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2009.07.30 株式会社ゴールドウイン 事業統括本部 コンプレッションアンダー事業グループ  平山 壮一 氏

近年、運動時に着用する機能性アンダーウエア(コンプレッションアンダー)の市場は急速に拡大している。スキー、アスレチック、アウトドア、マリン、テニス等のスポーツ用品のメーカーである株式会社ゴールドウインでは2009年5月、新製品としてC3fit(シースリーフィット)を発売。開発担当者である、事業統括本部コンプレッションアンダー事業グループ平山氏に、C3fitの開発の背景や特長を伺った。
平山 壮一[ ひらやま そういち ]
1997年にゴールドウインに入社。アウトドアブランド【ザ・ノース・フェイス】【ラテラ】などの営業職を経験し、その後、アウトドアブランド【ラテラ】の商品開発担当を経て現在に至る。自身でもトレッキングやランニングを好み、C3fitの商品開発に役立てている。

拡がりゆくコンプレッションアンダー市場に注目

ゴールドウインではもともと、競技別のさまざまなブランドでサポートタイツやストレッチタイツを含むコンプレッションアンダーを発売していた。中でもTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)のバイオテックスタイツは、今も好調な売れ行きを誇っている。 そこで今後のコンプレッションアンダー市場の拡がりを予測し、各競技、各ブランドで培ったノウハウを集めて、新規プロジェクトとして製品開発に挑むことにしたのだという。 ゴールドウインでは、コンプレッションアンダーを、その機能により3つの側面があると定義している。テーピングのようなサポート機能、負荷をかけることでカロリー消費を促したり、筋肉を強化したりする機能、そして血行を促進し、疲労回復やむくみの軽減に役立つリカバリー機能だ。C3fitは、リカバリー機能を主な目的として開発されている。 「さまざまなスポーツに使える、汎用性の高いものとして開発を進めていきました。コンセプトは『運動機能を着るウエア』。ロゴマークの3つのCは、 Compression(コンプレッション=段階着圧で働きかける)、Conditioning(コンディショニング=身体機能を整える)、 Comfort(コンフォート=あらゆる動きを快適にサポートする)の頭文字です。それらが体にぴったりとフィットする、時代にフィットするという意味で、C3fit(シースリーフィット)というブランドになりました」

段階着圧設計で運動機能向上と疲労回復を狙う

C3fitの大きな特長は、段階的に設計された着圧設計だ。例えばロングタイツは、足首の圧力値が24hPa(ヘストパスカル)、ふくらはぎが 17hPa、ふとももが10hPaといったように、足先から体の中心に向かって徐々に着圧が弱まるように作られている。全身を適度に加圧することで筋肉を適切なポジションにキープするとともに、筋肉のポンプ機能を助けて静脈還流を促進するのだ。 「一般的に、血行促進は疲労回復に役立つと言われています。また、加圧することでリンパ液の流れも促進させるため、むくみの軽減も期待できます。例えばゴルフやランニングをされる方にC3fitを使っていただくことで、競技中のパフォーマンスを向上させるだけでなく、運動後の身体のケアも行っていただけると考えています」 パフォーマンスロングタイツ/ゲイターはスポーツウエアとしては珍しく、医療機器クラスIを取得している。 「C3fitならではの特性を、よりユーザーに理解してもらうため、医療機器クラスIとして市場にラウンチングさせました。『なんとなく体に良さそう』というものではなく、厚生労働省の基準をクリアしたモノ造りをすることで、その効果をはっきりとストレートに訴えたかったのです。着圧設計の基準値は、ヨーロッパ基準を参考に設定しましたが、木型(圧力を測定する為の脚型)は日本人の体型に合わせておこしたものを作成。日本人が使うのに最も適したものに仕上げています」

機能がデザインを決定した

長時間の使用に適するように、また継続的に使い続けてもらうために、その着心地にも徹底的にこだわった。 「素材はスイムウエアでも使用可能な滑らかでソフトな肌当り、それでいて充分な着圧を得られる生地を使用しています。UVカット機能は遮蔽率95%以上、UPF値は50+(30%伸張時)と紫外線を気にせずに使用していただけます」 また、C3fitが体にぴったりとフィットする秘密が、間接部分の三日月部分にあるという。 「ひじやひざなどの関節は曲げた時と伸ばした時では大きく形を変えます。C3fitは、間接部分やその他の必要箇所に三日月形のパターンを配し、立体構造にしています。そのため、関節裏のもたつきやたまり、腰部分のずりおちなどを大幅に解消することができました」 上半身に着用するロングスリーブやハーフスリーブに関しても、胸囲と腹囲の差を三日月型のパターンを入れることで調整しているため、ぴったりと体に添い、ウエアが腰まわりでもたつくことがない。 ちなみに、三日月のフォルムはロゴマークのCと形が酷似している。図らずもコンセプトとデザインが一致するという結果になったというわけだ。

手に取りやすい価格設定で、未経験層にアプローチ

発売後数ヶ月で、C3fitは予想以上の反響を見せているという。その一因はあえて価格を低めに設定したこと。アームカバーやゲイターは3990円、ロングタイツは9975円という、同種の競合製品より2〜4割程度抑えた金額だ。 「今までこういった製品を使ったことがない方々にも、まずは手にとってもらいたいというのが狙いです。一度着用してその効果を知ってもらうことで、コンプレッションウエアというアイテムがもっと市場に浸透していき、更なる市場の拡大をしていくと考えています」 まずは、ランニングやゴルフをする方に。 そして、ゴールドウインが得意とするウィンタースポーツやテニス、アウトドアなどを楽しむ方々にも広げていき、更には日常生活や旅行シーンでも使ってもらえるようになるまでに、認知を広げていきたいと考えているという。

ビジネスや日常生活に利用されるウエアに成長させたい

「目標は3年後に50万本。コンプレッションアンダーとしてはかなり大きな数字ですが、効能と着用感を知っていただければ、決して無理ではない数字だと思っています。スポーツのジャンルでいえば、どの競技でも効果は実感できると思います。従来の慣習に囚われずにどんどん新しい競技で取り入れられるようになれば嬉しいと思っています。また、日常の生活シーンを考えてみても、立ち仕事をする方や頻繁に飛行機に乗られる方など、C3fitが役立つ機会はかなり広いはずです」 [ 取材日:2009年7月2日 ]