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  今回の注目事例:米国最大の摂食障害の回復施設「Remuda Ranch」
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【15年の歴史をもつ専門施設】

摂食障害は女性が中心の疾患で、「拒食症」と「過食症」に分かれます。
原因の多くは生活習慣(過度なダイエット)と精神的な要因(家族関係や学
校環境ストレス)が重なることと言われます。

厚生労働省の調査によると摂食障害の患者数は20年前の10倍以上になり
、また、高校3年女子の50人に1人が摂食障害であるとする調査結果もあ
ります。

日本では、摂食障害をもつ人が相談できる専門病院(心療内科)の数が少な
いこともあり、十分な対応がされていません。

そこで今回は、米国で最大の摂食障害専門施設として15年の歴史をもつ、
「Remuda Ranch」を取り上げ、そのプログラムを紹介します。


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【「Remuda Ranch」の概要】
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■社名:Remuda Ranch
http://www.remudaranch.com/index.asp

■所在地:Wickenburg(米・アリゾナ州)
■設立:1990年1月(今年で15周年を迎える)

■企業概要:
拒食症・過食症の女性対象の合宿型プログラムを提供する宿泊施設。13歳
以下、13歳~17歳、18歳以上の女性の3つの年代別コースがある。カ
ウンセリング、セミナーを通じて、正しい生活習慣の継続指導する。199
7~2001年に患者の94%が摂食障害を完治した実績あり。

■年間売上推定:約44億円
・年間訪問数:約400名
・平均滞在期間:55日
・1日あたりの費用:1875ドル(宿泊含む)
※高所得家族がターゲット。

■プログラム概要
個人カウンセリング、グループセラピーなどの精神面のケア、アート・創作
・音楽・乗馬療法などの各種セラピー療法、さらに適切な栄養指導などを含
む摂食障害の「徹底治療プログラム」。

http://www.remudaranch.com/about_us/programs.asp


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【Remuda Ranchの特長】
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こころと体の両面からのプログラムを提供する同施設ですが、特に下記の
2つはユニークな特長です。

■6種類の専門家によるチームアプローチ

同施設では、患者一人一人に対し6種類の専門家が関わりながらの「チーム
アプローチ」がなされています。

1)総合コンサルタント(患者ごとに合った施設の使い方やプログラムをコ
 ンサルティングする)
2)初診担当医(身体的・精神的健康状態を総合的に診断)

3)心理学者(様々なストレスへの対処方法を教える専門家)
4)セラピスト(音楽や詩・ダンス・アート・乗馬・レクリエーションセラ
  ピーなどを教える専門家)
5)登録栄養士(摂食障害施設での食事管理の専門家)
6)登録看護士(メンタルヘルスの知識も保有する看護士)

同施設では1~6の専門家を組み合わせ、健康課題解決の基本である
「Plan→Do→See」を実現しているとも言えます。

・参考(写真あり)
http://www.remudaranch.com/staff/index.asp


■家族向けの徹底したガイダンス・教育

Remudaの標準プログラムでは、家族も約40時間のワークショップへの参加
が義務づけられています。また、家族と一緒にプログラムに参加する
「Family Week」というものもあります。

摂食障害が長引く原因として、家族の摂食障害への理解が不足している点が
多く見られることから、患者の家族(特に親)へのガイダンスが必須と考え
たプログラムを提案しています。


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【スポルツの視点】「専門家チームアプローチ」と「家族へのアプローチ」
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■「専門家チームアプローチ」

・日本の健康関連の専門家は、その種類だけでも80を越えます。同社は
「摂食障害」という健康課題に対して、最適な専門家を組み合わせ対応して
います。この手法は他の健康課題の解決にも使えるはずです。

・たとえば、ダイエットがテーマの場合、通常は管理栄養士とフィットネス
トレーナーの組み合わせで対応しようとします。しかし、ダイエットとスト
レス・睡眠の関連性が指摘されている現在、新しい専門家を組み合わせたサ
ービスも可能性があるはずです。

※ストレス関連で、2001年に発足した「メールカウンセラー」(日本オ
ンラインカウンセリング協会)は、ダイエット商品のネット販売との相性も
よく、活用の可能性があるはずです。

※また、中・高齢者向けのダイエット商品・サービスの展開ならば、健康だ
けでなく「生き甲斐」も含めたトータルの健康を提案する「ウエルネスデザ
イナー」(日本ウエルネス協会)などの活用も考えられるはずです。


■「家族へのアプローチ」

・あらゆる健康課題の解決には「家族の協力」が必要です。ただ、現状では
、家庭内でその疾患に対する正しい知識が不足していたり、動機つけのアプ
ローチが不適切な場合もあり、「本人以外の家族へのサポート」を付加価値
として提案することは、商品・サービスの独自化に繋がるはずです。


■日本での展開課題

・米国では、こうした「専門施設」が、医療評価機関JCAHO(Joint C
-ommission on Accreditation of Healthcare Organizations)より認定さ
れ、患者が安心して利用できるしくみがあります。

・日本にはまだ「摂食障害専門施設」は存在していませんが、展開にあたっ
てまずこうした信頼性をいかに取得するかが最大の課題といえます。


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