キーパーソンに聞く

2019.10.31号 それは、夢から計画へ ーピクニックの森(那須)づくり進行中ー

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2019.10.31
株式会社PICNIC 代表取締役
岩下 礼成 氏

2017年より、那須街道沿いに玄米おむすびと発酵食にこだわった手づくり惣菜を販売する店「PICNIC」を夫婦で開業した岩下さん。目下那須町にカフェ&レストランとヨガ・スタジオを中心にした『ピクニックの森』構想実現に向けて活動中。筆者も思わず支援したくなるユニークな開発プロセスとその展望について伺いました。
 
プロフィール
岩下 礼成[いわした ひろなり]
1965年、埼玉県川口市生まれ。大学卒業後、広告会社勤務を経て東京の出版社に入社。出版社勤務を続けながら2009年に那須へ移住。東京と那須の間を新幹線通勤で毎日往復する2拠点生活を8年間続ける。2017年に26年間務めた出版社を退職し、株式会社PICNICを設立して起業。那須高原で手づくりの玄米おむすびと発酵食のおそうざいを販売する「PICNIC」を夫婦で営む。現在はおそうざい屋を続けながら、自然と共に暮らすコミュニティ『ピクニックの森』構想の実現に向けて活動中。
 

Q1 なぜ、那須町での「PICNIC」開業と『ピクニックの森』企画へと展開されたのか?その経緯を教えてください。


20代の頃から、“薪ストーブがある家で暮らしたい”という憧れを持っていました。でも若いうちはお金もないし、仕事や日常に忙殺されているうちに、その思いはどこかに消え去ってしまいました。
 
東京の出版社に勤務しながらそんな慌ただしい日々を過ごしているうちに40才を過ぎ、ふと自分の人生を見直す機会が多くなるに連れて、若い頃の薪ストーブのある暮らしへの夢が再燃し始めました。
だんだんその夢を実現したい!という思いが抑えきれなくなり、それから3年ほどは夢の実現に没頭しました。
 
「薪ストーブのある暮らしって、実際にどんな地域でできるんだろう?」
「薪ストーブの家って、専門の建築会社があるのかな?」
「新しい場所で仕事を見つけることはできるんだろうか?」
 
いろんな疑問を一つずつ解消しながら理想の場所を探しまわった結果、那須高原で魅力的な場所に巡り合い、土地を手に入れました。そして、地元の建築会社と相談しながら自分が描いていたイメージ通りの薪ストーブのある家を建て、夢の暮らしをスタートすることができました。
 
その当時にいろいろ考えた挙句、会社を辞めて移住先で新しい仕事を見つけることは難しいと判断していたため、薪ストーブの家を建てる場所は、東京に通勤できることが条件でした。軽井沢、上毛高原、八ヶ岳などいくつものエリアに足を運び、3年かけて見つけた場所が現在の自宅がある那須高原です。
 
どこを探しても自分のイメージ通りの場所に巡り合えなかったのですが、最終的に選んだ場所は、その地に立った瞬間に「ここだ!」ってピンと来ました。つまり、那須高原に住むことになったのは全くの結果論であり、友人や地縁もなく、馴染みもない場所に思い切って移住して新しい生活を始める決断をしました。子供がいないとは言え、妻はよくついて来てくれたと思います(笑)
不安と期待が入り混じった中で実際に那須高原での暮らしを始めましたが、そこには想像していた以上に素晴らしい体験が溢れていました。
 
眼が眩むほど輝かしい新緑
真っ赤に燃えるような紅葉
川のせせらぎ
風にそよぐ木々の音
野鳥のさえずり
裏庭でのリスや野ウサギとの遭遇
自分の出番をじっと待って、かわるがわる咲き誇るかわいい野花たち・・・
 
ありふれた日常の中で季節の移ろいを感じ、長い都市生活で眠っていた僕の五感を呼び覚ましてくれる那須高原の自然の豊かさにすっかり魅了され、心も体も健やかになっていくのが実感できました。
また、那須町は移住者が多く、自分の夢を実現するために那須の地にたどり着いた人がたくさんいて、人生に対してポジティブな人が多いこともこの地域の魅力だと感じました。
 
そんな暮らしを続けるうちに、仕事のために東京に通い続けることに疑問を感じ始め、この地で必要とされる仕事を見つけ、那須の自然や人々とのつながりを大切にしながら生きていきたいとの思いが強くなっていきました。
そして、僕が那須の最大の魅力だと感じている「食」と「自然」と「人」を活かしながら、地域の人にも域外の人にも役立つコミュニティをつくりたいとの想いに至り、それを僕なりに形にしようと考えたものが『ピクニックの森』構想なんです。
 
『ピクニックの森』は、観光地にありがちな単に“休日を楽しく過ごすための場所”ではなく、「学び、働き、遊び、育み、住む」ことができる森の中のコミュニティを目指しています。
 
