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2014.8.6
株式会社Eat Smart 
代表取締役 若林 貞伸 氏

健康サービス事業にとって“食”をどう位置づけ扱うか?
は極めて重要なファクターとなる。
 
つまり、食を専門としない事業者が食とどう関係性を持つか?
は戦略的にアライアンス展開していくことが必須となる。
 
その際に、B2Cで磨かれた技術と経験がないとB2B2Cのよりスケールアップした事業に貢献できない。その意味においても同社の経験はとても貴重だと思い若林さんにお話を伺った。
プロフィール
若林 貞伸[わかばやし さだのぶ]
大学卒業後、フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)株式会社に入社。システム開発及び業務改革コンサルティングに携わる。2002年、株式会社ネットエイジに入社し、新規事業立上げのリサーチ、プランニング、インターネットマーケティング、及び営業に携わる。2004年インターネットでのダイエットサービスを企画し起業。以降、食と健康をテーマにしたインターネットサービスならびにコンテンツ事業を運営。

イートスマートとはどんな会社?

今となっては、食と健康をテーマとしたコンテンツ&ネットサービスメディアの運営企業として業界でも認知率の最も高い企業だが、若林さんが前職時代に「やせたくて通い始めたジムのマシンにカロリー表示で生ビール一杯分と出たのがカロリーに興味を持ったきっかけです」と言う。
 
カロリーが気になりだして様々な検索をしてみても、当時のYahoo!にも十分な情報がなかったのが2003年頃。自分のテーマで検索ビジネスを起こしたいと所属会社を退社して2004年に同社を設立した。
 
カロリーに興味を持ったが、元々栄養の専門知識がないので相談相手を探しているうちに服部先生(服部栄養専門学校)に出会い、食品データベース栄養計算ルールの設定などを監修してもらうことになる。
 
最初にリリースしたのが社名と同名の“イートスマート”で、カロリー・栄養計算ができるダイエット日記サービスをスタートする。
 
スタートはするが、PCベースでの課金の難しさを体験し、サービス有料化を一時試みるが短期で辞めることになる。チャレンジして学び、そして改善(方向転換)という同社の強みとなっていく“型”の最初がこの時期だったのではないかと筆者は考える。
 
そして食事日記をベースにコンテンツ、サービスを追加していく中でダイエット食事プランをつくることを服部先生たちと立ち上げる。それを2005年ケータイ公式サイトとしてオーソライズし、月額課金モデルをスタートした。PCベースの課金の難しさの経験が活きている。
 
“1dp 服部先生の1週間ダイエットレシピ”というサービスなのだが、とってもよくできているコンテンツサービスだ。1週間の食事プランというのがミソで「利用者に多い一人暮らしの女性が1週間で食材を余らせず無駄にしないというユーザー志向でデザインされています」ということなのだ。
 
サイトを見ていただければ分かるが魅力的なコースが150以上あり、継続的に追加されている。自分の挑戦したいコースタイトルをチョイスし、買い物リストから1週間の合計予算、1食当たりのコスト、調理難易度などが見事に整理されているのだ。
 
 
さて、この次に若林さんたちが手がけたのが“もぐナビ”という国内最大級の食品クチコミサイト。今年6月時点でクチコミ数が40万件を越えたという。レシピや食品栄養素情報などのデータ提供スタイルをやりつつ、ユーザーの声が背景になるものが無かったとの思いからの発想で組み立てられたユーザー参加型サイト(CGM:コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア=消費者生成メディア)である。
 
ダイエット食事日記サービスからはじまり栄養計算をサポートし、レシピプランを提示し、食品評価を消費者と共同で進めていく同社が保有するデータ、磨かれていく知見に対して、様々な立場の健康サービス事業者から協力依頼が来ることになる。このB2Bも彼らの事業の柱でもある。
 

リアルネットワークへ

あるサービス事業をやらないか?と紹介されて「とても可能性を感じたんです」と若林さん。
 
そのサービスは“クスパ”という個人運営の料理教室の全国的ネットワークだ。ネットを中心に展開してきた同社にとっては異領域だが迷いはなかったという。
 
全国で現在約2,500カ所の教室が運営されており、地元で料理教室をみつけたい、生徒を集めたい先生とのマッチングをはじめ、食品メーカーの販促支援なども順調に展開しているという。
 
ユーザー視点に立ったチャレンジと品質磨きの姿勢がこのリアルネットワークでも十二分に活かされている。「“クスパが料理する人を増やしていく”ようにしていきたい」と若林さん。
 
PCから始まったネットサービスビジネスがメディアの変化に対応していくことがいかに重要であるかを体験値としてもつ同社は、リアルも含めたメディア戦略をどんどん強化していき、食と健康の世界でより影響力を高めていくに違いない。
 
ご多分に漏れず、スマートフォン対応を強化しており“もぐナビ”“クスパ”ともにアクセスが順調に伸びているという。
 
まだまだいろいろな仕掛けにチャレンジして食を通して我々を楽しませてくれそうなイートスマートに今後も期待したい!



取材後記:
若林社長に出会ったのは同社設立直後だったと記憶しています。
今までの経験がどんどん活かされているそのプロセスを感じました。
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年7月25日]