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【海外ユニーク事例編】健康サービスの成功の鍵「継続ドライバ」とその活用例(2)
 
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こんにちは。株式会社スポルツの脇本和洋です。
「海外ユニーク事例編」では、毎月1回特定のテーマで海外の健康ビジネス動向を紹介しています。
 
今回のテーマは、健康ビジネス成功のカギである「継続支援」です。
 
スポルツでは、
「健康行動の継続に作用する支援技術」を「継続ドライバ」と命名し、2007年から、国内外の事例研究、プロジェクトへ応用をしています。
 
本年2月の「海外ユニーク事例編」では、ヘルスコミュニケーション、エンカレッジメント、ヘルスエンターテイメントという3つを紹介しました。
 
今号では、
・コンペティション
・パーソナライズ
・ヘルスコミュニケーション+交流
 
という3つの継続ドライバを使っているユニーク事例を紹介します。
 
 
※参考バックナンバー>2015.02.17号【海外ユニーク事例編】健康サービスの成功の鍵「継続ドライバ」とその活用例(1)
 
 
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(1)コンペティション:運動種類に関わらず競争に参加できる「Fitocracy」
 
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コンペティションは、競争機能のこと。競い合うという要素を入れて、継続を支援するというものです。
 
■企業概要
・企業名:Fitocracy, Inc.
・設立:2010年
・企業概要:運動の継続支援用ウェブサービスの提供(B-C)
・価格:無料(一部有料サービス)
 
■Fitocracyのサービス概要
 
1.自分の行った運動を入力する
ランニングなら回数、時間、走行距離を、スクワットなら、セット数、1セット当たりのスクワット数などを入力。
 
2.自動的にポイント換算がされる
ランニングやウォーキングなどの走行運動、テニスなどのスポーツ、筋トレなど、様々な運動を独自のアルゴリズムでポイント化してくれる(詳細アルゴリズムは非公開)。獲得ポイントが増えるに従い、レベルが上がる(例:567ポイントを獲得している人はレベル3に、27万ポイントを獲得している人はレベル36に評価されている)。
 
3.チームに属してチーム内で競争する
フェイスブックのようなSNSの機能が構成されており、グループや仲間と交流しながらポイントを競える。
 
 
■Fitocracyの特徴(1):運動なら何をしていても競争に参加できる
 
同サービスの最大の特徴は、「異種運動をすべてポイント化できる」という点です。これまでランニングやジョギングなど特定の運動仲間で交流し、競い合えるサービスはありましたが、同サービスでは全く異なる運動でも、ポイント換算されるため、競い合うことができます。
 
たとえば、スクワット10回で20ポイント、15分間で2キロのジョギングをすると83ポイントに換算されます。
 
■Fitocracyの特徴(2):小グループで競争でき参加意識が高まる
 
さらにSNS機能を使ってグループに入るか、新グループを作ることができます。グループは「筋トレ」、「30歳以上」、「日本」といった、運動の種類や年齢、好みなどで検索し、共通性の高いグループを探せます。
 
グループ内でメッセージのやり取りやポイント競争、またフェイスブックの「いいね!」と同じような小さな励ましを送る機能を使い、互いに励ましあい、継続の助けになります。
 
■Fitocracyの特徴(3):有料での1対1バトルで徹底競争もできる
 
有料会員になると、一週間の獲得ポイントといった詳細なデータを見たり、他の有料会員と獲得ポイントを競う1対1のバトルができたり、新サービスをリリース前に試せます(月約5ドル)。
 
 
■コンペティションの活用ポイント
 
コンペティションは、比較的男性に好まれやすいものです。同サイトの利用者も多くが男性です。また、コンペティションは運動の大好きな一部の人が参加するといったものになりがちです。この事例のように様々な運動でも参加できる、小グループ化しレベルが低くても競争できるなど、参加のハードルを下げる工夫が必要になります。
 
 
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(2)ビジュアルモニタリング:相関性を見つける支援「Optimized」
 
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ビジュアルモニタリングは、記録機能を使って、継続を支援するというものです。
 
■企業概要
・企業名:OptimizeMe GmbH
・設立:2013年
・企業概要:ライフログアプリ“Optimized”の開発、販売(B-C)
・価格:4.8ドル
 
