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キオスク端末向け健康コンテンツ提供企業「Healthnotes社」
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【情報提供の価値が改めて見直される】 

経済産業省が主体となって進めていた、ICタグを活用した新しい店舗の姿を
占う実証実験「フューチャーストア構想」が、3月で一つの区切りを迎えま
した。

この構想は店舗でのIT化を進め、生活者にとってより快適な品物選びを可能
にしようというもの。本格導入にはいくつかの課題があるようですが、店舗
での情報価値がもたらす効果を改めて考える一つの動きです。

今回紹介する「Healthnotes社」は、健康流通店舗のキオスク端末で使える
健康情報を専門に提供するコンテンツ配信企業。今回は同社の最新動向を
紹介し、健康情報コンテンツがもたらす価値について考えます。


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【事例紹介】Healthnotes, Inc.
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■基本情報

・企業名:Healthnotes, Inc.
・URL: http://www.healthnotes.com/
・設立:1989年
・本社所在地:オレゴン州ポートランド

・事業コンセプト(表記):The Hub of the Heathy Living Marketplace
               「健康生活マーケットの拠点」

・事業概要:
スーパー・ドラッグストアで使うキオスク端末向け健康コンテンツ販売、お
よびウエブサイト向け健康コンテンツ販売(米国を中心に6500箇所以上
のスーパー・ドラッグストア店舗での導入実績あり。米国のトップ10スー
パーマーケット企業のうち7社が、同社のキオスク端末を採用しているとい
う)

・収益の形:コンテンツ販売による収益
・売上:6.6百万ドル見込み(約7.3億円/2005年)
    5.4百万ドル(約6億円/2000年)

・世界への展開状況:イギリスにセールスオフィスあり(2004年には、
マレーシアのゴールドジムというフィットネスクラブにも導入)

■導入効果
・2005年5月から12週間行われた同社キオスク端末の使用に関する実
証実験によると、店舗に同社のキオスク端末を導入することで以下のような
メリットがあったことが報告されています(Wisner Marketing Group社とい
う第3者機関による調査結果)。

・「売上拡大」
ー画面で紹介したコエンザイムQ10(高血圧&高コレステロール向け)
 の販売額は20%増加
ー買い物客全体の40%以上は、キオスク端末で得た情報を参考に商品購入

・「従業員の生産効率の向上」
ー薬剤師の窓口対応の労働時間、週あたり5時間を節約

・「顧客満足度の向上」
ー買い物客の75%は、キオスク端末の情報が役立つと回答
ー買い物客の93%は、店内のキオスク端末は重要と認識

※Healthnotes社のプレスリリース
http://www.healthnotes.com/press-releases/2006-02-27_2
※Wisner Marketing Group社のプレスリリース
http://www.wisnermarketing.com/news.html#newethnicstudy

■直近の動き

同社は2006年2月に「Healthnotes Connect」を新発売しました。内容
は下記のとおりです。

<コンテンツの強化>

●650種類以上の症状別の健康解説

下記の15テーマ別に気になる症状についての解説あり

<テーマ>
女性、男性、こども、エイジング、消化器系、糖尿病、心臓、風邪、アレル
ギー、痛み、関節痛、肌の悩み、目&耳、救急、ストレス

<症状の解説>

具体的には、男性>高血圧、を選んだ場合、

・「知っておくべきこと5つ」を表示。
1)塩分を控える
2)栄養ラベルを読むくせをつける
3)体重増加に気をつける
4)コエンザイムQ10を1日100mgとる
5)サプリメントでカルシウムを補給する
と解説

●700種以上のビタミン&ハーブ類の解説

●市販薬&健康食品の相互作用について1万件以上の情報(セーフティチェ
ッカー:複数の商品を選ぶと組み合わせてはいけないケースなどの解説が出
る)

●450種類以上の食材別レシピ(店舗では無料でプリントアウト可能)

●健康テーマ別情報:ダイエット、フィットネス、セルフケア情報など


<新機能の追加>

●キオスク本体、およびコンテンツ画面に企業名(ブランド名)表示が可能
。広告費という新しい収益モデルを確立している。

●画面上に、タイムリーなお買い得商品の紹介やクーポン発行など販売サ
ポートを充実。顧客の来店頻度を向上させるしくみと連動させている。


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【スポルツの視点】健康情報コンテンツビジネスという可能性
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■情報が価値創造を起こしている

一見同社の情報コンテンツはありふれたものに見えるかもしれません。しか
し、同社の売り上げの伸び、さらには今回紹介した第3者機関による調査結
果を踏まえると、同社の情報コンテンツは確実に「流通店の売上を活性化さ
せている」という事実が見えてきます。

つまり、「情報」が価値創造を引き起こしているわけです。

一方日本では、健康情報コンテンツがビジネスの価値創造を起こしている
レベルにあるかどうかという点でいえば、まだまだといってよいでしょう。


■情報が価値創造を起こすために

では日本の健康ビジネス分野で、情報が価値創造を起こすにはどのような方
法があるでしょうか。明確に答えることは難しいですが、下記のような点が
ポイントの一つになると考えます。

・情報提供における「ビジネス価値」志向
情報が価値創造につながるかどうかは、実際にユーザーに使ってもらわない
とわかりません。今回のキオスク端末の例で言えば、店舗側にはハードはレ
ンタルで提供し、使った情報量によって課金するようなビジネスモデルにす
るといった工夫です。

・情報提供する「人」との組み合わせ
例えば今回紹介したキオスク端末は、利用者にサービスをゆだねるセルフサ
ービススタイルであり、高齢者にとっての使いやすさが課題になることが容
易に想像つきます。単に端末を使って情報を提供するのでなく、健康分野の
専門家がその情報をうまく使い、生活者にわかりやすく説明するという方法
もポイントになるはずです。

・情報提供による新しい収益のしくみ
情報提供においては、さまざまな収益源を探る必要があります。今回のキオ
スク端末を例にするならば、端末上でユーザーが過去利用した商品の履歴を
わかるようにし、その商品についてアンケートに答えるとポイントがたまる
ようなしくみにし、そのアンケート結果をメーカー側に販売するといった工
夫です。

・情報提供が消費される場の想定
一つのコンテンツですべての利用シーンに合わせることは不可能です。必要
とする人に、その人に必要なスペックで情報コンテンツを提供し、価値化す
ることを目指したいものです。


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