HBW 2017~

2016.10.18号 [海外注目企業の継続支援編]メンタルヘルス不調者をICTと人で見守る「Ginger.io」

健康ビジネス問題解決サポートメディアHealthBizWatch
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[海外注目企業の継続支援編]2016年10月18日号
          ≫≫≫Author:脇本和洋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
こんにちは。脇本です。
 
日本のうつ病患者は、110万人とも言われ、年々増加しています。
自分の家族・友人・同僚がうつ病にかかり、うつ病を身近に感じている方も多いことでしょう。
 
うつ病患者は、医師から薬を処方され、臨床心理士から定期的にアドバイスを受けるも、日常的には孤独感を感じることが多く、それは当たり前のこととされていました。
 
そんな中、
 
・「Be Entirely You(=その人の状態に合わせていつも寄り添う)」
 
という、新しい価値を創造し、人とICTを使ってサービスを提供するベンチャー企業があります。
 
それが今回紹介する「Ginger.io(ジンジャー・アイオー)」です。
 
 
 
■□■□■□■ I N D E X ■□■□■□■
 
【1】特集:海外注目企業の継続支援編
---メンタルヘルス不調者をICTと人で見守る「Ginger.io」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「コミュニケーションの本質」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 IoTオフィス、海外 リアルタイムバイオセンサーなど、8本
 
─────────────────────
 
◆◇◆---------
【1】特集:海外注目企業の継続支援編
◆◇◆---------
 
テーマ:メンタルヘルス不調者をICTと人で見守る「Ginger.io」
 
-----------------------------------
「Ginger.io(ジンジャー・アイオー)」について
-----------------------------------
 
■運営企業名:Ginger.io, Inc
https://ginger.io/
 
■Ginger.ioの由来:共同創設者のKaran Singhが考案した。Karan氏が幼いころ、具合が悪いときに、病気になって寝込まないようにと母親がショウガ(Ginger)と蜂蜜を混ぜたものを飲ませてくれた。そのように、Karan氏にとって“病気を予防する”イメージのあったショウガ(Ginger)とコンピューター用語でInputとOutputを意味するIOを組み合わせ、Ginger.ioと命名した。
 
■設立:2011年(サービス開始は2012年)
 
■実績(以下のアワードを受賞)
・米国ビジネス誌『Fast Company』が発表した“The World's Top 10 Most Innovative Companies In Health Care 2014”(ヘルスケア産業における世界で最も革新的な10社 2014)に選ばれた
・The HX360 Innovation Challengeのデジタルヘルス・カンパニー部門で最優秀企業に選ばれた
 
■経営メンバー:共同創設者でCEOのAnmol Madan氏は医学博士。その他のメンバーにも医学博士、医師、公衆衛生学修士など、医学関連の有資格者が多い。メンタルヘルス疾患に苦しむ人と数多く接してきている。
 
※同社はB-B(企業)を中心にサービス提供しているので、本サイトからの情報は限られます。以下の分析情報はスポルツの推測も含みます。
 
 
-----------------------------------
「Ginger.io(ジンジャー・アイオー)」の事業コンセプト
-----------------------------------
 
それではまず、事業コンセプトを見ましょう。
 
■ターゲット
・ストレスや不安などによる情緒不安感を感じる人(うつ病の人)
 
■提供価値
・Be Entirely You(=その人の状態に合わせていつも寄り添う)と一言で表現しています。心の状態がいい時も悪い時も、長く寄り添ってくれるという意味合いです。
 
■サービス
・Ginger Care
うつ状態が比較的よい時:ヘルスコーチが日々寄り添う
うつ状態が悪い時:セラピストや臨床心理士がカウンセリングを行う
https://ginger.io/enterprise/
 
■収益
・B-B(企業)に対してサービスを提供し収益をあげる
 
 
【解説】
 
事業コンセプトで注目したいのは、提供価値です。
 
一時的にメンタル状態を良くするといった価値は今までにもありましたが、「Be Entirely You(=その人の状態に合わせていつも寄り添う)」という価値までは踏み込めませんでした。
 
つまり、
 
「新しい価値」を創造しています。
 
今まで分析してきた成功事例(売上0→100億以上を作り上げ、継続的ビジネスを行っている事例)の多くには、この「新しい価値の創造」があります。
 
 
-----------------------------------
サービスの流れ
-----------------------------------
 
では次に、具体的なサービス内容を見ましょう。
 
■ステップ1.専用アプリで申込み、体調、心身のウェルビーイング状態などのアセスメントを受ける
 
■ステップ2.マッチするヘルスコーチが紹介される。電話またはチャットでコーチによるインタビューがあり、具体的なケアプランをデザインしてもらう
 
■ステップ3.専用アプリを開くと自動的にコーチと接続可能モードになる。午前10時から午後7時までの時間帯なら担当コーチといつでもチャットが可能。それ以外の時間帯は別のコーチとチャットするか、担当コーチにメッセージを残せる。
患者とコーチは、日々のチャットを通し、その日の気分を共有する。さらに日々の基本的な生活習慣(規則正しい生活、他人と話すこと、体を動かすことなど)が実践できているかをアプリのデータを通じて共有する。コーチは、基本的な生活習慣を身に着ける支援を行う。
 
