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[海外事例にみる企画ヒント編]2019年1月22日号
   ≫≫≫Author:脇本 和洋
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こんにちは。脇本和洋です。
 
日本医師会や総務省のデータによると、日本における難聴者は1,160万人と推計されます。それに加え、「軽度の難聴予備軍」が907万人と推計されており、合計すると約2,000万人の難聴・難聴予備軍が存在し、高齢化に伴いその数も急増すると予想されています。
 
そこで今号では、今後注目したい「難聴」に関する海外ビジネスを紹介します。
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---「難聴」に関する海外ビジネス
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「後ろに夢はない!」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 ジムと自宅を繋ぐアプリ、海外 減量用デバイスなど、11本
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>「難聴」に関する海外ビジネス
 
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1.難聴が着目される理由
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●認知症を防ぐには「難聴対策」が必要
 
厚労省が発表しているオレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)では、難聴は糖尿病・高血圧などとともに認知症の代表的な危険因子とされています。
 
難聴になると、他人とのコミュニケーションがうまくいかない、イベントに参加しても楽しめない、車の音など危険を感じる音が聞きとりにくいといった理由で、外に出る機会が減ります。その結果、体や脳を使うことが極端に減り、認知症の発症リスクが高まるというわけです。
 
認知症が大きな社会問題となる今後、難聴にうまく対応していくことが必要となってきます。
 
 
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2.難聴に関する海外ビジネス
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米国では、International Hearing Society(国際聴覚協会)の展示会があり、多くの難聴向けビジネスを展開する企業が出展しています。こうした展示会への出展企業も含め、いくつかユニークなものを紹介します。
 
注>難聴(軽度難聴)は、hearing loss(mild hearing loss)と訳されることが多い
 
 
●iHEARtest(iHEAR社):自宅でできる聴力検査キット
 
補聴器開発のベンチャー企業で約17億円の資金調達に成功している。iHEARtestは、FDA(アメリカ食品医薬品局)承認の自宅でできる聴力検査キットで、専用イヤホンをUSB経由でパソコンに接続して使用する。それぞれの耳の聴力をWHOのガイドラインによる5段階の難聴レベルで判定する。
 
 
●Kaizn(Oticon社):AIアシスタント搭載の補聴器
 
世界的に有名なデンマークの補聴器メーカー。Kaiznは、2019年CES革新賞を受賞した、AIアシスタント搭載の補聴器。最大の特徴はAI機能により、ユーザーがいつ、どのような環境で補聴器を使用するか、その活用状況や聞こえの好みといったデータを分析すること。
 
例えば、にぎやかなレストランのような騒々しい環境に入ると、Kaiznは自動認識し、この環境下で「集中」したいか、「快適」なのかを質問してくる。そしてユーザーの目的に応じて、好みに合わせた調整を行う。さらに、ユーザーからのフィードバックを学習し、以前と同じような騒音環境に遭遇すると、過去のデータに基づいて最適な判断を下すようになる。
 
 
●Livio AI(Starkey Hearing Technologies社):ヘルストラッカー付きAI補聴器
 
補聴器分野で世界展開をする米国企業。世界120ヶ国、1,500万人以上が利用する。最新機種である「Livio AI」では、CES 2019 Innovation Awardを受賞。
 
Livio AIはセンサーにより周囲の騒音が大きい場合、自動的に騒音を小さくして会話を聞き取りやすくする。特徴は、脳と身体全体の健康レベルを測定するヘルストラッカー機能があること。同社の専用アプリと連携させれば、同機器を使用して活発に他者と会話している時間から算出するBrain Score(脳健康スコア)と、活動量を測定して算出するBody Score(身体健康スコア)をベースに、健康レベルをThrive Wellness Scoreという独自のウェルネススコアで判定してくれる。
 
