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 【海外ユニーク事例編】通信機能付き薬ケース「Vitality」

     ー 健康行動のタイミングをお知らせ ー

       ー ライフスタイルセンシング ー


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糖尿病や高血圧症など慢性疾患で継続的に服薬を行うことが必要な場合、
日々の忙しさの中でつい薬を飲み忘れ、効果が思ったより現れないことが
あります。

また、Medical Careという専門誌によると、服薬率が高いと医療コストが
大きく削減されることが研究成果として発表されています。

(例:糖尿病の場合、1人当たりの年間医療コストが低服薬率の際のコスト
に比べ48%削減)


今回は、「ついつい薬を飲み忘れてしまう」ことの対策として、

・薬ケースのフタの開け閉めで摂取状況を判断し、飲み忘れを教えてくれる

・さらにその結果を長期間自動記録でき、服薬状況を家族、医師と共有できる

というサービスを提供する「Vitality」を紹介します。


なお、同事例は、健康ネットビジネスの先端動向が紹介される
「Health 2.0」というカンファレンス(会議)でも注目企業として
挙げられています。


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ビジネス概要
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■企業名:Vitality, Inc

■企業概要
「GlowCaps」という薬の飲み忘れを防止する通信機能付き薬ケースの販売

※「GlowCaps」のイメージはこちら
http://www.vitality.net/

■収益源
ドラッグストア、保険会社への「GlowCaps」の販売
(患者は「GlowCaps」を無料で使える)

■売上
非公開

■主な対象患者
糖尿病・高血圧・高コレステロールなど、継続的に服薬が必要な慢性疾患患者

■服薬率(同社実験結果)
「GlowCaps」を利用しない場合50%、「GlowCaps」を使うと86%


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サービスの流れ
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【1】薬とケースを薬局で受け取る
薬局の店頭で、GlowCaps(通信機能付き薬ケース)と薬を一緒に受け取る。


【2】セッティングをする
・GlowCapsのキャップ内に電池をセットし、薬を入れる。
・「リマインダー・ライト(薬の飲み忘れの際、光って教えてくれる)」を
 バスルームやキッチンの電源口にセットする。
・付属の無線を受けている受信機をインターネットにつなぐ。


【3】飲み忘れを支援してくれる
・服薬時間になると、GlowCapsの上部が点滅、短いメロディが流れて、教えて
 くれる。
・電源にさした「リマインダー・ライト」が点滅して教えてくれる。
・なんらかの理由で服薬がされない場合、電話がかかってきて、服薬を教えて
 くれる。


【4】レポートを受け取る

●週1回のメール

毎週1回、服薬状況の報告メールを受け取る。予め設定しておけば、
家族や介護者がメールを確認することもでき、周囲からのサポートを
受けることができる。

※記載内容
・服薬した薬名
・今週の服薬の回数
・今月の達成状況

http://www.vitality.net/pharma_workwithus.html


●月1回の郵送レポート

月1回、服薬状況の郵送レポートを受け取る。予め設定しておけば、
担当医師にも同じものが送られて、情報を共有することができ、
医療スタッフのサポートを受けることができる。

※記載内容
・服薬した薬名
・今月の服薬状況
・過去の月との比較

http://www.vitality.net/pharma_workwithus.html


【5】オプションサービスを受け取る

・リフィルサービス
薬がなくなりかけたらお知らせがあり、薬局でスムースに次の薬を受け取る
ことができる。

・知識コンテンツサービス
レポートやメールを通じて、薬に関する知識コンテンツを受け取ることが
できる。

・データの一元化への対応サービス
Health VaultやGoogle Healthなどの健康管理サイトでの一元管理ができる。




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スポルツの視点
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今回は、単に患者本人の薬の飲み忘れ防止をサポートするだけでなく、

・服薬の長期的確認が自動ででき、それが励みになる

・本人だけでなく、家族や医師と共有ができサポートが受けられる

という価値を提供している「Vitality」を紹介しました。

ビジネスヒントとして以下の2点をあげてみます。


■行動タイミングサポート

同事例は、飲み忘れのないように「タイミング」を重視したサービス
ともいえます。
健康改善行動のタイミングサポートという新しい切り口に発展できます。

例)食事行動タイミングのお知らせ
最先端の時間栄養学では、食事の量や質を変更するよりも、
食事時間を変更するだけで、大きな効果をもたらすことがわかっています。
本来の効果的な食事タイミングと実際のタイミングとのギャップに
気づけるサービスに応用できないでしょうか。


■ライフスタイルセンシング

健康行動のセンシング(測定)の多くは直接的センシングであり、
それが故にセンシング対象が限られてしまうことがありました。
(例:歩行は測定できるが、食事行動の測定は難しい)

しかし、同事例は薬ケースのフタの開け閉めで服薬を間接的に
センシングする「ライフスタイルセンシング」になっています。

つまり、健康行動の周辺の行動を分解して観察することで、
健康行動の有無を直接的でなく間接的に把握しています。

今後、健康行動のセンシングは、生活者にとって測定の手間の少ない
ライフスタイルセンシングに近づくのではないでしょうか。

(例:センサー入りのお箸→理想と現実の食事時間がわかり、
   箸の動きから咀嚼度合いを推測する)


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