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2007.10.22 株式会社タニタ ヘルスケア/ネットサービス推進部 リーダー  坂井 康展 氏

生活習慣病の予防改善、健康管理への関心を受け、体重や体脂肪率、基礎代謝量など、さまざまな測定が行なえる体組成計が人気を集めている。最近では通信機能を搭載した機器が登場。異なる機器同士の測定データを連携・管理し、健康支援へと繋げる新たな取り組みが始まっている。 家庭用計量計測器メーカーのタニタは2007年3月、通信機能を備えた計測機器とウェブサイトを連携させた「モニタリング・ユア・ヘルス(MYH)」事業を開始。その第一弾として、会員制の健康応援サイト「からだカルテ」を提供している。
坂井 康展[ さかい やすのぶ ]
ニューヨーク州立大学卒業後、アクセンチュア株式会社で6年間コンサルティング業務を経験し、2006年に株式会社タニタに入社。体脂肪率10.8%(07年10月現在)

「はかる、わかる、楽しく続く」がテーマの「からだカルテ」

『からだカルテ』は会員制(入会金2,000円)で、月額料金は1,200円(スタンダードメニュー)から。生活習慣の改善にはある程度の期間が必要であることから、契約期間を2年にし、測定機器+サービスを分割で購入する形に設定している「サービス付き健康機器」である。 契約終了後、機器の返却は不要で、それ以降は6カ月2,000円でサービスを続けることが可能だ。使用できる機器に血圧計をプラスした「アドバンストメニュー(月額1,800円)」や、会員の家族向けメニューも用意している。 「以前より、お客様から『計った後、どうすればいいのか』という質問を頂いていました。機器の仕組みや測定データの読み方などはお伝えしてきましたが、データの記録や有効利用など測定後のケアについては、そのニーズに応えきれていませんでした」 「そういう部分でジレンマがあったんです。そこで、測定データをWEB上で管理できるようにし、グラフ表示でわかりやすくお伝えしよう、楽しみながら体の変化や毎日の行動をチェックすれば、続けやすいだろうと考えたのが、『からだカルテ』立ち上げのきっかけでした」と坂井さんは話す。 その大きな特徴は、個人に体重管理の習慣が定着するには「2年間」が必要と判断。2年間で新しい生活習慣が身につくよう「継続」のしくみを強固につくり、それを約束(コミットメント)しようとしている点だ。機器面での工夫、サービス面での工夫の2点を下記にまとめる。

機器面での工夫:データの記録簡略化を実現

これまで測定データの記録は、記憶や手入力に頼っており、それが「測定の継続」と「データの有効利用」を難しいものにしていた。体重計や対組成計を持っていても「気が向いたときにはかり、測定データはそのときに見るだけ」という人がほとんど。 製品を売るだけでなく、製品購入後もユーザーに体重管理の習慣づくりをコミットメントしていきたいと考えていたタニタは、データの記録を簡略化できるリレーキーと対応機器を開発した。対応機器ではかったデータをリレーキーが赤外線無線で収集。その後、パソコンにリレーキーをUSB接続するだけで、日々の体重や体脂肪率などを『からだカルテ』に記録できる。 「体脂肪や内臓脂肪を減らすには、自分の体や生活を知り、食生活や運動量を見直す必要があります。時間をかけながら生活習慣を変えていくため、手間をかけずに測定・記録を行なえることが重要でした」

サービス面での工夫:日記だけでなくゲームを用意、さらに個別アドバイス

「リレーキーと対応機器で、機器それぞれのデータを一括保存し、簡単にデータベース化できるようにしたのがこのシステム。蓄積データをグラフで確認したり、世界中の名所を疑似ウォーキングできる歩数ゲームなど、測定データを楽しく記録・チェックできるよう、工夫しました」 また、測定データの記録だけでなく、生活習慣の改善に役立つコンテンツも豊富に掲載。さらに、記録管理をみて専門スタッフが個別にアドバイスするサービスも予定している。2年間で体重管理を楽しみながら自然とできていく流れに配慮している。

パートナー企業との提携で顧客を広げる

『からだカルテ』の会員数拡大に向けた取り組みのひとつとして行なわれているのが、パートナー企業との提携だ。サービスと同時に食品会社のキリン ヤクルト ネクストステージと提携。男性向けダイエット食品「プログラミール」を購入すると、『からだカルテ』を2カ月間無料で体験(対応機器のレンタルはなし。別途有料メニューにて対応)できる。 また、キリン ヤクルト ネクストステージが運営するコミュニティーサイト「リエータカフェ」では、2007年5月から対組成計の測定データを携帯電話経由で転送、モバイルサイト上で健康状態をチェックできるサービスを開始。そのほか、フィットネスクラブのスポーツクラブNASや「家庭の医学」を発行する保健同人社、食生活関連サイトを運営するEat Smart、インターネット上の共通ポイントプログラムを運営するネットマイルなどとの提携も行なっている。 「フィットネスクラブやダイエット食品を利用している人の測定データを『からだカルテ』で管理したり、入会時にネットマイルをプレゼントするなどのサービスを行なっています。また、病院や介護施設と提携するなど、保健指導、予防医療などに役立つ計画を進めています」と坂井さん。 タニタでは積極的に他業種と提携していくことでサービスの提供を増やし、2009年度までに45万人の会員獲得を目指している。

今後の展開と課題

坂井さんは「サービス付き健康機器という新しいコンセプトの商品についてはまだ認知されていない部分も多くあるため、コンテンツの充実やブログの活用など、積極的にアピールしていくつもりです。また、すでに体組成計や体脂肪計などを購入しているユーザーの方へのサポートも今後の課題です」と話す。 『からだカルテ』のメインコンテンツである『健康グラフ日記』は測定データをグラフ表示するサービスだが、今後はリレーキーからの転送だけでなく、携帯電話や据え置き型のレシーバーなども検討している。 「パソコンを使わない人も簡単に測定データを管理できるようにして、ターゲットを増やしていきたいですね」と坂井さん。 現在、リレーキー対応機器は体組成計、血圧計、歩数計の3種類。今後は乳児用の体重計、尿中の糖を測る尿糖計、タニタ製以外の健康測定機器も加えたサービスも追加の予定だ。「はかるだけでなく、体の変化を確認したり、生活習慣を見直したい」というベネフィットを、次世代ヘルスケアサービスで支援する『からだカルテ』。対応機器のラインナップやパートナー企業との提携など、魅力的なサービスの拡大に期待したい。

■取材を終えて

立ち上げの企画から運営まで、『からだカルテ』に関するすべてに気を配る坂井さん。同社で働く知人からプロジェクトの話を聞き「ぜひ、参加したい」とタニタへの転職を決めたのだという。自分のミッションが明確であるだけに、大変情熱的に事業を説明いただけた。 [ 取材日:2007年10月2日 ]