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  「ヘルス&ウエルネスコーチ」にみる、新しいコミュニケーション
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【Healthy People 2010に基づく「ヘルス&ウエルネスコーチ」】

健康保険組合や自治体向けに健康指導サービスを行う企業や、健康施設を運営
する企業だけでなく、最近では健康分野のモノ販売企業においても、生活者と
のコミュニケーション(ヘルスコミュニケーション)力があり、成果をあげら
れる健康分野の専門家(管理栄養士や運動専門家など)が求められています。

この「ヘルスコミュニケーション」という分野。

・ヘルスインストラクティング(方法に関する知識を提供)
・ヘルスカウンセリング(意見・感情の交換を基にした親身なアドバイス)
・ヘルスコーチング(モチベーションを高め、知識・スキルを最大に引き出す
こと)

という3つの分野に分かれます。

今回注目したのは、ヘルスコーチングの中でも「ヘルス&ウエルネスコーチン
グ」というカテゴリー。

ヘルス&ウエルネスコーチングは、Healthy People 2010という米国政府の
健康増進指針に基づき、「クオリティオブライフ(QOL)」を高めることを
基本の考え方とし、スタンフォード大学とデューク大学との共同研究では、健
康的なライフスタイルを作る上で重要な要素であると実証されています。

そこで今回は、ヘルス&ウエルネスコーチを育成、派遣する
「The Health Action Group」を紹介します。



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【事例紹介】
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■企業概要
・企業名:The Health Action Group
http://www.healthaction.net/
・事業概要:
 1.病院・健康関連企業へのヘルス&ウエルネスコーチの派遣
 2.ヘルス&ウエルネスコーチの資格の提供(資格設立1986年)

■ヘルス&ウエルネスコーチの派遣先
・有名病院、長寿をテーマにした健康施設だけでなく、スパ、ニューヨーク市
 など市のコミュニティセンターなど
http://www.healthandwellnesscoaching.org/organizations.htm

■ヘルス&ウエルネスコーチの資格名
Circle of Life Health and Wellness Coach / Facilitator Certification
Training

※同資格の取得にかかる時間(合計50時間)
・全体講義:2、3日間 (20時間)
・複数人でのディスカッション:2時間×8回(16時間)
・複数人での電話トレーニング:1時間×4回 (4時間)
・個人電話トレーニング:1時間×8回 (8時間)
・面接試験:(2時間)

http://www.healthandwellnesscoaching.org/training.htm

※資格取得に必要な費用:$1500


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【特長1】健康分野だけでなく、12の領域でQOLを高める
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同社のヘルス&ウエルネエスコーチの特長は、健康分野だけでなく12の領域
QOLを高める点です。

同社の資格を取得したコーチは、下記の12領域「Circle of Life(サークル
・オブ・ライフ)」で生活者自身の力を引き出し改善していきます。

■12の領域

1)Nutrition and Diet(栄養とダイエット)
2)Exercise and Fitness (運動)
3)Relationships and Family (人間関係&家族関係)
4)Emotions, Attitudes and Self Esteem(自己評価)
5)Stress Mastery (ストレス管理)
6)Work and Career (キャリアアップ) 
7)Creativity, Play and Humor (創造性や遊び、ユーモア)
8)Financial Health (経済的な健康)
9)Health Care and Self-Care (セルフケア)
10)Environment and Nature(環境と自然)
11)Life Purpose, Service, and Contribution(人生の目的や貢献)
12)Spirituality and Intuition(スピリチュアリティと直感)

http://www.healthandwellnesscoaching.org/exec-summary.htm

従来の健康指導領域(栄養、ダイエット、運動のみ)だけでなく、ストレス、
人間関係、キャリアアップ、ユーモア、スピリチュアルなどの分野でのコーチ
ングにより、QOLを高めることを狙いとしています。


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【特長2】「グループでの学び」を意識したコーチングプロセス
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同社のヘルス&ウエルネスコーチは、生活者に対しグループ形式(1グループ
12名程度)と個別形式で行います。特にグループ形式を特長としており、そ
のステップは下記のとおりです。

ステップ1)レーダーチャートで自分の現在の状態を分析する
上記12の領域での現状、長所・短所を自己評価で把握する。またグループ全
員がその結果を共有する。
http://www.healthandwellnesscoaching.org/process.htm

