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2014.8.20
株式会社創新社 
代表取締役 三角 英海 氏

1978年の創業以来、医療・健康関連分野の情報発信に特化して事業展開してきた同社は、医師をはじめ専門分野スタッフとの人脈、幅広い業界ネットワークを基盤に、彼らならではの多様な情報発信により注目されている。
 
今後増々拡大していくであろう医療・健康情報分野の情報発信に関する見通しを三角社長に伺った。
プロフィール
三角 英海[みかど ひでみ]
2006年早稲田大学大学院卒。同年株式会社NTTデータ入社。製造流通分野のシステム開発、製薬業界VANの運用・新規サービス開発に従事。退職後、株式会社創新社にて、医療・健康マーケティング、医療・健康プロモーションの業務に従事し、2014年4月に代表取締役に就任。

療健康業界コミュニケーションエージェントの草分けとして

今年37期を迎えるという創新社は、設立当時珍しかった医薬品・医療機器のコミュニケーション戦略立案やツール制作を中心に事業を始めた。その後、同領域へ大手広告代理店の参入が進む中、量から質へ、より医療スタッフ、患者さんに近い領域へシフトチェンジするのだった。
 
「誰にでもできることはやらない。長年、培ってきた経験やネットワークが活かせる、患者さんが知りたかったこと、医療スタッフに求められるものに応えられる資材の開発、専門メディアの企画・運営に取り組んできました」と三角さんは言う。

現在の事業構成は
1)一般生活者や病気に悩む人、予防したい人に対する健康づくりに役立つ情報の発信、啓発事業と関連企業との連携事業
2)医療関係者、保健指導関係者など専門職に対する情報提供活動と関連企業との連携事業
3)学会、研究会などの学術団体や、関連団体の運営と関連企業との連携事業
4)日本医療・健康情報研究所の運営(メディア運営、医療・健康データベースの運用)

この4つのラインでの活動があるから業界全体の動きの把握から各顧客接点現場における課題を肌で感じることができるのだと言う。そして三角さんはこう続けた。
 
「医療・健康業界の不(不満、不安、情報不足等)を取り除くソリューション提案が我々の仕事です」
 
2008年に始まった、特定健診事業・特定保健指導事業を取り巻く環境の中で専門職が自分の専門性を充分に活かしていくための情報不足を解消した「保健指導リソースガイド」というウェブサイトもそのひとつだ。保健指導に関わる関係者で同サイトを知らない人はまずいないという存在感に成長した。
 

時代のメディアは変われど、コンテンツが鍵を握る!

昨今「モバイルヘルス」「ヘルス2.0」「ビッグデータ」など健康医療を取り巻くICT環境の進化発展は目覚ましく、このムーブメントをどう捉えているかを質問してみた。
 
「スゴい時代になっていきますね。技術の進歩にワクワクしています。ただ、現状は、流行の言葉や新技術が先行していて、本当の意味でのイノベーションはこれからだと感じています。Apple のHealth KitやGoogle Fitなどのプラットフォームにより、スマホで気軽に健康データを扱えるようになります。しかし、類似のデータ管理システムは既に多く存在しており、まだ私(利用者目線で)が使いたいと思うものは限られています。ここをどうビジネスモデルを含め次のステップに進めるかが課題です」
 
「餅屋は餅屋です。システムのプロはたくさんいますが、この領域で中身(経験、コンテンツ、メディア、人脈等)を持っている企業は多くありません。技術からのアプローチだけでなく、患者さんなど利用者のニーズを理解したサービスを様々な企業と連携していく中で活かしていきたい」とのこと。
 
実は同社はここ20年間で糖尿病の疾病啓発・情報コンテンツ資材(パンフレット・リーフレット・小冊子)を4,800万冊もつくり続けてきたのだという。この資材開発を通したコミュニケーションデザインは、インターネット通信環境が無い時代から紡いできた活動だ。
 
今年同社では「糖尿病3分間ラーニング」という糖尿病患者さんがマスターしておきたい糖尿病の知識をテーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習動画の配信をスタートした。
 
「今でも紙の資材が一番な患者さんはたくさんいます。しかし、紙のテキストで満足していない、テキストにアクセスできない患者さんもたくさんおり、そういった患者さんをサポートしたい医療従事者の方もたくさんおります。そのときにこんな動画があったら、みんなの“不”を取り除けるな」とアプローチした企画だそうだ。
 
活用場所としては、病院で開催する糖尿病教室や教育入院の現場、待合室での院内ビジョンにおける配信、診察中のタブレットによる指導サポート、その日の診療内容に合わせてスマホやタブレットで復習、薬局における処方薬に合わせた学習、他にも保健指導の現場など多岐にわたる。
 
既に140以上の医療施設からの利用申請を受けており、看護系の大学の授業などでも活用されている。動画の再生回数はこの3ヶ月で10万回を超えた。
 
患者とのコミュニケーション現場で何が必要かを徹底的に資材として追求してきた背景があってデジタルメディアを活用した今回のコンテンツ開発となったのだと思う。三角さんは今回の企画を「啓発フリーミアム」と言っていた。つまりこの動画コンテンツ自体は無料だが、これに付属したサービスや製品の開発、また動画コンテンツを使った更なる展開をパートナー企業と進めている。
 
実は、三角さんは2代目だ。別業種、別業界から転進してきたことで、多くのことを学び、また業界の常識が非効率に見える部分もあると言う。それらが全部ソリューションポイントなのだと言う。きっとやってくれるだろう色々な仕掛けを楽しみにしたい。創新社の今後に大注目です!!



取材後記:
三角さんとは数度ミーティングを持った経験もあるのですが、
いつもブレず、発想豊かで柔軟なナイスガイです!
 
 
 
インタビュアー:大川耕平
 
[取材日:2014年8月5日]