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「日米バランス栄養食(菓子・栄養調整食品)新商品開発のヒント」
(米国最新トレンド)
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健康志向を先取りし順調に拡大している市場の一つとして、バランス栄養食
(菓子・栄養調整食品)市場があります。この市場は日本では大塚製薬の
カロリーメイトに始まり10年以上経過した市場ですが、ここにきて再度注目
されています。米国ではこの市場は一般にenergy bar(エナジーバー)市場
といわれ、ここ数年年率40%の伸びを示す成長市場となっています。日米
それぞれの成長要因をつかむとともに、日本における菓子・栄養調整食品の
商品開発の方向性を考えてみたいと思います。


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■日米の市場規模の推移
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日米の市場規模の推移を以下にまとめてみました。

    <日本>   <米国>
1982年 start
1987年        start
1990年 160億
1995年 320億   $50mil
1999年 400億   $300mil

・市場としては日本の方が歴史が古くまた、市場規模も大きい。ただし、
ここ数年の米国市場の伸びは目覚ましいものがあります。
・日本の売上高トップ3は大塚製薬、ポーラフーズ、武田食品工業といわれ
ていますが、数店のコンビニ、薬局を回るだけでも調味料メーカー(日本
食研)、畜肉メーカー(伊藤ハム)、飲料メーカー(サントリー)、菓子
メーカー(ヤマザキナビスコ、ハマダコンフェルト、明治製菓)、薬品
メーカー(常磐薬品、大正製薬、山之内製薬)など多様な業種・メーカーが
参入していることがわかります。
・米国の売上高トップ3はPowerBar社、Cliff Bar社、Balance Bar社となって
おり、こちらもインターネット上で簡単に多くのメーカーのホームページを
見つけることができ、競争は激化していると思われます。

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■商品のトレンド
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上記の市場規模推移に対比させて、どのような商品が主に売れてきたのかを
時系列的に追ってみました。

<日本>
1982~1990年 マルチバランス系(医療用流動食、スポーツ選手用)
1990~1995年 マルチバランス系(一般消費者用)
         :カロリーメイト(大塚製薬)、バランスアップ(ポーラ)、
          ビタミンサラダ(武田食品工業)など
1996年     特定栄養素強化系(ある特定のカルシウムなどを強化したもの)
         :ザ・カルシウム(大塚製薬)など
1997年     ダイエット系
         :ライトサポート(グリコ)、ハイチョイス(アサヒビール薬品)など
         美容系(肌によいコラーゲン配合)
         :Pure in(ハウス食品)など
1999年     特定保健用食品系
         :ヘルシーバランス(山之内製薬)など

・日本市場は1982年に大塚製薬がカロリーメイトの前身である「ハイネックスR
(単体の食品でエネルギー、たんぱく質、脂肪、糖質などの栄養を総合的に
摂れるようにした医療用流動食)」を発売したことに始まったと言われてい
ます。その後1990年頃まではスポーツ選手を中心に短時間でとれる栄養補給食
として主に使われました。
・1990年から1995年においては一般消費者向けにカロリーメイトを代表とする
マルチバランス系により市場規模は急拡大したと思われます。
・1996年以降は特定栄養素強化系、ダイエット系、美容系などにより市場は
順調に成長しているといえます。最近では山之内製薬のヘルシーバランス
(オリゴ糖入り)に見られるような特定保健用食品系が現れ注目されてい
ます。

<米国>
米国においても市場規模推移に対比させて、どのような商品が主に売れて
きたのかを時系列的に追ってみました。

1987~1990年  マルチバランス系(energy barと言われる、スポーツ選手用)
1990~1994年  マルチバランス系(breakfast barと言われる、一般朝食用)
1995~1998年  予防系<cholesterol-lowering bar(コレステロール低下機能入り)など>
         メンタル系<a mentally stimulating bar(集中力、
         落ち着きがでる機能入り)など>
         ダイエット系<actose-free bar(無糖)など>
1999年     特定保健用食品系<nutraceutical bars(糖尿病予防bar)など>

・米国市場は1994年まで、マルチバランス系(スポーツ選手用、一般朝食用)
のみで市場は小規模でした(米国ではシリアルが簡単に摂れる朝食として、
すでに国民の朝食文化に深く入り込んでいたために市場が伸びなかったと
思われます)が、日本よりひと足早く1995年頃から予防系、メンタル系、
ダイエット系などの「用途の拡大」により市場が急拡大したといえます。
・最近ではnutraceutical bars(日本でいう特定保健用食品系、糖尿病の
人用のチョコレートバーなど)が現れ注目されています。

