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2007.01.23 大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 SOYJOYプロダクトマーケティングマネジャー  服部 進 氏

市場規模は約400億円を越え、順調な拡大をする菓子栄養調整食品市場。その中で、2006年4月に発売以降わずか半年で売上30億円を突破する勢いの商品がある。それが大塚製薬の「SOYJOY」だ。今回はSOYJOYのプロダクトマーケテティングマネジャーである服部さんに、開発の背景、販売の施策を中心にお聞きした。
服部 進[ はっとり すすむ ]
ニュートラシューティカルズ事業部 製品部 プロダクトマーケティングマネージャー 1967年生まれ。滋賀大学卒業。食品関連やネット関連の会社を経て、2005年10月に大塚製薬入社。SOYJOYのマーケティングを担当。

強みの組み合わせで生まれた「SOYJOY」

大塚製薬は、人々の健康に貢献する革新的な製品を創出することを企業ミッションとする。いわずと知れたポカリスエット、カロリーメイトなどはその代表である。 同社の戦略的位置づけ素材として、大豆がある。2002年、同社はオカラを取り除かず大豆をまるごと摂取でき、豆乳より栄養価の高い「スゴイダイズ」というまるごと大豆飲料を発売している。 そこには、食の欧米化が進み動物性たんぱく質の摂取が増える中、良質な植物性たんぱく質を含む大豆の健康度を見直すと同時に、その歴史は弥生時代にもさかのぼるという、大豆の食文化も伝えていきたいという想いがある。 一方、同社にはカロリーメイトの生産過程で、固形のものをしっとりと焼き上げる焼成技術を保有していた。「スゴイダイズ」の大豆をまるごと使う技術と、この焼成技術の組み合わせで生まれたのが、今回紹介する「SOYJOY」だ。

特長とターゲット・利用シーン

菓子栄養調整食品市場には、すでに数多くの商品が存在する。新商品投入には、明確な特長(ポジショニング)が必要になる。 SOYJOYは、小麦粉を生地のベースに使いカルシウムやビタミンといった機能素材を付加する既存商品とは違い、小麦粉を全く使用せずに、「大豆・ナチュラルな健康」という特長をもつ。簡便性が高いというこのカテゴリー(菓子栄養調整食品)自体の特性と合わせて、「ダイズの新ケイタイ」というキャッチフレーズで表現している。 また、メインターゲットは30歳以上の、アクティブライフを過ごす多忙なビジネスパーソン(男女問わず)で、利用シーンとしてはほっと一息つける休憩時間を想定し、「ビズブレイク」とそれらを表現している。 「ダイズの新ケイタイ」、「ビズブレイク」とそれぞれがわかりやすく覚えやすく表現されている点にはまず注目だ。 同社は菓子栄養調整食品としてすでにカロリーメイトを販売している。カロリーメイトは、食事の代替食として摂る場合が多く、30歳未満が中心。一方 SOYJOYは、間食として使われ30歳以上がメインターゲットになっており、商品のカニバリゼーション(自社の新商品が自社の既存商品を侵食してしまい、既存商品の売上に悪い影響を及ぼすこと)は起こさない工夫をしている。

マーケティングで最も力を入れている点

「大豆・ナチュラルな健康」というSOYJOYの特長。これが消費者に高い支持を受けている最も大きな点と考えられるが、それを伝えていくマーケティングとしてはどのような点に力を入れているのだろう。 「まるごと大豆を使ったSOYJOYのよさをどう消費者にわかりやすく伝えていくか、これがマーケティングで最も力を入れている点です。具体的には、サンプリングとテレビCM、説明型PR記事に重点を絞って実施していています」と服部さんは語る。 【サンプリング】 SOYJOYのよさをわかってもらうには、味わってもらうことが第一と考え、今までに1700万本を配布。配布の際には、商品のよさを説明したシールをつけたり、パンフを配ったりの工夫を行う。 また、配布先は、ターゲットに確実にアプローチできると想定されるメディア企業、タクシー、カフェの3つに重点を置く。 メディア企業は、テレビ局・新聞社・雑誌社などをさし、日本の主要なメディア企業に直接出向きサンプリングを実施。彼らが情報の発信者でもある点にも注目し、副次的に宣伝効果も狙っている。 ビジネスパーソンがほっとできる瞬間ともいえる、タクシーへの配布では、乗客へのサンプリングがタクシー企業側にとって「顧客サービス」の一環にもなっており、相互メリットも考えている。 カフェは米国発のコーヒーチェーンとして拡大しつつある「タリーズ」と組み、コーヒーと合うおいしさであることを訴求している。 【テレビCM】 ターゲットに強い印象を残し、よさをわかりやすく伝える手法としてテレビCMを選択。CMキャラクターは、超多忙で、大豆のよさをわかりやすく伝えてくれる人ということで「みのもんたさん」を起用している。

リピートしてもらうために口コミを重視

大量のサンプリングとテレビCMという費用のかかる手法をとるだけに、継続して購入してもらうしくみづくりは、より重要になる。 「リピートしていただくために、大豆のよさ、SOYJOYのよさを丁寧にまじめに伝えることが大切と考えました。それを口コミ形式で行っています。消費者の方に直接語っていただくことがなにより大切と考えています」と服部さんは語る。 同社は「SOYJOYスタイル」というブログを設置し、消費者へのインタビューにより、SOYJOYを様々な角度から紹介している。そこでは、「ぼろぼろしないで食べやすかった」、「満腹感がある」といった消費者自身が見つけた特性が数多くあげられ、今後の広告訴求のヒントも多いという。 また「SOYJOY CAFE」というページでは、大豆を利用した健康生活を送る著名人にインタビューを行い(最新号ではボーカリストの渡辺美里さんが登場)、食生活やSOYJOY について語ってもらうとともに、その道のプロとしての生き方も紹介している。

今後の展開

「サンプリングは、約1700万本を行いましたが、日本の人口の90%はまだ食べていないともいえます。SOYJOYはまだまだ、これからの商品です。今のマーケティング施策を愚直にやりつづけることがまずは必要です」と服部さん。 社内では10年以上売れ続けることが「商品」として認められる最低条件となる中、特長をわかりやすく伝え、口コミを利用した地道な活動が今後も続くことになる。 2006年末には、中国での販売も開始。米国での販売も2007年早々には開始され、グローバル展開も本格スタートする予定だ。

■取材を終えて

年末の多忙な中、取材に応じてくれた服部さん。スピーディな受け答えと、バイタリティの高さを感じた取材であった。 服部さんは広告プランナー、ネーミング企業、ウェブサイト構築企業などについて、その特性にあった数多くの外部企業も活用しているとも語ってくれた。 服部さんのようなバイタリティの高いスタッフと特長ある外部企業が成功の陰にあるとみた。 [ 取材日:2006年12月26日 ]