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[海外事例にみる企画ヒント編]2018年1月23日号
   ≫≫≫Author:脇本和洋
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「海外事例にみる企画ヒント編」をお届けしている脇本和洋です。

海外の先進事例を探すため、ベンチャー企業への投資情報を毎週確認していますが、近年「メンタルヘルス分野」への投資が積極化しています。
そこで今号では、今まで紹介した事例も含めて、注目のメンタルヘルス系のベンチャーを分類して紹介します。
 
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---「注目のメンタルヘルスベンチャー動向」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「IoT時代のマーケティング4F」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 働く環境を可視化、海外 糖尿病管理システムなど、9本
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>注目のメンタルヘルスベンチャー動向
 
 
今回紹介するメンタルヘルス系ベンチャーの切り口は以下です。
 
1.「認知行動療法」のアプリ版サービス
 
2.「セラピー+コーチング」サービス
 
3.「VR」など仮想現実を使って治療を行うサービス
 
4.「家族支援」サービス
 
5.「メンタルタフネス」を身につけるサービス
 
6.「マッチング系」サービス
 
 
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1.「認知行動療法」のアプリ版サービス
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うつ病になった人に対する治療の基本は、「薬物療法」と「認知行動療法」となっています。その認知行動療法をアプリを使って自宅で受けることができます。
 
●Lantern(2016年2月に17億円調達、トータル21億円を調達)
 
Thrive Network社(2012年設立)が提供。認知行動療法に基づくアプローチで、まず自分の思考の中の消極的側面を特定・自覚し、次いで様々な状況下に対応するスキルを身につけられるよう、1回10分程度のエクササイズをします。
 
※参考>認知行動療法とは(認知行動療法センター)
 
 
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2.「セラピー+コーチング」サービス
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1の認知行動療法は、あくまで「考え方」を変えていくものです。考え方が変わっても行動が変わるかまではわかりません。そこで、セラピスト(日本でいう臨床心理士)が考え方を変える支援をするだけでなく、ヘルスコーチが「行動」を見直すことを支援するという「セラピー+コーチング」サービスが現れてきました。
 
●Ginger.io(2014年12月に20億円調達。トータル28億円を調達)
 
2011年設立。セラピストと話せるだけでなく、心理学とコーチングを学んだ「ヘルスコーチ」が、患者のスマホの情報(睡眠、運動、外出の状況など)を活用し、患者が生活習慣を見直す支援をするという点です。
 
・参考バックナンバー>2016年10月号
 
 
●AbleTo(2017年8月に36.6億円調達)
 
2008年設立。うつ病に苦しむ人向けのセラピー&コーチングプログラム(8週間)を提供しています。セラピストと行動変容コーチ(Behavioral Coach)とともに、電話またはビデオ通話形式で、週2回(1回45分間)のセッションを行います。
 
セラピストからは、認知行動療法をうけます。行動変容コーチからは、達成可能な目標をもつこと、タイムマネジメント、病後の身体の回復をよくすることなどのコーチングを受けます。
 
・参考バックナンバー>2017年10月号
 
 
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3.「VR」など仮想現実を使って治療を行うサービス
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メンタルヘルスの症状の中には、1や2の認知行動療法やコーチングによる方法が効きにくい場合もあります。もっと強い克服イメージが必要になる場合です。そこにVRの技術を使ってサービス提供しようとするベンチャーが現れています。
 
●Psious(資金調達情報は公開なし)
 
セラピーの効果を高めるツールとして「VR」のサービスを提供。仮想現実を使って、特定のシーンを作り出し、患者が克服法をセラピストとともに考えるというものです。
 
 
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4.「家族支援」サービス
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1から3までは患者本人向けのサービスです。一方、本人だけでなく家族向けのサービスを充実させる事例もあります。
 
●Mindoula(2014年5月に0.2億円調達)
 
「メンタルヘルス・コンシェルジュ」というサービスを提供しています。本人向けに回復プランを考えるとともに、家族向けのサービスを充実させています。
 
家族向けには、「介護家族の孤立を防ぎ、負担を軽減すること」を目標とし、「危機管理」「自分のメンタルヘルスを管理する方法」「問題行動によるトラブルに対処する方法」などのアドバイスをします(アプリ、電話など)。
 
・参考バックナンバー>2016年8月号
 
 
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5.「メンタルタフネス」を身につけるサービス
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1から4は、「うつ」や「メンタルヘルス不調」で実際に治療を受けている人(どちらかといえば急性期の人)向けでした。5で紹介するのはストレスがたまっていると認識があるも病院には行っていない人や回復期にある人向けのサービスです。
 
●HEADSPACE(2017年6月に37億円調達、トータル75億円を調達)
 
2010年設立。ビジネスマン向けマインドフルネス(瞑想)アプリを提供しています。アプリではまず無料の基本コースで瞑想の方法について学びます。終了すると、生産性や集中力アップといった「パフォーマンス向上」、自己肯定感を伸ばしたり、不安やストレスを軽減したりする「内的健康」など、テーマ別に瞑想トレーニングができます。
 
 
●Happify(2017年8月に9億円調達、トータル26億円を調達)
 
2012年設立。同アプリでは、「ネガティブ思考を克服する」、「ストレスにうまく対処する」、「自己肯定感を持つ」、「キャリアの成功につなげる」、「瞑想を通してマインドフルネスを改善」といったような具体的なテーマを選択し、身につけていきます。
 
 
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6.「マッチング系」サービス
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最後は、セラピストと患者の「マッチング系」サービスです。
 
●Talkspace(2017年9月に31億円調達、トータル59億円を調達)
 
