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[ヘルスコーチングの視線編]2017年12月26日号
   ≫≫≫Author:里見将史
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先日、「ヘルスコーチング」は特定保健指導でも活用できるのか?また一般的な特定保健指導におけるコミュニケーションとは何が違のかという質問を受けました。
 
そこで、今回は特定保健指導でのヘルスコーチングの活用についてお話したいと思います。
 
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
---「ヘルスコーチングの可能性を探る:特定保健指導へのヘルスコーチングの活用」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「適応課題の時代」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 ミクシィがヘルスケア事業参入、海外 VRドルフィンセラピーなど、9本
 
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【1】特集:ヘルスコーチングの視線編
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<テーマ>
ヘルスコーチングの可能性を探る:
特定保健指導へのヘルスコーチングの活用
 
 
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1.寄り添い方、寄り添うスタンスの違い
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ヘルスコーチングは、目標も目標までのプロセスもすべて対象者自らが自由に決定することが基本です。そして目標に向けた「行動の継続」にフォーカスして、プロセスを大切に寄り添うのが特徴です。
 
それとは逆に、専門家が「教える、指導する」いわゆる「ティーチング型」のコミュニケーションでは、目標もプロセスも専門家が主導します。ある意味専門家は寄り添うのではなく、専門家がリードして対象者がついていくようなイメージが一般的です。
 
ヘルスコーチングは目標と目標までの行き方、道順を対象者が自由に決められるのに対して、専門家が「教える、指導する」タイプのコミュニケーションでは、専門家がリードして目標を決めて、その目標までの行き方も専門家がリードする、いわば専門家が敷いたレールの上を外れないようにサポートする「トレーナー」的な役割なのです。
 
特定保健指導では各社が様々なサポートを提供しておりますが、ヘルスコーチング的なアプローチ、寄り添い方を基本にしているのは、いまのところ私が知る限りではNoomの特定保健指導とMTIが来春提供予定の健保向け CARADAパックだけだと思います。
 
 
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2.「特定保健指導」としてクリアすべき要件
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現在の特定保健指導に対応するためには、様々な要件、ルールをクリアする必要があります。例えば、初回面談や継続支援ポイント、評価などが要件、ルールの大きな部分です。
 
また、特定保健指導では、目標設定や行動計画、そして情報提供の内容などやることやプロセスのガイドラインもある程度決まっています。
 
しかし、仕組だけでみると最終的には初回面談や継続支援ポイント、評価など最低限クリアしていればOKというのが実情です。特に対象者の行動変容の有無や対象者の変化等、対象者の結果やプロセスではなく、提供者側だけのクリア条件だけで特定保健指導としては成立してしまうのです。
 
この部分が、特定保健指導が期待通り成果につながっていない大きな理由ではないかと考えています。
 
特定保健指導として対象者の身体の変化はもちろん行動変容、行動の習慣化など本来の成果に導くためには、成果につながる行動変容のためのプロセスや介入方法まで含めて、エビデンスを基本にルール化しクリア条件にすべきだと思います。
 
提供者側の介入によるやり取りの結果や事実だけがクリア条件の現状では、対象者の本当の成果に結びつけるには、やはり限界があるのではないかと感じています。
 
 
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3.ヘルスコーチング的アプローチは「特定保健指導」ではToo Much?
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上記のように現状の「特定保健指導」では、初回面談や継続支援ポイント、評価など最低限クリアさえしていれば成立します。しかし、本来の目的である対象者の身体の変化はもちろん行動変容、行動の習慣化などをしっかりサポートするためには、現状の介入頻度では十分とは言えません。
 
また、目標の具体化やその目標に向けた「行動の継続」にフォーカスするのであれば、コミュニケーションの量はもちろん「行動の継続」のためのしっかりとしたシナリオが必要です。
 
特に、「行動の継続」に向けてはPDCAのサイクルを定期的に回す必要も出てきます。
 
しかし、現状の最低限の条件をクリアしてさえいれば成立する特定保健指導では、PDCAのサイクルを定期的に回すことは介入頻度やコミュニケーションの量も増えてしまい、提供者側からみれば業務量が増えるだけということになってしまいます。
 
だからといって、対象者を置き去りにして条件だけクリアしていれば良いということであれば、今後も特定保健指導での成果はおそくら期待できないと思います。
 
やはり、対象者を本当の成果に導くためには、現状の特定保健指導の条件をクリアしつつ、身体の変化はもちろん行動変容、行動の習慣化にアプローチするためのシナリオやプロセス、コミュニケーションをしっかりと組み込む必要があります。
 
成果に導くためのシナリオやプロセス、コミュニケーションを組み込むことは、介入頻度やコミュニケーションが増すので、業務量の増加は避けては通れません。
 
しかし、PDCAのサイクルを定期的に回すなどのヘルスコーチングのアプローチでは、人が直接介入しなくてもシステム的に介入することで機能する要素も多く存在します。
 
そのため、全て人が介入するスタイルの特定保健指導ではなく、システムと人が連動して、特定保健指導の要件としてクリアする部分は人が介入し、特に継続支援ポイントにあたらない部分をシステム化して、全体として対象者の身体の変化はもちろん行動変容、行動の習慣化などをしっかりサポートした特定保健指導として組み立てることは十分可能なのです。
 
