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2007.12.03 大正製薬株式会社 セルフメディケーション 新規事業開発部 通信販売グループ  薬学博士 真鍋 栄一郎 氏

ダイエット市場において、食事代替型ダイエット食品(バランス食)が好評な売れ行きを続けている。主流は味を重視したドリンクやスープ、クッキーで、カロリーを抑えながら、必要な栄養素が摂ることができる。大手企業や異業種からの参入も相次ぎ、20〜30 代の女性をターゲットとした商品が次々と販売される中、大正製薬では40代以上向けのダイエットプログラム 『からだ環境ダイエット』を開発。シリーズの一環として、2007年4月から通信販売限定でダイエット食品やサプリメント等の販売を行なっている。今回は『からだ環境ダイエット』の生みの親といえる真鍋さんに開発の背景、販売の施策などをお聞きした。
薬学博士 真鍋 栄一郎[ まなべ えいいちろう ]
城西大学薬学部卒業後、大正製薬 総合研究所入社、医薬品の研究にたずさわり薬学博士取得。その後本社にて、医薬品、特定保健用食品のマーケティング業務にたずさわる。現在、セルフメディケーション新規事業開発部にて、通信販売(大正製薬ダイレクト)の商品企画・開発を担当。

健康維持のために行なう、40代以上のダイエットを探る

ここ数年、生活習慣病の予防などからダイエットを行なう中高年が増えている。しかし「生活習慣は変わらないのに、加齢とともに体重が増えた」「若いころと違って、痩せにくくなった」など、その世代ならではの問題や悩みが表面化している。 「以前から肥満やメタボリック症候群に対応する、健康になるための製品を開発したいと考えていました。40代以上の方のダイエットについて調べてみると、成果が上がらず、ドロップアウトした方がかなり多くいらっしゃいました。原因は痩身目的で行うダイエットと、健康維持のためのダイエットを混同していたからでした」と真鍋さんは話す。

たどり着いたのは「基礎代謝」

体重や体脂肪にばかりに目を向けてきた痩身目的のダイエットではなく、健康的な体を作り、理想的な体型を維持する「大人のためのダイエット」には何が必要なのか?40代以上の体やダイエットの効果について追求した結果、真鍋さんたちは「基礎代謝」というキーワードにたどり着く。 基礎代謝とは安静状態のとき、生命を維持するために使われるエネルギーのこと。例えば、眠っている間にも消費されており、人間が1日に消費する全エネルギー量の約60〜70%を基礎代謝が占めるといわれている。 「基礎代謝が高ければ、消費されるエキルギー量も上がります。しかし、基礎代謝は加齢とともに低下するため、たとえ20代と同じカロリーの食事を摂っていても脂肪が蓄積し、肥満になりやすくなります。筋肉は最もエネルギー消費が大きいのですが、加齢とともに筋肉が減少し、その結果、基礎代謝も低下します。つまり、40代以上の方がダイエットを成功させるためには、摂取カロリーをセーブするだけではなく、運動等で筋肉量を増やして、基礎代謝を高めることが大切なのです」 基礎代謝のアップには運動が欠かせない、ということもあり、ダイエット食品だけを販売するのではなく、「食生活の改善」「運動の改善」「チェック&サポート」をひとつのプログラムとし、やせにくい世代でもダイエットを継続的に行なえるよう考慮した。

味と品質にこだわった、製薬会社ならではのバランス食

『からだ環境ダイエット』シリーズの第一弾として2007年4月、ドリンクタイプのバランス食を発売。11月にはスープタイプを新たに加え、バリエーションの拡大をはかった。製薬会社らしい配合面の工夫として、一般に売られているドリンク・スープタイプのバランス食と比べ、糖質を少なくしている。 「糖質、つまりご飯を過剰に摂ると、余分な糖質が脂肪になり、それが蓄積するといわれています。糖質を一度にまとめて摂るのではなく、少しずつ摂れば、内臓脂肪をはじめとする脂質がエネルギーとして消費されます。そのため、このバランス食は糖質を少なくし、なおかつ水溶性食物繊維を多く配合して、糖質がゆっくり吸収するようにしました。また、味に対してこだわりのある世代なので、素材の持ち味や満足感にも気を配りました」と真鍋さん。 運動をサポートするのは『燃焼の六粒』というサプリメント。和の香辛料4種と+カルニチン、ビタミン等の成分が入っており、運動での脂肪燃焼が期待できる。また、健康チェックができるシステム『健康チェッカー(医療機器)』も用意。検査キットで血液を採取し、郵送するだけで、糖代謝や脂質代謝など14の数値判定、メタボリック症候群の危険度などが書かれた検査結果が届く。ここまで行うことで、はじめてダイレクト販売におけるone to oneサポートが実現した。

WEBをきっちり活用することで継続効果を上げる

ダイエットを継続させるためには、チェック&サポートも必要、という考えから、バランス食の利用者向けにWEBサイト『TAISHO Diet Manager』でのサポートサービスを行なっている。ここでは、食事内容や体の変化を詳しく記録できるダイアリー機能のほか、管理栄養士による食事プログラムの提案、カロリーや栄養バランスを考えた食事レシピの紹介など、さまざなコンテンツが用意されている。 「ターゲットとしている40代以上の方は、どちらかといえばデジタルよりもアナログのほうが得意な世代。WEBサイトを見ることはできるけれど、ネットショッピングには抵抗があるという方も多いようです。しかしこの先、インターネットの利用率は世代を問わず、上がっていくでしょう。今はまだ、電話や FAX、はがきで注文されるお客さまも、いずれWEBを利用し、ネットショップで買い物をするはず。そのため、コールセンターやペーパーツールの配布などアナログ的な方法も活用しながら、手軽に、簡単に使えるWEBサービスの環境づくりにも力を入れています」 WEBサービスの提供はこれまで経験してきていない領域のため、実行しながら前に進めるスタイルを取っているとのこと。今後はサポートサイトを実際に使ったユーザーからの評価を聞きながら、使い勝手を改善していきたいという。

今後の展開

真鍋さんは「会社にとって新たな事業領域を開発することができた」と達成感を感じながらも、すでに次のステップへの構想を練っていると話す。 「バランス食のバリエーションを増やすのはもちろんのこと、基礎代謝をアップする運動プログラムの提供も考えています。当社は新規事業の推進に取り組んでいて、そのひとつがこの通販部門。会社としても力を入れていますし、お客さまの期待に応えられるよう、がんばっていきたいと思います」

■取材を終えて

高齢になっても元気でいるための「健康管理=ダイエット」を提案し、大人のためのダイエットを開発した真鍋さん。経験のない領域に対して、新しい発想に取り組み、信念を持って実現していく姿に、バイタリティとパワーを感じた取材となった。 [ 取材日:2007年11月12日 ]