日本市場よりひと足早く市場が「用途の拡大」により急拡大した米国の事例は
少なからず商品開発のヒントが眠っているように思われます。


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■米国の最新商品トレンドは?
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そこで、米国のenergy barメーカー10社の最新商品動向を追い、開発キー
ワードと具体的事例を抽出し、そのヒントをまとめてみました。

●メンタル面によい効果がある
・事例-Balance bar社 の新製品ではハーブ(ローズヒップなど)を入れて
リラックス効果を目的としています。
<ヒント>
・米国では食品にハーブを使うことはポピュラーですが、日本でハーブを
食品に入れる場合は注意が必要です。5年前米国で大流行したロティサリー
チキン(ハーブをからめた直火焼きチキン)を見本に日本のファーストフード
チェーン、畜肉メーカーが日本人に合うハーブの十分な検討を行わず商品を
発売し、芳しくなかった例からわかるように、日本人にあうハーブ(好き嫌い
が出にくいものはバジル、オレガノ、パセリといわれている)を十分に検討
する必要があると思います。いずれにせよ、食品において「体によい」から
「心によい」にテーマを移した商品が現れてもおかしくはないと思います。

●生活習慣病対策
・事例ーMeadJohnson社より糖尿病の人専用の無糖チョコレートバーが発売
されています。また、このバーには血糖値の上昇を抑える効果があると記載
されています。
<ヒント>
・米国では糖尿病の人が多くまた、チョコレートが大変好きな人が多いために
開発されたと思われます。日本では特別用途食品として糖尿病用食がありま
すが、さすがにチョコレートは聞いたことがありません。米国のチョコレート
に当たるものが日本では何か考えてみる必要があると思います。

●味の多様化
・事例-balance bar社は30、powerbar社は20の味の製品ラインを設けています。
<ヒント>
・例えば、朝食としての用途を考えた場合、消費者に飽きのこさせない味の
開発が必要になってきます。日本における味の開発のベンチマーク先としては
スナック業界がよいと思われます。(スナック業界は素材での差別化が難しい
だけに味の開発は非常に進んでおり、カルビーを初め多くのメーカーはベー
シックアイテム以外は3か月で味を変えています。また、コンビニエンスストア
におけるインスタントラーメン、お総菜、カウンター回りの商品なども重要
なベンチマーク先としてスナックの味付け動向を注目していると言われてい
ます。)

●食品素材により近いものを入れる
・事例-米国ではフルーツ入りのバーとしてfruit-grain barというカテゴリー
が存在しており、積極的に商品開発が行われています。
<ヒント>
・例えば、朝食としての用途を考えた場合、普通の食品を食べている感覚に
近い健康的なイメージをいかに持たせるかが重要なポイントになってきます。
日本でもグリコの「毎日果実」にみられるようなレーズンやプルーンアップル
のような天然素材に近いものをいれた商品が発売されています。この分野は
今後開発の余地が大いにあると思います。

●焼きを工程に入れた商品
・事例-you are what you eat社では特殊な焼き工程を入れることにより、
香りや食感が実際の食品に近い製品を販売しています。
<ヒント>
・日本でもブラウニーと呼ばれるホームメードタイプのクッキーに近い食感を
もつ「PURE-INソフトクッキー」(グリコ)といった新食感のものが発売され
ています。日本人ほど食感にうるさい国民はいないとよくいわれますが、
(確かに日本では食感を表す言葉が非常に多い気がします)今後はおかきや
飴のような食感の製品がでてきてもおかしくはないと思います。また、用途
として夕食前の間食を考える場合は夕食に影響がでないように、のどが渇き
すぎないようなウエットな食感が重要になると思います。


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■今後の商品開発の方向性
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今後の商品開発の方向性として、米国の商品動向をヒントとして活かすほか
に、重要と思われるポイントを2つ以下にまとめてみました。

●(1)市場の細分化と新用途開発について
まず、市場の細分化と新用途開発を考える上で現状の主なターゲットと用途
をまとめてみます。

<主なターゲット>
社会人女性44%
社会人男性21%
女子大学生14%
女性高校生7%
(サントリー「菓子・栄養調整食品のアンケート」より)

