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2007.02.21 松下電器産業株式会社 ナショナルウェルネスマーケティング本部 商品グループ ヘルスケア商品チーム  川治 久邦 氏

自宅でも簡単に運動効果が得られ、かつ楽しく継続できる点が受け、2006年度で大きく伸張している家庭用フィットネス機器がある(販売台数は前年度の約3倍)。「乗ってゆられるだけ」がキャッチフレーズの松下電器産業の「ジョーバ」だ。今回はジョーバのマーケティングを担当する川治さんに、ジョーバが提供する価値、2006年度のヒット要因を中心にお聞きした。
川治 久邦[ かわじ ひさくに ]
1970年生まれ。福井県出身。同志社大学商学部卒。入社後、マッサージチェアや血圧計など健康関連商品のマーケティング企画を担当。趣味はフットサル。

「ジョーバ」の歴史

ジョーバの開発は1993年にスタート。欧米のリハビリ法のひとつとして普及している乗馬療法があり、それを機器で具現化しようとしたのが出発点となっている。当時1台2000万円(施設向け)からスタートした。 その後、2000年10月に「家庭向け」で高齢者の運動機器として登場するも、市場の反応は今一歩。しかし、購入者の声の中にダイエット効果があったということに注目し、2003年3月、「運動不足の解消」と「ダイエット」という2つのベネフィットを訴求した3代目モデル「ジョーバ」を発売する。この商品が大きな転換期となる。 その後2005年6月現在のフラッグシップモデル(EU6442)や、2006年7月に女性向けに「姿勢美人」を訴求したモデル「ジョーバフィット」も発売。これも販売台数のアップに大きく貢献している。 松下電器は、それまで商品毎に個別活動していた健康関連の取組みを一つにくくり直して「からだ家電」として提案。「からだ家電」を日常の生活に取り入れることで、効果を手軽に、効率的に得ることができる。 ジョーバも、このコンセプトを実現している商品のひとつ。「誰でも」「毎日少しづつ」「続けられる」ことが特長であるだけでなく、運動の「効率」という点にも注目したい。

徹底して効率を高める

ジョーバがヒットした要因としては、「乗って揺られるだけ」で楽に筋肉が鍛えられるといった点がよく言われている。確かに、日常生活に楽に取りれることができる点は重要だが、それ以外にも支持されている点がある。 それは、ジョーバが提供する「運動効率」という点だ。 ジョーバは、 1) 普段鍛えにくい体幹部の筋肉の強化 2) 筋肉の柔軟性の向上 3) バランス感覚の向上 4) 糖の消費を促進 という4つを同時に行えるフィットネス機器である。 時間がよほどある人でない限り、自宅でそれぞれの目的でばらばらに運動をすることは難しい。ジョーバならそれらを同時に行うことができる。 ちなみに上記4)の糖の消費でいえば、ウォーキング60分の運動量と、ジョーバ30分の運動量がほぼ同じという。 「ジョーバは乗って揺られるだけで、体に無理なく運動できるので、体力のあまりない方や運動の苦手な方でも、短時間で効率的に、継続した運動習慣を作ることができます。そのような方にジョーバはとても向いている商品です」と川治さんは語る。 そもそも運動の継続性には、 ・楽に ・短時間で ・効率よく ・飽きずに ・楽しく といった観点が必要なはず。 ジョーバは、「楽に」「短時間で」「効率よく」という点は抑えているが、その他の観点についてはどのように考えているのだろう。

「ながら運動」の提案で継続を総合的に支援

「飽きずに、楽しく続けるために、ジョーバを使った運動のバリエーションを提案することと同時に、自宅で継続しやすい『環境づくり』を提案することが大切と考えています」 「ジョーバでは、『ながら運動』を薦めています。これは、自宅でテレビを見ながら、音楽を聴きながらといったある行為をしながらの運動という意味で、普段のライフスタイルに溶け込んでしまおうという考え方です」 「もちろん、本格的にダイエットをしたい方には、ジョーバに乗りながら有酸素運動のレベルをあげるDVD(ジョーバビクス)を提案もしています」と川治さん。

2006年ヒットの裏には

ジョーバは、2006年度で2005年度の約3倍の販売台数という状況でもある。このヒットの要因はどのようにみればよいのだろう。 「まず、専門家と地道な研究、開発を重ねて運動効果の実証を積み重ねてきたことです。ようやく完成度の高い商品にまで進化してきました」 「現在の運動に対する意識として、ヨガ・ピラティス・太極拳など体のコアを鍛えるというものが注目されています。ジョーバもこれにあてはまるものと考えられます」 2006年7月に発売した「女性の姿勢(姿勢美人)」を訴求ポイントにしたモデル「ジョーバフィット」ではプロモーション活動も強化し、露出アップにつながっている。

今後さらに継続して利用していただくために

ジョーバが現在提案している運動効果は、 ・ダイエット ・運動不足の解消 ・ゴルフの飛距離アップ ・美しい姿勢 ・足腰の健康維持 ・糖の消費を促進 という6つ。 「今後は、これら幅広い目的、さらにはユーザーの体力に合わせて楽しみながら継続ができるツールや、プログラムも開発していくこともテーマです」と川治さん。 「運動の習慣化」という観点で、今までにない商品特性をもつジョーバ。さらに、運動分野でのトレンドを敏感に察知し、商品のポジショニングを決めていく。商品づくりの参考になる点も多いといえるはずだ。

■取材を終えて

川治さんは、研究・開発・マーケティング部門がお互いに連動しながら、運動効果についてエビデンスに基づくマーケティング(モニターを使った実証実験など)を行い、生活者に提案していく「チーム力」も重要とも語ってくれた。 ジョーバの歴史は長い。1993年から実施してきたこのチーム力が今花開いたといってもよいだろう。 ジョーバのような家庭用フィットネス機器市場は、ダンベル、バランスボースなどのグッズとあわせ「ホームフィットネス(セルフフィットネス)市場」に入る。 ホームフィットネス市場は、時間のない人でもでき、他人からの目を気にしないで、比較しないで自分のペースでできるという特長がある反面、自宅で続けるためには強い意志以外の「続ける工夫」が必要になる。 ジョーバは商品以外での「自宅で継続しやすい環境づくり」も提案している。この点は「ホームフィットネス市場」での重要な切り口になるはずだ。 [ 取材日:2007年2月5日 ]