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2013.4.4
株式会社リンケージ
代表取締役 木村 大地 氏

健康産業の中には様々な業種業態が存在している。その中でもユニークな活動をしている会社がリンケージ社だ。
「中学の頃に剣道の恩師をがんで亡くし、二年間病床に通い続けた経験から、人が与えられた寿命を最期まで健康に全うできるよう、不健康寿命を一年でも縮める仕事に就きたいと10代の頃から考えていた」
との思いから健康産業に取り組んできた、株式会社リンケージの代表取締役 木村大地さんにお話しを伺った。
プロフィール
木村 大地[きむら だいち]
日本トップクラスの健診実施数を誇る、社団法人新潟県労働衛生医学協会という健診実施機関において、健康診断事業全般の提案営業に従事。その後、厚生労働省特定健康診査特定保健指導フリーソフト運営会社、オーダーメイド創薬株式会社にて、営業チームマネージャー。株式会社アルファインターナショナルにて、健康保健組合連合会本部、日本医師会、健診実施機関、企業に対し、健康診断基幹システム及び健診データ(XML)処理システムの企画及び販売の営業部統括マネージャーを経て、平成23年6月、株式会社リンケージを設立。

健診業界の現場で感じた課題

大学卒業後、地元新潟県の健康診断実施機関に入社し、現場で企画営業を行っていた際に、健康診断受診という『一年に一回のイベント』をもっと活用するためのデータ(エビデンス)が必要という考えから、メタボ健診のデータをマネジメントする企業に転職し、データを管理するシステムのあるべきカタチのデザインや、健診業界のヘルスケアリテラシーの向上に向け精力的に活動してきた木村さん。
 
その活動の中で、健診の制度設計を行う国、健診を委託するプレーヤー(医療保険者又は企業、自治体等)、健診を受託するプレーヤー(健診実施機関等)、健診事業を円滑に行うための補助をするプレーヤー(ヘルスケアサービス提供企業)、業界の多くの方々に出逢う機会が増えるにつれ、あまりにも提供者と享受者のニーズのアンマッチが多く、アライアンス障壁の高さ、誤認識が多いことを痛感したという。
 
「それぞれの顧客となる“相手の課題”を正しく認識し、解決するための『ハブ』が必要という考えから、リンケージ(連動)という社名でサービス、情報、ヒトを繋ぎ合わせるプレーヤーとしてチャレンジしています」
 
日本における健診業界の課題は何かを聞くと
 
・業界内の壁が多く、利権や過去の事例を考えすぎて先進的な取組みにチャレンジしづらい環境
・ITリテラシーが他業界に比べてかなり低いこと
・「業界の常識が世間の非常識」という観点が欠落していること
・一般の人達にとってワクワクさせ、ココロ踊らせるサービスが少ないこと
 
等、明確な指摘が返ってきた。
 

横串し、そしてリンケージ

木村さんの考える各コミュニティにおける健康増進の重要性とは何か?
 
「企業健保(職域)にとって日本における労働人口の減少及び生産能力の海外流出は、必然の流れであるにも関わらず、労働者の健康が資産として認識されていません。
 
ディジーズマネジメント、プレゼンティーズム等の考えを基に、あらためて社員の健康管理や健康教育について『労働生産性への投資』という観点から、周りの事例をもとに再考する時期に来ていると考えます。
 
法律上、毎月行わなければならない安全衛生委員会等を通じ、企業、労働組合、健康保険組合の三位一体となった、従業員に対するベネフィットを具体的に構築する時期に来ていると思います。
 
企業、健保、健診機関、自治体の担当者の方々とお仕事をさせて頂いている中で痛切に感じるのは、届いている生の情報が少なすぎることです。
 
自治体のケースを例であげると、他の自治体での成功事例や、地元の企業等の先進的な取組み、海外の事例等を参考にできる仕組みづくりが自治体の健康事業アクションの第一歩と感じます。
 
予算がないから地域職域連携を行わない、医療保険者とのリンケージをしないということは、資源がすぐそばに落ちているのに見過ごしていることと同じです。
 
所属部局に応じて権限や予算も明確に分離されているため、アクションが起こしづらいことも多々あるようですが、目的を達成するための部局間や役所内外問わず、『横串』を通して事業を推進することが求められると感じます。
 
とある政令指定都市ではヘルスケアのテーマで、医療・保険部局から公園や道路等の部局まで、所属を超えた議論の場を作っています。国民のニーズや時代の変遷に即したサービスや文化を創造するには、横串を通した取組みが必要とされると考えます」


業界におけるリンケージ社の役割

02.jpg木村さんはこの業界の中に居続け多くのプレーヤーと接することで問題点を明確化してきた。では、その問題点に対しリンケージ社としてどのように取り組んでいくのだろうか。
 
「日本の不健康寿命を一年でも縮めることです。そのためのアクションは3つあります。
 
連動:業界の壁に横串を通し、課題や今後の市場動向を共有
教育:ヘルスケアリテラシーの向上
翻訳:難しい言葉が氾濫している環境だからこそ、情報をシンプルに翻訳し、多くの事例をもとに誤認識しやすい“課題”の正しい抽出整理及び、解決のための提案

だと思っています」
 
 
リンケージ社設立2年弱で行った事例は以下のとおり
 
◯病院や健康診断実施機関へのサービス提供
現場の課題をヒアリングし、今後の市場ニーズや、他機関の取組み事例や成功モデル失敗モデルを共有し、顧客に合った最適なサービスを提供。
(特定保健指導ICT事業<テレビ面談等>、結果帳票コンサル、健診基幹システム導入前コンサル、接遇、ホームページ、Pマーク取得、分析統計サービス、等々多数)
 
◯大手鉄鋼企業における健康事業提案
企業、健保、直営病院の新規健康管理モデルの提案。3者のニーズや課題を整理し、事例や国の動向をもとにプロジェクト提案。
 
◯地域職域連携モデルの構築
とある政令指定都市の健康施策を共に考え、共に構築するための関係構築のため、リンケージ社が中心となり、自治体と企業のマッチングを行い、会議等にも参加し、提言を行った。
 
 
健康産業全体の中でも健康状態を精度高く把握し、早期に課題を発見してソリューションにつなげる健診の役割は大きく重い。
 
健康づくり全体を俯瞰しながら業界の好ましい連動を仕掛けていくリンケージ社の存在に多くの注目が当たり始めている。どんどんそのリンケージの和をひろげる活動を加速していって欲しい。


 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2013年4月1日]