まずはヨガ・スタジオとカフェ&レストランをつくることが第一歩ですが、その先には、働くことを通じて那須の魅力を実感してもらうために、那須ならではのコワーキングスペースを作ったり、僕の人生を変えた薪ストーブのある暮らしを手軽に体験してもらうために、薪ストーブ付きのアパートを利用したコリビングサービスを始めたいと考えています。
そして、森ならではのイベントやワークショップなどを通じて、自然と共に暮らすことの素晴らしさを伝えていきたいです。
 

Q2 その『ピクニックの森』開発をとてもユニークな方法でアプローチされていますが、その経緯と今後の進め方を教えてください。


やりたいことや、つくりたいコミュニティのイメージは具体的になりつつあるのですが、実現するためには人も資金も必要です。資産家でもない僕たち夫婦が二人で目指すには遠い道のりかもしれません。でも、お金がないからあきらめるという選択肢は僕の中にありませんでした。
そこで、構想を実現するために一人でも多くの人に共感してもらい、協力してもらう方法を考えました。
 
まずは、構想を聞いてもらう以前に僕ら夫婦のことを知ってもらい、人として興味を持ってもらうこと。さらには僕らを面白がってもらい、信用してもらうことが大切だと考えました。そこで、夫婦ですぐに始められることで、構想の実現にも役立つこととして、おそうざい屋に挑戦することにしました。
 
那須には美味しくて、おしゃれで、居心地の良いレストランがたくさんあります。でも、ちょっと特別な“ハレの日”にいただく食事ではなく、いつもの日常の中で、飽きずに食べられる素朴な手づくりの料理を提供したい、さらに僕たち夫婦が子供の頃から大好きだった日本の伝統食である発酵食にこだわりたいとの考えに至りました。
『ピクニックの森』が目指す“こころとからだの健やかさを手に入れる”ためには食がとても大切であり、とりわけ発酵食料理が大いに役立つと確信しているからです。
 
那須の魅力である新鮮な食材を使い、手づくりの塩麹や醤油麹、味噌を調味料に多用して心を込めておそうざいをつくり、対面販売することにより僕らに興味を持ってもらい、僕らの人となりを知ってもらうことができるのではないかと判断しました。
 
また、妻は東京に住んでいた頃から現在に至るまで約20年、エアロビクスやヨガのインストラクターをしているので、おそうざいの対面販売とヨガのレッスンを通じてたくさんの人とコミュニケーションを取り、信用してもらえる関係を作りながら、僕らの構想を少しづつ聞いて頂くことを目指しました。
 
そんな下地を作ってから、具体的に協力してもらう方法として、当社への出資を募ることを考えました。流行りのクラウドファンディングではなく、あえて株式の募集にこだわったのには訳があります。
 
自分もいくつかのクラウドファンディングに参加した経験から感じていたのですが、クラウドファンディングの場合、何らかのプロジェクトを実現するために資金を提供し、その金額に応じたリターンを受け取った時点で両者の関係が終わってしまうことが多く、僕はそれがいつも残念だなぁと感じていました。もちろん、そういうシンプルな関係を望んでいる場合もあると思いますが、せっかく事業やプロジェクトに共感してもらえた人との関係が簡単に途絶えてしまうことに疑問を感じていました。
 
まして僕がつくりたいのはコミュニティであり、ヨガ・スタジオなどの建築物を建てることが目標ではありません。そこに人が集まり、活動が継続されることで初めてコミュニティとして成立します。共感してもらえた人との関係を継続するためには、出資金としてお預かりした資金を使って事業の基盤を作り、そこで行われる活動に積極的に参加しやすい仕組みを考え、コミュニケーションを取り続けることが大切であり、コミュニティでの体験や活動を通じて出資頂いた金額以上の価値、例えば健康や生きがいや絆といったお金では買えない価値をお返ししたいと考えています。
 
その方法として、クラウドファンディングより株主になってもらう方が自分の構想には合っていると考えました。夫婦二人だけの会社にも関わらず株式会社として会社を立ち上げたのも、最初からそんなイメージを持っていたからです。
 
もちろん、募集を始める際にはちゃんと理解されるか、本当に株主が集まるのか不安もありましたが、実際に始めてみると自分の想像を超える反響がありました。ウェブサイト(ブログ)で告知を行い、フェイスブックやインスタグラムで拡散するという、言わばほぼクチコミだけに頼る方法でしたが、全くお会いしたこともない方を含め、たくさんの方々から申し込みを頂戴することができ、改めてSNSが持つポテンシャルの凄さを実感いたしました。
 
中には見ず知らずの方から、「まさに私がやりたかったことであり、もう自分では実現が難しいのであなたに私の夢を託したい」といった心のこもったお手紙を添えて申し込みを頂き、心が奮い立つような体験もありました。
前回の募集で申込を頂いた方のうち、2割ほどは直接存じ上げない方からのご支援でした。そのような皆さまの想いをしっかりと背負い、大きな責任を実感しながら構想の実現に全力で取り組まなければならないと強く感じています。
 

Q3 今後どんな人に参加して欲しいですか?またビジョン展望について教えてください。

 
まずは自然の中で過ごすことが大好きな方に気軽に遊びに来て欲しいです。そこでどのように過ごすかは、実際に森を訪れてから、自分で感じたままに過ごして頂ければ嬉しいです。
 