<主な用途>
夕食までの間食25%
朝食代わり23%
残業・バイト・部活・塾の前の間食21%
昼食代わり10%
軽い夜食13%
(サントリー「菓子・栄養調整食品のアンケート」より)

現在多くのメーカーは社会人女性をターゲットの中心に、夕食までの間食・
朝食代わりを用途の中心に開発していますが、今後はターゲットを広げてみる
とともに、以下のような用途を考えてみてもおもいしろいと思います。
       
<用途>
慢性的疲れ(疲労回復)防止、眠気すっきり、朝起きるのが楽になる、食欲
不振に効く、夏バテ防止、肩こり・腰痛防止、便秘予防、安眠、骨の強化が
できる、美白効果、疲れ目によい、生理痛防止、貧血防止、冷え性防止、
野菜不足、食事の偏り、頭がよくなる(DHA入りなど)、生活習慣病予防・
対策、高コレステロール対策、かぜのひきはじめ対策、虫歯予防、二日酔い
防止、老化防止、がん予防、アレルギー対策、花粉症対策など


(2)●競合カテゴリーについて
消費者の立場で考えると、菓子・栄養調整食品には以下のような多くの競合
カテゴリーが用途別に存在していると思います。

<朝食用の競合カテゴリー>:
普通の朝食(ごはんとみそ汁など)、シリアル、果物、ファーストフード、
コンビニのパン・おにぎりなど。
<間食用の競合カテゴリー>:
お菓子、果物、コンビニカウンター回りの商品(から揚げ、肉まんなど)。
従って商品開発を行う上で競合カテゴリーとの差別化を考えることも重要で
あると思われます。

例えば、朝食用の開発を行う場合、その競合カテゴリーは普通の朝食(ごはん
とみそ汁など)、シリアル、果物、ファーストフード、コンビニのパン・
おにぎりなどがあります。

それらと比べた菓子・栄養調整食品の相対的強みは
・大きさが小さい
・食べる時間が一番早くて済む
・人前でも食べることができる(場所を選ばず食べることができる)
・保存が長くできる
などが考えられ、

また、弱みは
・朝食に必要な栄養素をバランスよくとれるが、その量は少ない
・おいしくない
・毎日食べられない(味のバリエーションが少ない、飽き易い)
・人工的な食品を食べる後ろめたさを感じる
・べたつきやすい
などが考えられます。

従って、カテゴリー間の競争に勝つには、強みをさらにのばすアイデア(例えば、
保存性が一番高いという強みを活かして地震などの緊急食の用途開発を行う)
を考えたり、弱みを競合カテゴリーレベルまで上げるアイデア(例えば、
飽き易いという弱みを解決するためにいろいろな味を1つのパッケージの中に
入れる)を考えた商品開発が重要であると思います。


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■まとめ
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日米の市場動向の推移、米国の最新商品トレンド、今後の商品開発の方向性、
競合カテゴリーについて考えてきましたが、市場として成長期から成熟期に
達している現状を考えると、今後消費者に受容されるための開発キーワードは
ターゲットの細分化と新用途開発ということになると思います。また、具体的
な個々のアイデアについてはポジショニングにより差別化の度合いを確認する
ことが必要と思われます。

尚、今回のレポートに使った米国Energy Barの情報源を以下に掲載しておき
ます。


■情報源一覧(ホームページ)
・米国Energy Barの市場レポート:http://www.nutraceuticalsworld.com/marapr99-b3.htm
・米国Energy Bar の最新動向:http://www.sweatmagazine.com/Energy%20Bar%20Review.htm
・PowerBar社のホームページ: http://www.powerbar.com
・Balance Bar社のホームページ:http://www.balance.com
・MeadJohnson社のホームページ:http://www.choicedm.com
・you are what you eat社のホームページ:http://www.urwhatueat.com

■情報源一覧(参考資料)
・食品マーケティング便覧98(富士経済)
・健康・栄養食品ビジネス(あさひ銀総合研究所)
・99年度版ベンチャークラブ・アメリカ発ビジネスヒント101(東洋経済)
・ビタミンガイド(産経メディアミックス)
・食品と開発「特集栄養バランス食の開発」(97 年4月号)

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