キーパーソンに聞く

2018.01.12号 しごと総研の山田夏子さんにグラフィックファシリテーションの可能性について伺った!

111.jpg

2018.1.12
一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事
株式会社しごと総合研究所 代表取締役
クリエイティブファシリテーター/システムコーチ
山田 夏子 氏

IoT時代が進化の速度をどんどんアップしていく中で、我々の働き方やアウトプットの質が今まで以上に求められるようになっていくと誰もが感じていると思います。
どの会社組織でも実施しているミーティングの成果を、よりフルーツフルにしてくれるグラフィックファシリテーション(GF)というメソッドに最近スポットがあたり始めています。ミーティングの進行コンテンツをその場で絵にして記録していくワークです。
 
自らがグラフィックファシリテーターであり、その育成でも活躍している山田夏子さんに今後の可能性について伺いました。

プロフィール
山田 夏子[やまだ なつこ]
武蔵野美術大学造形学部卒業。株式会社バンタンにてスクールディレクター、各校館長を歴任。人事部教育責任者として社員、講師教育、キャリアカウンセリング、人事制度改革に従事。独立後、株式会社しごと総合研究所を設立。教育現場での経験から、人と人との関係性が個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを実感し、体験学習やシステムコーチングを軸とした組織開発やチームビルディング事業を展開。また、関係性を見える化するクレイワークやグラフィックファシリテーションを得意とし、企業・組織のチームビルディングから、教育現場でのクラスづくりや教員同士の関係作り、地域での住民の関係作り等、様々な現場で活動。2児の母としても未来を担う子ども達に豊かな関係性のある社会を残せるよう日々奮闘中。
★NHK総合テレビ 週刊ニュース深読み(毎週土曜朝8:15-9:28)にグラフィック・レコーダーとして毎週出演しています。
 

山田さんとグラフィックファシリテーションとの出会いについて教えてください。


うーーーん。出会ってないんですよね、、これが。。。

 

え、、どういうことですか?


そもそも、私がある企業の会議に呼ばれて自分が通常の(絵を描かない)ファシリテーションをしていた時に、ファシリテーターとして場に関われば関わるほど、参加者がお休みしていくというか、主体的にならない(参加者の心の声:まぁ、プロのファシリテーターが来てんだから、気の利いた質問してくれるよね…)。
最終的に、なんとか自分のリーダーシップで一本背負して、場をまとめたり前に進めるものの、それが本当にこの企業のその先の目的に繋がっていくのだろうか??という疑問が湧きました。
 
これをどう解決したらいいかな??
 
どうやったら参加者が主体的になってくれるのかな??と思った時に「今日は、私は“人”として場には介入しません。皆さんが言うことを絵と文字で描いていくだけにしますね」と言って、参加者に背を向けて絵を描き始めたのがきっかけです。
 
いけてない話をいけてる風には描かないので、シーンとしていれば、シーンとした感じを描いて待つのみ。その場の状況や雰囲気を鏡のように描くことで、絵が参加者に介入し、参加者が重い腰を上げて一人一人が少しづつリーダーシップを発揮して話し始めてくれるようになりました。
 
出会いとしたら、これが私の最初のグラフィックファシリテーションとの出会いだったと思います。


なるほど。それでは、どんなクライアントでどのような使われ方がありますか?可能な範囲で教えてください。


様々な企業さまでの、中長期計画や新規事業計画、経営戦略会議的なものに入ることがあれば、働き方改革や女性活躍推進など、組織開発に関わる会議や対話の場に入ることが多いです。
 
会議に参加していなかった社員の方々をのちに巻き込めるようグラフィックが橋渡しの役割を果たすことも多いです。
 
また、私が企業の会議でグラフィックファシリテーションを行うだけでなく、グラフィックファシリテーションのスキル自体を社員が学び、通常の会議で活用できるよう社内研修に導入してくださる企業も増えてきました。
 
国産企業さま(メーカーが多いです)が、自分達の会社のエッセンスを見える化できるように、スキル習得を表向きの目的として、裏目的では大きな組織風土の改革をトップダウンからボトムアップへ変革実践していこうという企業さまも増えています。
 
現在の「論理」と「理性」だけでは勝てない時代の中で、社員に直感的な感性と0から1を生み出す力を育み、この変化のめまぐるしい時代を生き抜こうとする企業の意識にグラフィックファシリテーションは、とても身近に取り組みやすい形で導入できるのだろうと思います。
デザイン思考やシナリオプランニングなどとのコラボレーションも増えてきているのはそのせいかなと思います。


112.jpg


現在の日本企業の多くが抱えている課題周辺にいるということですね。さて、グラフィックファシリテーターとしてどんな気づきやクライアント側の課題が見えますか?


