キーパーソンに聞く

2011.09.12号 内側を整えると外側のコミュニケーションが変わってくる

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2011.09.12
NPO法人ヘルスコーチ・ジャパン
代表理事  最上 輝未子 氏

ヘルスケアのサービスにはメンタル面のサポートが欠かせないが、体重や血圧のように数値化しづらいため、容易にサービスとして取り込めない。どのように対応していけばよいか?その方法の1つがコーチングではないだろうか。すでに医療やヘルスケアに関わる人々にコーチングを行っている団体にNPO法人ヘルスコーチ・ジャパンがある。2008年に設立してから、すでに延べ1200名以上の受講者がいる。日夜指導にあたる最上輝未子氏にお話を伺った。
最上 輝未子[ もがみ きみこ ]
元薬剤師。2000年からプロコーチとして活動。個人コーチングと平行して、コーチングマネジメント、コミュニケーション、アサーション、メンタルヘルス、医療安全などのトレーニングを行っている。2008年からは、NPO法人ヘルスコーチ・ジャパンを立ち上げ、ビジネスコーチングではカバーしきれない大多数の人たちを対象とした、ヘルスコーチング、メンタルコーチングを提供している。

ヘルスコーチングのきっかけ

最上氏がコーチングに興味を持ったのは2000年、当時コーチングはビジネスシーン(企業に対して)でしか商売として成立しないと思われていたが、病院という場でこそコーチングのスキルが役立つのではないかと考えていた。また3人の子供の子育てで、教育にも役立つと思い勉強を始めた。

「2005年頃、当時学んでいた大学院で『カルナプロジェクト』に出会いました。『カルナプロジェクト』はアメリカのディジーズマネジメント(疾病管理システム)を日本に導入するために適した形を研究していました。しかし、特定保健指導が始まることになり、『カルナプロジェクト』が特定保健指導にも活用できる部分があることから、プログラムの内容が変わってきたようでした。

私が『カルナプロジェクト』を知ったのは、修士論文のフィールドを探していたときでした。教授に紹介してもらい、最初に分析を手がけたのが、糖尿病の患者の脱落を防ぐために電話で介入するプログラムだったのです。そのオペレーター達を教育するプログラムを作りたいと言われ、コーチングのノウハウを活かしてプログラムの作成をはじめました。

ずっと何かを作りたいと思っていたのですが、何を作りたいかうまくイメージできていませんでした。それが経験のある医療に関わるものだったので、これなら体系立てて作れると思い取り組んだのです」

その経験をきっかけに、医療現場の経験を活かして保健師や栄養士にコーチングを広めるため、ヘルスコーチ・ジャパンを立ち上げることとなった。

誰にでも分かりやすいプログラムを

ヘルスコーチ・ジャパンが力を入れているのがセルフマネジメント力だ。その中でもキーになるのが『自己基盤力』である。

「コーチングを効果的に使いこなすために必要な力が『自己基盤力』です。『自己基盤力』とは自分自身を十分に認識し、うまく使いこなしていく能力のことをいいます。『自己基盤力』は個々人の内側に深く入り込まないと扱えない力なので、一般の講座では取り上げにくく、ほとんどのコーチング講座ではきちんと扱っていません。しかし、ここがぐらついているとコーチングで結果が出ないのです。そこで、ヘルスコーチ・ジャパンでは、『自己基盤力』とそれに関連する『人間関係力』のトレーニングに力を入れたプログラムを作りました」

ヘルスコーチ・ジャパンのトレーニングプログラムは3つのレベル、9つのステップで構成されている。Step1で、セルフマネジメント力(自己基盤力と人間関係力の両方の力)を強化するトレーニングと、コーチングの基本スキルとコーチングサイクルを身につけるトレーニングを行い、Step2では、コーチングサイクルが回りづらいケースを大きく2つに分け、メンタルコーチング講座、ヘルスコーチング講座として提供している。

『自己基盤力』や、セルフマネジメント力、そこで扱う事柄について、最初はうまく表現できず、わかりにくいと言われたので、コーチングでの専門用語を使わず、「心の地雷」と表現している。この言葉だと、コーチングを全く知らない人にも一発で理解してもらえるようになったと最上氏。

ヘルスコーチの活用シーン

ヘルスコーチ・ジャパンの講座を受けて、実際に現場で活用しているのはどのような人なのだろうか?

「最初は、保健指導に携わっている保健師の方や、運動指導を行うアスレチックトレーナーの方々だったのですが、今ではその領域が広がり『伝える・教える・育てる』仕事をしている方々、例えば、塾の先生、音楽教師、コンサルタント、管理職の方々も活用していただいています。

一番大きな変化は、ヘルスコーチング、メンタルコーチングを使っている本人のストレスが減ることです。自分自身の基盤が整うことで、対象者の反応に惑わされることなく、落ち着いて対応できるようになること、対象者の状態に合わせた具体的な関わり方を身につけることで、コミュニケーションのずれによる摩擦がなくなり、より容易に、伝えたいメッセージが伝わるようになるからです」

今後の展望

現在は九州を拠点に東京や大阪など、全国数カ所で講座を開催している。もっと多くの場所で定期的に行うためには、指導者を増やしていく必要がある。
ヘルスコーチ・ジャパンでは、受講生の中からメンバーとなり、教える側のスタッフになる仕組みがある。さらに実際の講座を受け持つトレーナーへと昇格していく。現在約60名のメンバーとトレーナーが活躍している。

ただし拡大することで質の管理体制などリスクが発生する。トレーナーの養成をきちっとシステム化することで、リスクを軽減していきたいと考えている。

「今後は、燃えつきが職業病と言われている、看護・介護・福祉業界で働く方々向けのトレーニングプログラムを作成していく予定です。特に、終末期医療の現場は、看護師の半分がつぶれていくそうなので、優秀な看護師さんを守り、日本の医療を守るためにも、わたしたちのプログラムを活用していただきたいと考えます」

最後に、これからコーチングを学ぼうと思っている方々へ伝えたいことを聞いてみた。

「コーチングは、医療や教育、そして、心と体を健全に保つために大いに活用できる、汎用性が高い技法です。より多くの方々に、ヘルスコーチング、メンタルコーチングを知っていただき、ご自身の生活に役立てていただきたいと思っています」

[ 取材日:2011年8月2日 ]

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