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「リタイアメントコミュニティ」に見る「シニアの健康のための学び」
  とは?
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【米国「リタイアメントコミュニティ」の現状】

「リタイアメントコミュニティ」とは、主に55才以上の退職した中・高齢
者が、元気に安心して暮らせる町を指し、介護の必要な人から健康で自立し
た人まで幅広く対応する居住施設と医療・生活関連サービスなどが整備され
ています。

米国では1960年にオープンした「サン・シティ(アリゾナ州)」をはじ
めリゾート地を中心に開発が進み、各地で広く普及しています。これまでリ
ゾート開発企業やホテル企業などが参入し、ゴルフ場、クラブハウスなどを
併設した高級なリタイアメントコミュニティが多く建設されています。

最近のトレンドとしては、必ずしも広大なリゾート地ではなくても、地元の
大学と隣接して建設された「学び」の機会が充実したリタイアメントコミュ
ニティの人気が高まっている点があります。

今回は、このような大学隣接型のリタイアメントコミュニティを紹介、シニ
アの健康(いきがいづくり)を考える際にポイントとなる、「学び」につい
て考えます。



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【事例その1】Lasell Village
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■基礎情報
・正式名称:Lasell Village
・URL: http://www.lasellvillage.com/index.html
・所在地:マサチューセッツ州ニュートン(ボストンから電車で30分)
・設立:2000年
・居住者数:約210人
・敷地面積:約13エーカー(約5ha)
・運営主体:Lasell Village, Inc(非営利)
・提携の大学:Lasell College

■主な施設
居住施設(172室)・病院・介護サービス施設・運動施設・プール・美容
院・銀行ほか生活関連サービスなど。

・施設概要
http://www.lasellvillage.com/html/amenities.html

■「学び」の特長:年間450時間の授業参加で「世代間の交流」もあり

Lasell Villageでは、年間450時間以上の授業参加が入居条件のひとつに
なっています。自分の関心のある分野を専攻して、隣接する大学(Lasell
College)での授業に参加します。ビレッジ専任の学部長(教授)が、授業
選択をサポートをしてくれます。講座内容は、教養科目のほか文学・法律・
会計・トラベル&ツーリズムマネジメントなど大学のすべての科目に渡りま
す。

キャンパスの図書館、コンピュータセンターなどの施設が使えるほか、運動
プログラムへの参加も可能。オプションとして、大学(Lasell College)の
正式単位登録やイベントへの参加、学習旅行にも参加できます。

また、学習以外にも、専門知識をもつシニアが、学生を指導するアドバイザ
ーになったり、大学内の託児施設での託児ボランティアに参加するなど、さ
まざまな世代間の交流の機会があります。

・講義の様子(写真あり)
http://www.lasellvillage.com/html/academics.html



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【事例その2】University Retirement Community(URC)
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■基礎情報
・正式名称:University Retirement Community
・URL: http://www.retirement.org/davis/index.htm
・所在地:カリフォルニア州デービス
・設立:2000年2月
・居住者数:約400人
・敷地面積:約22エーカー(約9ha)
・運営主体:Pacific Retirement Services, Inc.(非営利)
・隣接の大学:University of California, Davis(カリフォルニア大学)

■主な施設
居住施設・病院・ケアセンター(高度障害者向け)・美容室・フィットネス
施設・プール・スパ・ラウンジ・瞑想ルーム・図書室ほか生活関連サービス
など。

・施設概要
http://www.retirement.org/davis/services.htm

■「学び」の特長:シニア自身が「教える立場」に!

URCの最大の特長は、隣接するカリフォルニア大学で提供されている
「Senior Learning Unlimited(SLU)」にあります。

授業はすべて本プログラムに参加する高齢者自身が講師となり、自分の経験
を活かしてボランティアで講義を行われています。文学・歴史・コンピュー
タ・時事問題など幅広いコースがあり、高齢者は学ぶだけではなく、これま
で培った経験や知識を活かして「教える立場」で参加もできます。

・Senior Learning Unlimited(SLU)
http://www.universityextension.ucdavis.edu/seniorlearning/


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【スポルツの視点】
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■シニアの健康づくりを考える際には、心の健康に繋がる「生きがいづくり
」をはずすことはできません。

■今回紹介したリタイアメントコミュニティでは、近隣大学と組み、「教え
る」「学ぶ」という生きがいの場を提供しています。今回はこの2つについ
て考えてみたいと思います。

■まず、「教える」についてです。「教える」ということは自分のもつ経験
・知識・技術を整理し、後生に伝えることになり、それだけでも、心の安ら
ぎに繋がります。

■今回の事例では、「教える」を実現するために「近隣の大学」という場を
うまく使った点に注目できます。ただ、日本の大学がこうした提携にどの程
度協力的かどうかは未知数の部分もあります(教える能力がわかりにくい人
に、大学が機会を与えにくい)。どのような場をもった企業と連携するかは
改めて考える必要があります。

■また、「教える」ことができる人がどれぐらいいるのかといった課題が予
想できます。(人に教えるだけの能力をもつ人の割合の問題)

■それに対しては、自費出版の支援サービスに見られるよう、能力の棚卸し
をサポートしてくれる企業を活用し、いきなり人前で教えるのでなく、「書
籍やレポート」の形でまず表現してみる方法があります。「書いた後教える
」という流れになれば、「教える」ことができる人は増えはずです。

■次に「学ぶ」についてです。生きがいになる「趣味や知識」を学ぶという
今までの学びの領域だけでなく、「生活基盤力を学ぶ」ということが考えら
れます。「生活基盤力」とは、さまざまな家事をこなす能力をさします。

■最近熟年離婚という言葉をよく聞きますが、離婚の原因として、夫の家事
負担が得られず、それが原因となる場合もあると指摘されています。また、
高齢で一人暮らしになった場合、「生活基盤力」はシニアの健康とダイレク
トに結びつくことにもなります。

■特に男性にとっては、むやみに趣味や知識といった学びを追いかけるより、
「夫婦」「家族」単位での生活基盤力を学ぶことの方が、健やかなシニアラ
イフの一環になるとも考えます。

■今回は、少し広い意味でシニアの健康を考えてみました。シニアになると
いくら気をつけても疾患が出やすくなります。疾患を抱えながらもいかに充
実した生活を送るかが大切になり、その際には今回のように「生きがい作り」
まで広げて健康を考える必要がありそうです。


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