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2006.03.23 株式会社ほんやら堂 藤永 辰美 氏

今回は、癒しギフトとして、新たな業界を築き上げている株式会社ほんやら堂 代表取締役 藤永辰美氏にお話を伺いました。健康、癒し雑貨売り場にならんでいる5本指スリッパ、なまけたろう、眠り羊のキャラクターでなじまれている方が多いのはないでしょうか?
藤永 辰美[ ふじなが たつみ ]
1957年生まれ。 放浪後、1989年4月 ほんやら堂を設立。好きな自然の中で、リゾートショップをプロデュース。テーマパーク、スキーリゾートでOEM提供。2000年に癒しのキャラクター「なまけたろう」発売。以降、癒しのキャラクターに機能を付加した分野で、新しい市場を創造。現在は、産学連携をベースにした新しいマーケットを構築することに夢中。

-ほんやら堂とう社名の由来について、お伺いさせてください。一度、聞いたら忘れられない珍しいお名前だと思うのですが、どのような意味なのでしょうか?

藤永さん よく聞かれる質問ですね。新潟の十日町という大変雪の深い町があるのですが、その地方の言葉で、かまくらのことを「ほんやら洞」というのですよ。それが由来です。なんとなくいい響きがするでしょ。 好きな漫画家のつげ義春さんの書かれた「ほんやら洞のべんさん」という作品で「ほんやら洞」という言葉を知ったとのこと。とても叙情的で、日本の原風景が描かれている作品だそうです。

-では一言でいって、ほんやら堂とは何の会社ですか?

藤永さん そうですね、やはり「癒しの商品を作っている会社」ということですね。

-癒しの商品を作り始めたきっかけについて教えてください。

藤永さん そもそも自然の素材を扱っている会社ということで、間伐材を利用した商品を作っていたのですよ。主に、炭ですね。健康ブームやアウトドアブームで、炭にも注目が集まっていた時期もありますが、まだそこまで炭を利用しようという時代ではなく、炭焼き小屋を探すのに、日本中を駆け巡っていたこともあります。私はその中でも、竹炭に凝っていていました。

-なるほど。御社のホームページ、会社沿革のテーマにある「森の贈り物」の時期ということでしょうか?

藤永さん そうです。ホームページでは、会社沿革について、弊社のテーマと沿革、商品の歴史を、それぞれの時代のキーワードとともにご紹介しています。 そこをみていただいたら、わかるのですが、最初は、テーマパークやスキー場のオリジナル商品の開発を行っていました。マグカップとか、タオルとか、トレーナー、Tシャツといったね。 そのようなリゾート地でのおみやげ物やさんに並ぶ、キャラクターグッズの開発を行いながら、先ほどご説明したような間伐材を利用したものの開発を行っていました。 その後、もともとnaturalやジャパニーズモダンに興味があったこともあり、炭を利用したインテリアを作るようになりました。 茶道のときに使う炭で、「まくらずみ」というきれいなしっかりとした大きな炭があるのですが、その「まくらずみ」や普通の炭、漆や漆器を使ったインテリア商品ですね。 そのあと、だんだん機能性を持った癒しのキャラクターグッズ、心と体を気持ちよくするサポート商品へ集中して商品を展開するようになってきました。

-では、今の御社商品のメインテーマというと?

藤永さん 「ダイエット」「体サポート」、そしてメインが「癒し」となります。健康雑貨売り場という分類がありまして、その売り場の約80%をほんやら堂の製品が占めています。 最近発売したのは、シェープアップバランスクッションです。これは、とても肌触りのよい素材でできています。「パウダービーズ」と言ったら分かる方もいらっしゃると思うのですが、その素材を使っています。 シェープアップバランスクッションには、種類が、3種類、椅子の上に置く座布団、足上枕、腰枕があります。足上枕には、足の上に乗せて、女性の冷えにも対応できるように、体に当たる部分にカイロを入れられるような袋を用意しています。

-御社の商品には、あったらいいなと思うような様々な工夫やアイデアが詰め込まれていますよね。その源泉には、なにがあるのでしょう?

藤永さん そうとはいっても、既存の要素と既存の要素の組み合わせで作っていっているのです。

-主力テーマである「癒し」の商品について、詳しく教えていただけますか?