一言で言うと、焦っている企業さまが多いということ。
 
何をどうしていいかはわからないんだけど、このままじゃまずいよね、、、しかも組織の体質がこうさせちゃってるよね。。。ということが、皆さんの対話から見える化されることが非常に多いです(まずこの事実を組織のトップが受け入れられるかが大事)。
 
また、合意的現実レベルのことを感情のレベルや感覚のレベルに潜らずに(問題の本質と向き合わずに)合意的現実レベルのみで、仕組みで解決しようとする傾向も多いのですが、そうすればそうするほど、体質の泥沼にはまるというか。。。
 
日本人の「仕事」に対する「我慢」が限界にきているような気がします。
 
これはシグナルとして色々事件や事故になって出てきていますが、これをまた「コンプライアンス」という仕組みで抑圧しても、余計に火に油を注ぐというか。。。
根本的に、自分達の会社の体質と向き合って、この痛みと向き合う必要があるし、それには社内の多くのメンバーとの対話が必要なのだと思います。
 

養成講座はどんな方が受講されるのですか?また、今後の展開について教えてください。


養成講座には、本当に様々な方々がいらしてくださいます。7割くらいが会社員の方々で、ご自身の組織の課題解決に使っていきたいという方々、他にはコンサルタントの方や人材開発、研修講師の方、学校の先生やケアワーカーの方々、行政の方も多いです。珍しいところですと弁護士さん、お医者さんもいらっしゃいました。
 
どんな方々にとっても、対話のメカニズムを見える化していくという意味では、自分達の身近な議論や話し合いをどうにかしたいと考える方々が多くいらっしゃいます。
 
2017年9月に行われた障害者芸術支援フォーラムにてグラフィックファシリテーションを行ったのですが、その際、聴覚障害の方々が私が描くちょうど前のエリアに集まって座ってくださっていて、私の横には手話の方もいたり、フォーラムの会話は同時進行で活字に起こされスクリーンに映ってもいました。
フォーラム終了後、聴覚障害の方々が私の元に駆け寄ってきてくださり、手話や活字よりも、あなたのグラフィックで本当に話がよくわかったと。
 
どうしても言語情報だけだと臨場感や感情が伝わらず「でっ??」となりがちなところ、あなたのグラフィックで、どんな感情がこの場に漂っているのか、何が言いたいのかがよくわかったと言ってくださいました。
 
これは、日本語が「ハイコンテキスト」であることにも理由があると思うのですが、この言語だけではなく声のトーンに感情が乗って意味合いが全然変わってくる。ここを抑えていくことが大事だと考えています。
 
このことにつながるように、
現在、学芸大学のオフィシャルNPOの方々と協働で、公教育の先生方のアクティブラーニングの基礎筋力をつける目的や、教室運営&学級マネージメントとしてグラフィックファシリテーションを使って生徒達の声を見える化していこうと研究を始めています。
 
今までの教師からの一方的な教え方ではなく、生徒達の考える力や対話する力を育むためには、思っていることや感じていることを引き出すスキルが先生達には必要になります。
 
結局、現在企業に入って、トップダウンの企業体質をボトムアップに変革させる流れと同じことが大切とされてきているのです。
 
もうひとつ、
昨年は、製薬会社さんの旗揚げの元、先天性代謝異常の希少疾患の新薬の開発の為に、患者さんやご家族の心の痛みや苦悩を時系列で絵にしていく「ペイシェントジャーニーマップ」を作るという日本で最初の試みに携わせてもらいました。
 
海外でペイシェントジャーニーマップというと、どちらかというと新薬のマーケティングのために作られる、症状とそれに対する対処を追うケースが多いのですが、今回は、そもそも薬を開発するために製薬会社が情報収集から学んでいることと、患者さんから伺う事実があまりにも違うことに、このままで本当に薬を使う患者さんにとって必要なものが作れるのか??という製薬会社さんの疑問から生まれた活動です。
 
もっともっと患者さんやその家族に寄り添った薬を作り、処方する医師との理解も深めるための、心の痛みや気持ちの共有のための地図となるように「ペイシェントジャーニーマップ」という形で、患者さんやご家族の心の痛みや苦悩を時系列で絵にしていきました。
その後、この活動が好評を得て、他の障害者の方々の研究にも展開してきています。
 
社会の大きな変革の中で、今まで「ものづくり」で頑張ってきた日本の企業の、ものづくりの奥で培われてきた「目に見えないその会社のエッセンス」をもう一度見える化し、自覚し、焦りや迷いが少しでもなくなる安心した職場や環境にしていきたいと思っています。




編集後記:
とってもフレンドリーに語ってくれた山田夏子さん。グラフィックファシリテーションはコメントにもあるように「目に見えないその会社のエッセンス」をもう一度見える化する新たな「言語」なのかもしれませんね。ますます期待したい山田夏子さんとしごと総研ですね!!!
 
インタビュアー:大川耕平

[取材日:2018年1月11日]

 
 
 
 
HBWメールマガジンご登録はこちら
一覧に戻る
トップに
戻る