 
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4.人とシステムの組み合わせによる遠隔指導
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人とシステムを組み合わせることで、ある程度の業務量は抑えられるのと、やはりICTを活用することが今後の特定保健指導には欠かせない要素になってくると考えています。
 
電話やメールだけの接触頻度では細かい介入には限界があり、また「人=専門家」が全て対応すると「人=専門家」による成果のばらつきや品質の一定化が図れない可能性も出てきます。
 
そのため、ICTを組み合わせてシステム化できる部分と人が直接介入する部分を明確にして、対象者を本当の成果に導くための全体シナリオを設計し、その中でヘルスコーチングのコミュニケーション、アプローチをベースに展開していくのが、特定保健指導での活用イメージです。
 
ICTを組み合わせて遠隔で指導するスタイルを基本に提供することで、地域やエリアを超えたサポートが可能になり、規模の拡大にも繋がっていきます。
 
 
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5.進化が求められる来年度からの特定保健指導
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特定保健指導は、来年度から第3期特定健康診査等実施計画期間(平成30年度-35年度)になり、制度の運用の見直しなども出てきます。
いろんな見直しへの対応が必要になると思いますが、制度への対応だけではなく、本当に成果があがる特定保健指導へと進化させていくことを第一優先に、制度に対応していってほしいと思います。
 
もし、「特定保健指導」×「ヘルスコーチング」にご興味ある方、是非お声がけください。
 
 
 
 
2017年、ご愛読いただきまして誠にありがとうございました。
また来年2018年も「HBWメルマガ」はもちろん、この「ヘルスコーチングの視線」編を引き続きよろしくお願いします。
 
2018年、みなさまにとって良い1年になりますように!!
 
 
里見 将史
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「適応課題の時代」
 
適応課題とは答えのない困難な課題のこと。既存の価値観、先入観を一度捨てる覚悟が必要な時代です。
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <9クリップ>
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[1]青山商事、靴底内蔵の高反発シートで歩行をサポートする紳士革靴を発売【PDF】
INOAC社が独自開発した高機能シート「TURBOFLEX」を靴底に内蔵し、歩行時の推進力をサポートする紳士革靴。世界で初めて革靴に「TURBOFLEX」を採用。(2017/12/15)
 
[2]アシックスジャパン、ニューヨークの5番街に米国初の旗艦店「ASICS 5th Avenue Flagship」をオープン
アメリカ国内では初めて「アシックス」とスポーツライフスタイル向けの「アシックスタイガー」の2ブランドを同一店舗で取り扱う。(2017/12/15)
 
[3]ニッセイ基礎研究所、「健康情報」の提供は、男女の特徴をいかしたアプローチをー「健康」への接し方は男女で違う
同研究所で実施した調査を分析した結果、健康との接し方は男女で異なる特徴があり、年齢とともに変わる。企業による健康指導や情報提供等の取組みを効果的に伝えるためには、男女の特徴を捉えたきめ細やかな健康指導や情報提供が重要。(2017/12/18)
 
[4]森永製菓、“金(筋)曜日が29(肉)日になる日”12月29日は筋肉について考えよう!
日本初のトレーニング専用フードのデリバリーサービスMuscle Deliと共同で「筋肉についての調査」を実施。筋肉への関心が向上、筋肉がついたことで過半数を超える6割が人生が充実するようになった、など。(2017/12/18)
 
[5]日経デジタルヘルスより、デジタルヘルス事例:ケアプロが実践「訪問看護師×SNS」で働き方改革
訪問看護師の業務負荷を社内SNS「Talknote」の活用で削減する、そんな取り組みをケアプロが実践している。規模の大きい訪問看護ステーションならではの情報共有の難しさを克服し、看護師1人当たりの業務時間を1日30分-1時間ほど減らした。(2017/12/18)
 
[6]日本計画研究所、スポーツビジネスにおけるテクノロジー活用3大秘策とNTTグループをあげて取組む主要命題と事例
開催日は2018年2月9日(金)。本講義では、国内外の動向をNTTグループの取組み事例を通じて紹介し、2020年に向けたスポーツイノベーションにおける真に必要なテクノロジーとは何か、その導入方法について考察する。
 
[7]イルカと泳いで精神疾患を治療するVRドルフィンセラピー『Dolphin VR』
Dolphin Swim Clubによれば、イルカの映像を視聴することにより、不安障害やうつ病に対して効果を発揮するセラピー治療が行えるという。(2017/12/14)
 
[8]調査:ウェアラブルは2021年まで失速しない
IDCのレポートより。世界的な四半期ウェアラブルデバイストラッカーの予測では、合計出荷量は12,170万台、2016年出荷台数から16.6%増加。ウェアラブル市場はこの成長ペースを維持し、2021年の出荷台数は2億2,950万台に達すると予測。(2017/12/15)
 
[9]『mHealth Watch』注目ニュース:ミクシィ、ヘルスケア事業参入
ミクシィのヘルスケア事業参入は、子会社を設立し身体の状態を評価しそれに合わせた運動プログラムを提供。そして、コミュニケーションを通して継続しやすい環境を提供するとのこと。(2017/12/25)
 
 
 
 
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