 
●Hearing Supplement (Audiens社):難聴向けサプリメント
 
Audiens社はビタミンD3、メチルB12、マグネシウムといった素材を使った難聴向けサプリメントを提供している。加齢による難聴の一因とされる骨代謝異常に効果を期待できるビタミンD3や聴覚保護に役立つとされるマグネシウムなど、聴覚機能に良いという研究結果が出ている栄養素を含む。
 
 
●Smart Hearing: Strategies, Skills, and Resources for Living Better with Hearing Loss(Katherine Bouton著):難聴の人向け書籍
 
米国難聴者協会のニューヨーク支部長、Katherine Bouton氏による難聴対策の実用書。難聴になった時、脳をトレーニングして聞きやすくするといった生活習慣改善にまで提言している。
 
 
●EatingWell:雑誌
 
EatingWellは発行部数180万部の健康雑誌。そのウェブ版では加齢性の難聴リスクを下げるのによいとされる、魚に含まれるオメガ3脂肪酸や、ホウレンソウなどに含まれる葉酸を含むレシピが紹介されている。
 
 
●Healthy Hearing:聞こえの情報サイト
 
難聴の兆候、種類、原因、検査方法、対策、予防/生活習慣改善などを幅広く扱っている。予防/生活習慣改善として、脳トレやストレスマネジメント、バランスの取れた食事や適切な運動を心がけることを勧めている。
 
 
●Ava:テキスト化アプリ
 
音声をテキスト化するアプリを開発するベンチャー企業。同社のアプリ「Ava」は話し相手がグループの場合でも、各自の会話をテキスト化してくれる。
 
利用の仕方は、まず本人がアプリをダウンロードする。次いでその場にいるメンバーのスマホに招待メールを送り、アプリをダウンロードしてもらう。各メンバーは話すとき、自分のスマホを近くに置いて音声を拾ってもらうようにすると、難聴者のスマホには誰が何を話しているかがテキスト化されて表示されるという仕組み。
 
 
●SonicCloud(Sonitum社):音声調整アプリ
 
オーディオシステムを難聴者向けにカスタマイズする技術を開発するベンチャー企業。SonicCloudは難聴者の聴覚特性を分析し、補聴器なしでも聞き取れるように音を調整するアプリ。
 
使い方は、まずアプリで聴覚アセスメントを行い、様々な周波数の音域に対する聴力レベルや快適に聴ける最大音量レベルなど、ユーザーの聴覚特性を詳しく調べ、プロファイルを作成する。
ひとたびプロファイルができれば、パソコンに同アプリをダウンロードし、視聴したい音楽、映画、テレビ番組などをストリーミングすれば、健聴者と同じように実音を楽しむことができ、補聴器なしでも楽に聞き取れる。
 
 
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3.今後のビジネスのポイント
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●難聴者に対する支援
 
難聴者に対しては、今まで「補聴器」が代表的な解決策でした。しかし最近では、海外事例で紹介したようなAIを使った補聴器、テキスト化アプリ、音声調整アプリなど様々な形で商品が展開されています。最新のテクノロジーをうまく導入したものが今後も出てくるでしょう。
 
 
●難聴予備軍に対する支援
 
今後注目したい分野です。軽度難聴の人(やや聞きにくいが補聴器をつけるまでいかない人で約907万人が存在)で、具体的な解決策もまだあまり提示されていないゾーンです。今回紹介した海外事例では、聴力検査キットやサプリメントなどが値するでしょう。
 
日本では、難聴へのなりやすさは生活習慣によるものが大きいとの研究もあり、食事、運動、脳トレ、血流の向上、自律神経を整えることなどが予防に効果的ともされていますが、はっきりとしたエビデンスがあるところまではいっていないようです。
 