ツリークライミングをしたり、ツリーハウスづくりに参加したり、森の中のスタジオでヨガをしたり、音楽に合わせて体を動かしたり、森の中にある材料を使ってクラフト体験をしたり、那須で自ら収穫した野菜を仲間と一緒に調理して食事を楽しんだり、薪ストーブの炎の揺らぎを眺め、薪のはぜる音を楽しみながらまったりしたり、野鳥の声や風にそよぐ木々の音に耳を傾けながら本を読んだり、静かにぼーっと過ごしてみたり・・・。
 
そんな体験を通じて、この森で何をしたいか、どのように過ごしたら自分の人生が今より少しでも豊かになりそうか想像を膨らませて欲しいです。さらには、それを実現するために何が必要か自ら考え、行動に移せる人に集まって欲しいと願っています。
 
そんな方々を精一杯応援する用意があります。前にも述べたように、この森の中に自分の仕事の拠点をつくりたいという方には、那須らしい小さなコワーキングスペースをご用意する予定です。生涯続けられる新たなキャリアを見つけたい、新しい仕事を見つけたいという方々に対するプログラムも企画中です。
 
また、この森で自然と共に暮らしたいという方には、入居者が共同で使える薪ストーブ付きのサロンを併設した、“薪ストーブのある暮らし”が体験できるシェアハウスのようなアパートもつくりたいと考えています。所有からシェアの時代に変わりつつある中、住む場所も働く場所も複数の拠点を持つ方が増え、そんなライフスタイルに対応したサービスが増えてきました。『ピクニックの森』は、そんな方々の選択肢になりうる場所として、那須の魅力をギュッと詰め込んだ小さなコミュニティを目指しています。
 
『ピクニックの森』には、大切にしたい9つのキーワードがあります。
 
・五感を呼び覚ます
・季節の移ろいを愉しむ
・地のもの旬のもの
・手づくり&手しごと
・自然とカルチャーの心地よい融合
・ありのまま(加工されていない、より自然なもの)
・つなげる&つながる
・伝統と先人の知恵に学ぶ
・小さなコミュニティ
 
これらキーワードにまつわる「もの」や「体験」、「景色」などを少しづつ集めていきます。
そんなライフスタイルに共感頂ける方とつながり、一緒に過ごし、構想を実現するために行動を共にして頂ける方を心からお待ちしています。
 

Q4 募集内容を教えてください。

 
現在、第二期の株式募集を行っております。2019年12月31日を申込期限とさせて頂いています。
ご興味のある方は、お名前、ご住所を明記の上、以下のメール宛てに直接ご連絡を頂けるとありがたいです。関連資料をご送付するとともに、できる限り直接お会いしてお話をさせて頂く努力をいたします。
 
お預かりした資金を元に、ヨガ・スタジオやカフェ&レストランを建設し、コミュニティの基盤づくりを進めます。そして、現在も既に行っている森の中で自然を体験するイベントを中心に活動を継続しながら、来年度を目標にしているグランドオープンを目指して準備を進めてまいります。
 
株主の皆さまには、コミュニティづくりとそこで行われる活動の中で積極的に役割を担って頂ける機会をご用意します。もちろん義務ではありませんが、誰かの役に立つ喜びや生きがいを見つけ、味わって頂きたいです。ご自身にとってより居心地の良いコミュニティにするため、アイデアの提供や共に行動することで参加して頂けたら嬉しいです。
 
また株主優待として、グランドオープンした初年度には、森の中での物品の購入や体験活動の参加費を10%OFFとさせて頂きます。毎年、何らかの株主優待をご提供できるよう努めます。
 
そして、僕たちの考えや活動を理解し、体験して頂くためのイベントやワークショップを随時行っております。
直近では、今年の12月1日(日)に那須で発酵食の料理教室を予定しています。定員8名の小さな料理教室で、発酵食の効用やおいしさを知って頂き、日常に取り入れて頂けるような体験となるよう心がけます。単なる料理教室ではなく、『ピクニックの森』の今後についても参加者の皆さんといろいろお話しできればと考えています。
 
また、『ピクニックの森』を体験して頂くための体験会も行ってまいります。樹木の専門家であるアーボリストの指導の下、ツリークライミングを行ったり、森にある材料を使ってクラフト体験をしたり、自分の好きな具材を挟んで手づくりのホットサンドを焼いたりして楽しんでもらいます。
 
いずれも詳細はウェブサイト(ブログ)やフェイスブック等で随時告知いたしますが、ご興味をお持ちの方は、以下の問い合わせ先までご連絡を頂けましたら幸いです。
皆さまとのご縁を頂けることを、心から楽しみにしています。
 
■株式募集、料理教室、その他お問い合わせ先
株式会社PICNIC
代表 岩下礼成
Mail: h.iwashita.picnicnasu@gmail.com
Facebook: ピクニックの森(@picnicnasu)、PICNIC-nasu(@picnic2017)
 
 
インタビュアー:大川耕平

[取材日:2019年10月21日]
 
 
 
 
 
 
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