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2006.10.05 株式会社日本オリエンテーション 代表取締役  松本 勝英 氏

今回お話を聞いたのは、健康分野に関するマーケティング支援を行う株式会社日本オリエンテーションの松本さん。同社アイデア創出手法の特長を聞くとともに、長年に渡る健康分野のコンサルテーションから、健康ビジネスで成功するためのポイントを聞きました。
松本 勝英[ まつもと かつひで ]
1942年東京生まれ。 ドイツシーメンスを経て、1969年マーケティング・コンサルティングを業務とする日本オリエンテーションを設立。食品、トイレタリー商品、医薬品、家電商品、ミュージシャン、出版などパッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。 現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民俗学、言語学、などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追求中。

健康業界に関するコンサルティングを実施

-貴社は健康業界を一つの得意領域として、コンサルティングと調査の支援をされていますが、どのようなことをされているのですか?

「コンサルティング」では、健康志向商品のための開発テーマ・商品コンセプト開発、健康市場分析と健康商品戦略開発、健康商品の展開プラン開発、健康コミュニケーション開発などが中心となります。また、「調査」では、健康価値発見のための調査と分析、健康商品開発のための消費者調査と分析を行っています。 また、商品企画に携わる担当者が企画ノウハウのヒントを学べる「商品開発セミナー」、「健康マーケティング」という名前のメールマガジンも配信しています。

-それらのサービスの中で、最近特に注力されているものはどんなものがありますか。

オリジナルパッケージプログラムとして「健康・生活ナレッジマイニング」があります。これは健康を新しい切り口に新商品を開発したい企業が、生活者の声をダイレクトに集め、さらにそれでテキストマイニングで分析することでよりスピーディにかつ創造的な商品アイデア(コンセプト)創出を支援するものです。 思いがけない「生活のホンネ」「生活の事実」をうまく聞き出し、今まで全く気づかなかった商品ベネフィットのヒントとなるキーワードや、見逃していたキーワードを発見できることが最大の特長です。また、「免疫力を高める」「体調がよくなる」など、漠然としたキーベネフィットをこのプログラムにかけると、別の新しい表現や、生活ストーリーを想定しやすくなり、商品コンセプトが描きやすくなります。

-具体的にはどのようなプログラムの流れになりますか。

まず、ネットを使ってフリーアンサー形式で消費者の声を集めます。設問は、「調査に協力している」ではなく、「教えてあげる」という感覚で答えられるよう配慮しています。ブログにコメントを書くような気軽な気持ちで書くことができるので、私ならこう思う、私はいつもこうしている、という本音を集める工夫をしています。

-集まった生の声は、どのように解析するのですか?

まず集めた声の中から、頻出度の高い順にワードを並べ分析します。同時に、どのワードとどのワードが一緒に使われることが多いかなども分析し、さまざまな視点からテキストを分析します。そして、新しいベネフィットにつながるキーワードを探していくわけです。 参考:「健康・生活ナレッジマイニング」プログラムの紹介 http://www.jorien.com/kenko.html

健康ビジネス創出のポイント

-では、次に企業へのコンサルテーション活動を通して、健康ビジネスで成功するためのポイントをいくつか教えてください。

ひとつに、「健康」の捉え方があると思います。現在は「不健康」解消のための商品が多く出回っていますが、「不健康」が解消されれば「健康」かといえば、決してそうではありません。社会との調和の中で、創造的にポジティブに、いかに自身を確立して生きていけるか、これが大切だと考えます。当社ではこのように「健康」を捉えています。

-健康に関する体の数値を改善する、痛みを解消する、だけではだめだということですね。

多くの企業は、効能や効果によって不健康を解消することには敏感です。でも消費者はむしろ、不健康な状態が解消された後のことを思い描いています。例えば、膝の痛みを緩和する商品であれば、痛みを解消して再び孫と一緒に出掛けられるとか、ダンスができるとか、そういった「ポジティブな健康」をイメージさせることが大切だと思います。

-その他のポイントとしてはどんなことがありますか?

「健康部品でなく健康ソリューション」を提供することも大切ではないでしょうか。これは、単に商品だけを提供するのでなく、運動習慣や食習慣などの生活習慣の改善も同時に提案し、本質的な解決を目指す考え方です。こうした健康ソリューションは1社単独で難しいようならば、他企業との提携や協力関係を結んで実施することも重要になります。 さらに、「日常生活にいかに落とせるか」ということも、見逃し気味な点だと思います。健康のためとはいえ、新たな行動を起こさせるのは結構大変なことです。花王の「ヘルシア」は、お茶を飲むという日常行為の中で健康を訴求したからこそヒットしたと思うのです。 最後に、「健康以外の要素」を提供することも大切です。その端的な例が歯磨き粉です。歯磨きは虫歯予防のために行いますが、多くの人が歯を磨くのは、虫歯予防の機能にプラスして、爽快感が得られるというのが大きいと思います。本来機能に加え、気分をリフレッシュすることでリピート率を上げています。つまり、健康プラス「爽・快」といったものがキーワードになると考えます。

-健康をどうとらえるかという確固とした理念の下で、上記のような点がポイントになるわけですね。

そうですね。それと同時に、短いスパンでは健康にはなれないということも、伝えていかなくてはなりません。健康分野では特に継続してこそ、効果があるものが多いからです。

-貴重なビジネスポイントのご指摘、ありがとうございました。

■取材を終えて

今回は長年のコンサルティングのご経験から、貴重な示唆をいただきました。 改めて自社の定義する(目指す)健康とは何で、生活者のどのような状態を目指しているか、まずはその明確化の重要性を感じます。
今回のビジネスキーワード
生活者基点のアイデアを出すしくみ、健康の捉え方、健康部品でなく健康ソリューション、日常生活への落とし込み、健康以外の爽・快
[ 取材日:2006年8月18日 ] [ インタビュアー:脇本和洋 ]