは、「ポイント」や「商品」等のインセンティブによる興味、関心が高まるため、「外側からの動機」になります。
 
「外側からの動機」は、一時的な感情の変化に止まってしまうパターンが多いのですが、続けていくことに働きかけること、そして「気づき」に対してサポートすることで「内側からの動機」へと変化することが可能なのです。
 
そのため、「外側からの動機」から「内側からの動機」へと組み合わせることが、特に異なるステージの人が混在する健康経営のアプローチでは必要になってきます。
 
「外側からの動機」から「内側からの動機」へとスイッチしていくプロセスでは、もちろん自ら「内側からの動機」に気づける人もいますが、多くの人は、なかなか気づくことはできない、見つけられないものです。
 
ヘルスコーチングのコミュニケーションでは、相手に「気づき」をどう見つけてもらって、目標に向かって行動を継続していくかのサポートをしていきます。
 
そこには、いろんな視点の投げ掛けやイメージ作り、時勢を使った発想などなど、様々なコミュニケーションを展開していきます。
 
しかし、この「内側からの動機」に向けたヘルスコーチングのコミュニケーションは、人対人での場面でしかできないかというと、そんなことは全くありません。
逆に、データの変化からのレコメンドや選択支援のための情報提供、そしてイメージ化のための質問やチェック項目などは、AIやシステム化などのほうが、タイムリーかつ効果的に提供可能な部分です。
 
しかし、データの変化からどんな視点に導いて「内側からの動機」に繋げていくのかは、1つのパターンが全ての人に対応可能ではなく、やはり複数パターンが必要になってきます。
 
また、「内側からの動機」のその先の「行動の習慣化、継続」へのプロセスでは「人」が寄り添うことのほうが効果的な部分があります。
 
 
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4.次のステップ、ステージに導くための「人」と「システム」の組み合わせ
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このように、「外側からの動機」から「内側からの動機」へのスイッチ、そして「行動の習慣化、継続へ」と進化する過程では、知識や意識、行動意欲が異なる人達を一つの組織、職域の集団として捉えるのではなく、それぞれのステージに合わせて次のステップ、ステージに導くための要素までしっかりと取り入れたサポートが必要です。
そこまで含めてサポートしていかないと、せっかくの健康施策も「外側からの動機」だけのイベント、打ち上げ花火で終わってしまうのです。
 
「外側からの動機」から「内側からの動機」へのスイッチ、そして次のステージである「行動の習慣化、継続へ」へのプロセスまで揃ってはじめて「行動できる」まで含めた本当の意味での「ヘルスリテラシー」へのアプローチと言えるのです。
 
その際、「内側からの動機」への気づきや「行動の習慣化、継続へ」へのアプローチでは、ヘルスコーチングの「システム化」と「人」の寄り添いをタイミングによって組み合わせていくことがより効果を高めるためのポイントであると言えます。
 
 
今回は「気づき」へのアプローチ、展開について解説しました。
 
最近、健康経営への取り組みやサービス提供に関連したご相談をいただくことが多く、特に「健康経営」×「ヘルスコーチング」のサービス導入やシステム化についてご相談いただくケースが多くなってきています。
 
我々は表面的な「健康経営」へのアプローチではなく、健康経営の本質的な部分が重要で、その目的達成のためのアプローチのお手伝いをさせていただきます。
 
もし「健康経営」へのアプローチや取り組みでお悩みのご担当者の方、「健康経営」×「ヘルスコーチング」にご興味ある方、是非お声がけください。
 
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「競合を超える」
 
それは、お客様との価値創造競争に専念し、共創すること。
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <14クリップ>
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[1]ヤクルト本社、女性に聞く「腸年齢」と健康意識に関する調査を実施
腸年齢が「実年齢より若い」人は全体の2割弱。ストレスを感じていない人、良い眠りをとれていると思っている人ほど、腸年齢が「実年齢より若い」。(2017/11/09)
 