提携しているセラピストと患者をマッチングさせ、スマホやPCでセラピーをするためのプラットフォームを提供しています。
 
 
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「ベンチャー事例からのヒント」
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今回は、「メンタルヘルス分野」で注目しているベンチャー事例をいくつか紹介しました。私見ですが、これからの日本で求められるサービスのポイントをあげてみます。
 
■患者の状態共有と、段階に合ったサービス提供
 
うつ病は、その状態が変化しながら、長期間の治療が必要となる場合が多いです。したがって、効果的な治療のためには、過去の状態や取り組みがどうだったかを治療関係者がよく共有することが大切です。
 
その点、Ginger.ioは、医師、セラピスト、ヘルスコーチが患者の状態(段階)に合わせてチームとなって動きます。今後は、「家族」もそのチームに加わり患者の状態と対策を共有しながら進めるとより効果的だと思います。
 
 
■行動からのアプローチ
 
「考え方を変えて行動が変わる」ということが基本でしょうが、「行動を変えて考え方を変えていく」という方法も重要だと考えられます。その点、Ginger.ioやAbleToのような、「セラピー+コーチング」サービスは、日本でも可能性があると思います。
 
 
■先行き不安の解消
 
うつ病は長期戦となりがちです。それだけに、先行きが不安になるものです。米国のNAMI(全米精神疾患患者家族会)では、克服家族がストーリーとして語り、先行きの不安を解消するメンタープログラムを行っています。こんなサービスはぜひ日本でもほしいですね。
 
 
■メンタルタフネスをつける
 
昨年から大手銀行のリストラを、新聞記事として何度か目にします。低成長経済の中で、解雇を突然受ける人の増加が今後予想されます。また、成果が出ないストレスや、理不尽な要求などで心が折れやすくなることが増えると予想します。
 
そうした時に活用できるレジリエンス(折れない心や打たれ強さ)を、自分なりに身につけておくことを支援することが必要になると感じます。その際には、一つの方法を提案するのでなく、効果がある方法を自分なりにみつけていくことを支援する「ヘルスコーチング手法」が効果的だと思います。
 
 
【脇本和洋】
 
 
【ヘルスコーチングを活用した企画開発サポート】
セラピー&コーチングでもあったヘルスコーチングという手法。
スポルツではすでに日本でヘルスコーチングのサービスを実施しています。
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「IoT時代のマーケティング4F」
 
それはフレンズ、ファミリー、フェイスブック、ツイッターフォローであり、新しい信頼関係づくりの基本です。
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <9クリップ>
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[1]ローソン、健康寿命延伸を目指す“攻めの健康食”現役で働く人の為のセットメニュー販売の実証実験
糖質をおさえ健康な身体づくりをサポートするシーン別健康セットメニューの提案などの実証実験を行う店舗を、期間限定で丸の内にオープン。(2017/01/10)
 
[2]日経デジタルヘルスより、デジタルヘルス・レポート:「医療×AI・VR・ブロックチェーン」世界のトレンドを読む
「テクノロジーNEXT 2017『医療×AI』の未来ーWatsonから未来投資会議、海外事情までー」に医師/情報学研究者の沖山翔氏が登壇。指数関数的に進歩するテクノロジーの中から特に注目される7つを医療との関連を踏まえて解説。(2017/01/10)
 
[3]富士通コネクテッドテクノロジーズとエムティーアイ、シニア向けモバイル健康サービスの提供に向けて業務提携
第1弾サービスは、健康維持・増進に重要な運動を主テーマに、生活の中で無理せず手軽な身体活動につながるゲーム性の高いデジタルコンテンツの提供を行う。それ以降、食事管理等の健康維持・増進につながる新サービスを順次拡大予定。(2017/01/12)
 
[4]オークロンマーケティング、コンパクトマシン「OYO パーソナルジム」新発売
「OYO パーソナルジム」は、NASAの宇宙飛行士が無重力空間で筋肉を維持するために開発された特許出願中の技術「スパイラフレックステクノロジー」を搭載したフィットネスマシン。1セット30秒で全身を鍛え引き締める。(2017/01/15)
 
[5]ハースト・デジタル・ジャパン、Women's Healthがスポーツを通じて社会に貢献する女性を讃えるアワード「Woman in Sports」を創設
スポーツを通じて社会に貢献している女性たちにスポットライトを当てることで、スポーツの社会的意義を再確認すると同時に、スポーツを取り巻く環境をより良くし、スポーツに従事する女性を応援していくことを目的に設立。(2017/01/15)
 
[6]ヤフー、5種類のIoTセンサーやデバイスを活用し、働く環境を可視化する公開実験を産官学から9企業・17アドバイザーが参画する団体と共同で実施
Yahoo! JAPAN紀尾井町オフィス内のオープンコラボレーションスペース「LODGE(ロッジ)」において、1月15日(月)から2月6日(火)の間、新しい働き方を探求する公開実験「“はたらく”のつなぎかた」を行う。(2017/01/15)
 
[7]Biotricity、モバイル心臓遠隔測定システム『Bioflux』がFDAクリアランスを獲得
『Bioflux』は3チャンネル構成のデバイスで、心臓の不整脈を特定するのに役立つモバイルによる心臓遠隔測定システム。(2018/01/15)
 
[8]WellDoc、糖尿病管理システム『BlueStar』によりコスト削減につながる
WellDocの分析によると、同社の2型糖尿病デジタル治療は、患者1人当たり月平均250ドル以上の節約につながる可能性がある、と伝えた。(2018/01/16)
 
[9]『mHealth Watch』注目ニュース:富士通『なわとびセンシングサービス』販売開始
センシングの技術をもとに、見える化までを提供するのではなく、専門員を派遣して授業まで提供するこのサービスパッケージは、他の分野でもヒントになりそうな気がしています。(2018/01/22)
 
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