■Optimizedのサービス概要
 
1.目的に応じて、何を記録/測定するかを決める。
たとえば、気分よく過ごしたいのであれば、自分の行動できることも勘案し、
 
「健康カテゴリー」で気分、睡眠、歩数
「娯楽カテゴリー」で友人とカフェに行く
「創造性カテゴリー」でお菓子作り
「習慣カテゴリー」で部屋の掃除
など、記録するアクティビティを自分で選択する。
 
2.それぞれの活動を記録
モバイルアプリに日々入力することが基本ですが、活動量計測アプリのMovesやウェアラブルのFitbit、Jawbone Upと連動し、サイクリングやウォーキング、燃焼カロリーなどの記録もできる。
 
3.全記録項目の変化を同一グラフで確認する
 
 
■Optimizedの特徴:相関性から、健康を促進する意外な行動を発見できる
 
同アプリの特徴は、娯楽、創造性、習慣といった健康づくりとは一見距離のあるアクティビティも含めてグラフ化し、健康を促進する意外な行動(アクティビティ)を見つける支援をするという点です。
 
たとえば、週末に早起きし、午前中に部屋の片づけをしてから公園を散歩すると(翌週の過ごし方のアイデアが浮かび)、翌週の気分が良い日数が増えるといった点を、同一グラフ内で見つけられます。
 
■ビジュアルモニタリングの活用ポイント
 
ビジュアルモニタリングでは、「記録後の価値」は何かが大事になりますが、今回の事例は、記録により相関性を見つけ、「健康促進する意外な行動が見つかる」というものです。一度発見すれば使わなくなる可能性はあるものの「記録後の価値」に挑戦する取り組みです。
 
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(3)ヘルスコミュニケーション+交流:ヘルスコーチとピアプレッシャー「Omada Health」
 
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ヘルスコミュニケーションは、専門家とのコミュニケーションにより継続を支援するものです。以下事例は、参加者同士の交流機能も加えて、より継続を支援するというものです。
 
■企業概要
 
・企業名:Omada Health Inc
・企業URL:https://omadahealth.com/
・設立:2011年
・企業概要:慢性疾患に対する、オンラインの行動変容プログラムを開発している。現在、糖尿病や心疾患患者向けプログラム“Prevent”を提供中。BtoB向けプログラム。
 
■Omada Healthのサービス概要
 
1.基礎情報、食事や運動習慣、ソーシャル、ライフスタイル、生活習慣を変化させる意欲のレベルなど、コーチングに役立つ情報をアンケートに従って回答する。
 
2.入力された情報に基づき、共通点の多いユーザーたちと共にピアグループに入る。
 
3.自動的にデータが専用ページに送信される体重計、活動量計などのツールが郵送される。
 
4.コーチが紹介される。
 
5.体重計や活動量計といったデータをコーチと共有しながら、記録をつける。
 
6.コーチとはメール、電話、ビデオメッセージといった方法でコーチングを受けながら、プログラムを学習し、実践していく。
 
7.コーチを中心としたピアグループにより、グループディスカッション、コメントのやり取り、互いの進捗状況を確認するといった方法で励ましあう。
 
 
※コーチングのテーマ
テーマは4つに分かれており、それぞれを4週間にわたって学び、習慣化させていきます。
-テーマ1(1週目-4周目)食習慣の改善
-テーマ2(5週目-8週目)運動習慣の確立
-テーマ3(9週目-12週目)挫折を克服する考え方を学ぶ
-テーマ4(13週目-16週目)社会的影響に対応する
 
 
 
■Omada Healthの特徴
 
特徴は「コーチング」×「(交流による)ピアプレッシャー」の組み合わせです。コーチは利用者がプログラムについていけているかチェックすると同時に、励まし、アドバイスを行います。
 
利用者同士で構成されるグループは、各メンバーの進捗状況を知ることやグループ全体での減量数値が表示されることで、「自分も頑張らないとマズい」という動機付けになっています。
 
■ヘルスコミュニケーション+交流活用のポイント
 
本事例はヘルスコーチングと交流を組み合わせたもので、「グループコーチング」とも呼ばれます。グループコーチングでまず重要なことは、コーチングのテーマ設計です。本事例では、テーマ3の所で、挫折が当然起こるものとしてテーマに組み込んでいます。このように参加者の心理状態(不安)を先読みしたテーマ設計が大切です。
 
また、参加者がコーチとの直接的会話で気づきを得るという以外に、他の参加者とコーチとの会話内容や、参加者同士の会話から、参加者にいかに「自分ごと」として感じてもらうか、その工夫を作っていくことが重要となります。
 
 
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