[2]日立製作所と日立メディカルコンピュータ、ヘルスケア事業拡大に向けた国内事業再編について【PDF】
今回の再編は、地域包括ケアシステムの実現を支える医療機関や介護事業者へワンストップサービスを提供することを目的としている。(2017/11/15)
 
[3]日本スーパーフード協会、2018年上半期トレンド予測ジャパニーズスーパーフードランキングTOP10
第1位は「IT-HANABIRATAKE」。野生のハナビラタケは、標高1000メートルを超える高山に生育し、めったに見られないことから古来より珍重され幻のキノコと呼ばれる。β-グルカンやアミノ酸などが豊富。(2017/11/15)
 
[4]オムロン ヘルスケア、高血圧症に関する医師・患者調査
高血圧患者の33.5%が「心筋梗塞」「狭心症」「脳梗塞」「脳出血」「腎臓病」のいずれかと診断された経験があることがわかった、など。(2017/11/15)
 
[5]野村総合研究所、NRIジャーナル「デジタル化で切り開くヘルスケア産業の未来」
社会的・経済的な効果など、同社の調査・研究から見えてきた、健康・医療・介護といったヘルスケア産業のデジタル化の課題と可能性について。(2017/11/15)
 
[6]Phone Appliとジェナ、Apple Watchを活用した社員の健康管理サービス「CiRQLE」を提供開始
CiRQLEは、Apple Watchのアクティビティ機能を活用し、ヘルスケアにゲーミフィケーションを取り入れたアプリ。アクティビティのリングを完成させることでポイントを取得することができる。(2017/11/15)
 
[7]リクルートライフスタイル、低糖質メニューへの関心を調査
外食・中食・内食(自炊)別では、内食で「低糖質」への意識が高く、15.9%が「現在、低糖質を意識した食事を心がけている」と回答。「低糖質」意識はシニア層で高く、20-30代女性は「試しに食べてみた」人が多い。(2017/11/16)
 
[8]セブン-イレブンとOpenStreet、自転車シェアリング事業で協業【PDF】
本協業により、セブン-イレブンは全国主要エリアの店舗において、OpenStreetがソフトバンクと共同で運営する自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」を活用した駐輪場「ステーション」用の場所を提供する。(2017/11/21)
 
[9]ファンデリー、低糖質パスタCarbOFF使用の糖尿病・高血圧の方向けパスタ3種類を新発売
3種類のパスタは、糖尿病・高血圧など食事療法を必要とする患者でも食べられるよう、1食当たりのエネルギーを300kcal未満、塩分2.0g未満。また、通常のパスタを使用した場合と比べ、糖質を47%以上カット。(2017/11/21)
 
[10]PRESIDENT Onlineより、DeNAが「健康経営」を推進する理由
連載:渋谷発「健康経営ブーム」。会社の業績アップには従業員の健康こそ大事だとする健康経営。いま渋谷からこの健康経営の輪が広がろうとしている。(2017/11/21)
 
[11]シード・プラニング、[ヘルスケアIT・ビジネス研究会]ICTを活用した遠隔による特定保健指導サービス
開催日は2017年12月11日(月)。講師はNoom Japan株式会社代表の濱嵜有理氏。「Noomコーチを活用した遠隔による特定保健指導のサービス内容について」など。
 
[12]クラブビジネスジャパン、「Fitness Business No.93」を発刊
フィットネス業界の動きが分かる経営情報誌。特集は「法人需要の創造」。
 
[13]調査:デジタルヘルスは年間70億ドルの医療費を節約する
IQVIAのレポートによると、既存のデジタルヘルス製品が全国(米国)に包括的に配備されれば、年間70億ドルの医療費を節約できるという。(2017/11/17)
 
[14]mHealthWatch注目ニュース:会員数150万人の食事管理アプリ「あすけん」が「Amazon Alexa」に対応開始
食事管理、食事記録は、完全自動化が難しい世界ですが、どこまで進化していけるのか、そしてどこまで使い勝手を追求していけるのか、トップランナーである「あすけん」の進化を今後も継続的にウォッチしていきたい。(2017/11/27)
 
 
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