ステップ2)短所を克服する方法をグループで考え、各人が発表する
複数のメンバーでそれぞれが短所を克服する方法を考え、その結果を各人が1
週間の実行リストとして発表する。

ステップ3)1週間に一度グループミーティングを行い、実行状況を発表
ヘルス&ウエルネスコーチの取得者が各人の1週間の状況を聞き、その内容
をグループ全員でも聞き、アドバイスしあう。

ステップ4)4週間後、自己評価を行う
自己評価を12の分野で行い、どのような変化があったかを全員が気づき、考
えるようヘルス&ウエルネスコーチが進行役をつとめる。
http://www.healthandwellnesscoaching.org/process.htm

グループの中で改善行動を意思表示することが、より強い動機づけになると同
時に、他のメンバーの状況から自分の行動継続ヒントを得ることができる点が
特長ともいえます。


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【スポルツの視点】
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■日本でのヘルスコーチングの現状

日本でもこの数年で、医療・健康分野でヘルスコーチングを身につけた専門家
の派遣企業、教育企業が現れてはいますが、まだその数は少ない上、主に病院
(病院で働く専門家)を対象としており、創成期といえます。


■今後の日本でのヘルス&ウエルネスコーチングの可能性

ヘルス&ウエルネスコーチングが必要な分野の一つとして、企業の健康保険組
合が考えられます。

2008年の健康保険法の改定をうけ、企業内の「男性の肥満」に対する健康
指導はニーズが急速に高まっています。

男性の場合、ダイエットに対する動機付けが女性より難しく、栄養・運動分野
だけでなく、QOL分野のコーチングができれば、人生全体の中でダイエット
の有効性に気づき、新たな動機付けにつながる可能性があります。

また今回紹介した、ヘルス&ウエルネスコーチは、グループで話すことで他の
人の状況から各人が気づき、進めるという手法。こうしたグループでの指導は
、日本での男性のダイエット指導でも導入できるかもしれません。

他にもフィットネスクラブや、リラクゼーション施設など健康サービス施設で
も導入が可能と思われます。


■ヘルス&ウエルネスという考えに基づいたビジネスの現状

同社のヘルス&ウエルネスは、12の領域でQOLを考えるものでした(食事
・運動・ダイエットはよりよい人生を過ごす領域のひとつという考え方)。

現在日本では、こうしたQOLの考え方を導入している企業は少ないです。た
だ、日本でもヘルス&ウエルネスの考え方を導入して成功している企業が出始
めています。

その例が、「リエータ」(ブログサービス付き代替食)で大きく売上を伸ばす
キリンウェルフーズ社。同社は、「健康・楽しさ・快適さ」を事業理念にした
企業ですが、リエータのブランドマネジャーの中川紅子さんは、

「ブランド『リエータ』は、単に体重を落とすことを目標にするのでなく、き
れいになっていく自分が誇りに思え、なりたい自分を目指すことが気持ちいい
、そんな世界観をお客様といっしょにつくり、ダイエットを続けることを根本
から支えたかったのです」と語っています。

リエータはブログ、オフ会を通じて、ヘルス&ウエルネス12領域の「人間関
係」や「創造的遊び」といった分野もおさえ、単に食事だけでなくQOL全体
を引き上げる形になっているともいえます。

商品名リエータはイタリア語で、『楽しい・嬉しい』といった意味。ダイエッ
トしたい女性をメインターゲットとしながらも、ダイエットという言葉をブラ
ンド名にあらわしていない点からも、その意向が伺えます。


■ヘルス&ウエルネスという考えに基づいたビジネスの今後の可能性

食品メーカーでのヘルス&ウエルネスの考え方を例として紹介しましたが、今
後は様々な健康業界で取り組みが始まると思われます。

厚生労働省でも多くの部会で、QOLというキーワードが検討されています。
2010年には米国の動向も見ながら、健康日本22(2010年から202
0年までの健康指針)が発表されると思いますが、その時に、ヘルス&ウエル
ネスの12領域に見られるような幅広いQOLの考え方が反映されれば、ビジ
ネスが大きく拡大するチャンスが生まれるのではないでしょうか。

例えば、新しいビジネスモデルとして、12の領域ごとの商品やサービスを紹
介するプラットフォーム的なビジネスモデル(ポータルサイト)も考えられる
かもしれません。


※参考:健康日本21
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/intro/index_menu1.html

※参考:Healthy People 2010
http://www.healthypeople.gov/


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