藤永さん 雑貨業界では、商品の回転が早く、ロングセラーといわれる商品でも、半年商品といわれています。 そのような中で、今、うちの商品でもっともロングセラーとなっている「ひつじ」シリーズは、かれこれ、3、4年続いています。なんで終わらないか、私たちにも、わからない部分もあるのですが、ね。 商品を使っていいと思っていただけるような取り組みはもちろん、いいと思った後の「他の人にも勧めたい、贈りたい」という思いを実行できるよう、贈り物として利用できるパッケージにも力を入れているとのことです。自分の健康のみならず、家族や友人の健康にも配慮するようなトレンドの一例として、健康雑貨が「癒しのギフト」的使い方をされていることが、ロングセラーの一因かもしれないと。

-御社の癒しの商品としては、「なまけたろう」のキャラクターが有名だと思いますが、こちらは、ぬいぐるみ業界ではタブーとされていた「眠り目」を採用したことが画期的だったと伺いました。

藤永さん 確かに、ぬいぐるみ業界では「眠り目」というのは、タブーだったのですが、もともとが雑貨業界ですので、そのタブーに恐れず、挑戦できたということがありますね。 消費者に「うふっ」といってもらえるような、「ほっ」するような商品を作るということに価値創造のポイントを置いているという姿勢があったから、できたことかもしれません。商品を通じて、消費者とのコミュニケーションのポイントを常に模索しています。 また、介護の現場でもコミュニケーションツールの提供をしたいと考え、群馬大学医学部と共同で、介護なまけシリーズの開発も行いました。意外とOLさんとかにも売れている様です。

-なまけたろうの魅力は、キャラクターを超えたキャラクターというところにあると思うのですが。

藤永さん そうですね。なまけたろうには、アライアンスを得るために、少しストーリーを加えています。しかし、基本的にどんなキャラクターで、どんな背景があって、どんな家族がいて。。。という設定を行わないようにしています。 -手にした人がその人それぞれの使い方をすることで、一つのサービスが始まる。そこには、一方的でない相互作用がある、サービスサイエンスの考え方ということですよね。 藤永さん 確かにそうかもしれません。買ってくれた人が自分でストーリーを作っていけるようにしています。

-先ほど、大学との産学連携のお話がでたと思うのですが、御社では大変、活発に取り組んでいらっしゃると伺いました。そちらについても、詳しくお聞かせください。

藤永さん 現在、産学連携の取り組みとして、現在は群馬県立女子大、武蔵野美術大学、東京デザイナー学院の方々と取り組みを行っています。 実際に商品になったものには、介護なまけ、機能性サンダル、花粉症対策ミスト(群馬大学医学部)、ゆびぐっぱ(武蔵野美術大学)があります。

-そのように積極的な産学連携に取り組まれるのは、なぜでしょうか?

藤永さん 学生の方々の自由な発想から、とても刺激を受けるということが大きいですね。学生の発想はとても豊かで、実際の商品にはならなかった物でも、プロトタイプを作るところまでいった商品もありますし、私が個人的に大変気に入っているものもあります。 また、私たちは中小企業ですので、研究開発にそこまで資金を投じることはできないのが現状です。そこに学生さんたちのアイデアを出していただいて、一緒に開発を進めていくことができますし、これからも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

-では、今後のほんやら堂の取り組みについて、教えていただけますか?なまけたろうのアライアンスなどは、考えていないのでしょうか?

藤永さん そうですね。これからは、様々なアライアンスを発信していきたいと思っているのですが、方法論を模索中です。癒しのコミュニケーションツールを用いたコミュニティの場を作って、様々なアイデアなどを形にしていきたいと考えています。 もちろん、癒しのギフトとしての商品の魅力も、もっとアップさせていきたいと考えています。 藤永さんは、今まで「betterゾーンのデザインで、valueゾーンの値段」で商品を提供することをコンセプトとして行ってきたそうです。そして、今後もそのコンセプトは続けていくとお話くださいました。 これは、近年、「upperミドルのテイストでlowerミドルの値段」を提唱する手法として、一つの地位を確立させている、いくつかの業界の方向性と似ているものだそうです。ユニクロさん、ZARAさん、アイリス大山さんがその例とのこと。

-ほんやら堂商品を集めたリアルショップの展開などはお考えではないのでしょうか?

藤永さん 考えていないわけではないのですが、やるとしたらどこかとアライアンスを組んで行うことになるでしょうね。ホームページなどを使って、癒しのギフト分野における声かけ的な存在としての取り組みも考えています。

-では最後に藤永さん自身にとっての癒しの方法とはどのようなことですか?

藤永さん 私はいいアイデアが出て、その企画が立ち上がった時が一番ワクワクするといいますか、癒されるときですね。また、プライベートですと、水の中にいるのが好きで、よく海に潜りにいったりしていますよ。

-本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

株式会社ほんやら堂のホームページはこちら URL : http://www.honyaradoh.com/
今回のビジネスキーワード
癒しのギフト、コミュニケーションツール、サービスサイエンス、産学連携
[ 取材日:2006年2月23日 ] [ インタビュアー:大川耕平 ]