今後この分野で研究が進み、商品や生活習慣改善の継続支援サービスが登場することを期待しています。
 
 
【脇本和洋】
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「後ろに夢はない!」
 
嘘でもいいから元気出せ!そして後ろに夢はない、前を向け!
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <11クリップ>
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[1]カーブスジャパン、サーキットトレーニングの習慣化で2型糖尿病発症率が最大で約40%低下【PDF】
国立健康・栄養研究所とカーブスジャパンの共同研究。サーキットトレーニングの頻度と糖尿病発症の関係について世界初の調査。(2019/01/09)
 
[2]東急スポーツオアシス、ジムと自宅を繋ぐアプリ「WEBGYM LIVE」をリリース
フィットネスクラブで行われている生のレッスンを、だれでも、どこでも受けられる業界初のサービス。第1弾は「BIKE Program」をメインにサービスを開始。(2019/01/15)
 
[3]Kids Public、スマホで産婦人科医に相談「産婦人科オンライン」を小田急電鉄株式会社の福利厚生制度として提供開始【PDF】
産婦人科領域に特化した遠隔健康医療相談サービス。妊娠期から産後という心身の不安が大きい時期にスマホから産婦人科医及び助産師に気軽に相談できる環境を作り、仕事と両立しながら安心して妊娠・出産・子育てができる支援を行う。(2019/01/15)
 
[4]富士フイルム、バイオ医薬品の製剤ビジネスに本格参入
バイオ医薬品のCDMOの中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの米国テキサス拠点にバイオ医薬品の製剤製造ラインを新設し、2021年初めに稼働させる予定。(2019/01/15)
 
[5]ニッセイ基礎研究所、65歳の人が、今後“健康”でいられる期間は?ー人生100年時代は、「健康寿命」ではなく「健康余命」で考えるー
日本は諸外国と比べても寿命が長い国の1つであり、今なお平均寿命は延び続けている。しかし、“健康”で長生きすることが多くの人の願いであり、最近では「健康寿命」への関心の方が強い。本稿では、65歳時点の「健康余命」について紹介する。(2019/01/15)
 
[6]日経デジタルヘルスより、脱ヘルスケアの時代へ「課金代わりに“うんこ報告”も、ヘルスケアにゲームを」
課金の代わりに“うんこの報告”をすることでキャラクターを強くできるソーシャルゲーム「うんコレ」は、ゲームを活用したヘルスケアサービスといえる。ゲーミフィケーションの手法は、これからのヘルスケアサービスに必要な視点の1つとなるだろう。(2019/01/15)
 
[7]ウーマンズラボより、マーケティング戦略の基本と女性をターゲットにしたビジネスの考え方
マーケティング戦略の基本的なポイント、マーケティング戦略の理解を深めるおすすめ書籍、女性をターゲットにしたマーケティング戦略の考え方、など。(2019/01/15)
 
[8]クオリティーライフサービス、小田原本部講座:第5回食コンディショニング講座
開催日は、2019年2月19日(火)。テーマは「時間栄養学をフル活用してパフォーマンスアップする方法」。
 
[9]MIT、体外から投薬やデータ収集をコントロールできるBluetoothカプセル開発中
カプセルの中には4つの小部屋があり、そこに薬が入っていて、徐々に放出する。一方で、搭載するセンサーが体内温度などさまざまなパラメーターを測定する。(2019/01/10)
 
[10]胃の中から電気パルスを流して脳を「満腹だ」と錯覚させる減量用デバイス
ウィスコンシン大学の材料工学教授であるXudong Wang氏は、バッテリーが不要でわずか1cm以下の大きさのダイエット用デバイスの開発に成功。料理やお菓子を食べた時に発生する胃の自然な動きに応じて電気パルスを生成し、胃と脳を結ぶ迷走神経に伝える。(2019/01/11)
 
[11]『mHealth Watch』注目ニュース:CES2019に見るヘルスボイステックの活用
ボイスアシスタント「Alexa」を搭載する自転車『Cybic E-Legend』、モニターではなく音声でサポートするサングラス型デバイス『Optishokz』の2製品に共通するのは、音声によるサポートが受けられること。(2019/01/21)
 
 
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