■ステップ4.ヘルスコーチが患者の状態が悪いと判断した場合、セラピストや臨床心理士につなぎ、ビデオセッションを行う
 
【セッション(例)】
・一回50分のビデオ通話。
・患者の話を聞き、現在の症状の引き金となる過去のトラウマがあるかといった、原因の特定や感情のコントロールに関するセラピーを行う。
・認知行動療法(CBT)、弁証的行動療法(DBT)といった手法でセラピーを行う。
・最初の月は初回セッションとフォローアップ用のセッションの合計2回行われる。その後は毎月2回のフォローアップ用のセッションで経過観察していく。
 
 
-----------------------------------
ヘルスコーチのすること
-----------------------------------
 
うつ病患者にとって、日々自分を支援してくれる人がそばにいるということは、心強いものです。ただ、提供者側として、専門家であるセラピストや臨床心理士を数多く雇い、日々寄り添うことには、コストがかかります。
 
そこで、同社が行ったのが「ヘルスコーチ」という寄り添い選任のスタッフの育成です。
 
●ヘルスコーチがすること
 
・主にうつ状態が比較的良好なときに対応をするスタッフです
 
・ケアプランの全体デザインをします(おそらくは、病院や臨床心理士、家族との関係など、孤立せずサポートを受ける全体像をつくること)
 
・日々のチャットを通し、その日の気分を知ります
 
・うつ病の対策として有効な基本的生活習慣(規則正しい生活、他人と話すこと、体を動かすこと)が行われているかを知るため、行動データ(スマホアプリで睡眠や会話・メールの量、移動した量など)をコーチが共有できるしくみがあります。行動データが好ましくなければ、患者に早めに様子を聞きます
 
・特に患者の状態が好ましくないと判断した場合、早めに臨床心理士やセラピストにつなぎます(引き継ぐ際には、患者に悪化と感じさせない十分な配慮があるものと予想されます)
 
もちろんヘルスコーチは認知行動療法の基礎知識に関するトレーニングを受けていますが、セラピストや臨床心理士の資格は保有していないため、個々の悩みには深く回答はしません。
 
うつ状態が比較的安定している時には、基本的な生活習慣(規則正しい生活、他人と話すこと、体を動かすこと)を身につけてもらうためのコーチ役であり、患者に何かあった時には、臨床心理士につなげてもらえるコーディネーター役でもあるわけです。
 
患者にとって、自分の様子、基本的な生活習慣を長期間「見守られ」ている安心感があるとともに、運営企業側も常に臨床心理士といった専門家を数多く準備しなくてよいという形を「ICTとヘルスコーチ」を使って考えだしたわけです。
 
 
-----------------------------------
「Ginger.io(ジンジャー・アイオー)」にみる継続支援のポイント
-----------------------------------
 
同サービスは、うつ病患者の人が長く病気を管理していくためにどんな点を工夫して継続支援をしていると言えるでしょうか。
 
今回もスポルツの考案した「継続ドライバ」
http://www.healthbizwatch.com/project_note/pickup/post_475.html
に対応させてみましょう。
 
 
●ヘルスコミュニケーション
専門性のあるコミュニケーションにより継続を支援すること。本事例では、認知行動療法の基本的な知識を身に着けたコーチがICT(スマホデータ)を活用し、見守ってくれます。また、いざという時はセラピストや臨床心理士が対応します。
 
●パーソナライズ
カスタマイズにより健康行動を自分ゴト化し、継続を支援すること。本事例では、ヘルスコーチは一人ひとりに合った基本的生活習慣を見つけるための支援をしていると予想されます。
 
●モニタリング
健康行動・結果の記録により自己効力感を上げ、継続を支援すること。本事例では、スマホアプリを用いて、患者の睡眠・他人との会話・運動量などの記録がとられ、その記録をコーチが見守ってくれます。
 
 
【解説】
継続ドライバの使い方として、一つの継続ドライバを中核にすえ、いくつかを絡ませていくことがあります。本事例の場合、ヘルスコミュニケーションを中核にしてパーソナライズ、モニタリングを絡ませています。基本に忠実な事例といってよいでしょう。
 
 
-----------------------------------
「ICT(アプリ)+人」による継続支援に注目したい
-----------------------------------
 
今回の事例いかがでしたか。
 
・「Be Entirely You(=その人の状態に合わせていつも寄り添う)」という新しい価値を創造している。
 
・薬でなく、「基本的な生活習慣」に着目し、そこにICTと人を絡ませている
 
・対応する人は専門家ではなく、見守ることを選任としたスタッフである
 
といった特徴があります。
 
うつ病といえば、まず認知行動療法といった「物事の考え方」を修正していくことに注目が集まります。本事例は、基本的な生活習慣を身に着けることに注目し、ヘルスコーチが継続支援しています。
 
また、近年、「ICT(アプリ)+人」による継続支援を行う事例が増えてきていますが、運営者側としてどこまで1対1で専門家を用意するか、運営者側の負担がありました。
 
本事例では、「ヘルスコーチ」という「寄り添い」に専任した人を組み込むことで、運営の負担を減らしています。
 
今後、このようなICTと人の組み合わせは、健康領域に限らず、医療や介護の領域に広がっていくと予想しています。
 
 
【今号のまとめ】
 
□新しい価値の創造が企画の原点。驚きがあり、聞いただけでほしいと感じてもらう価値を開発しなくてはいけない。
 
□今後のサービス提供は「ICTと人」の組み合わせが増える。早くこのパターンで成功したい。
 
□「寄り添い感」をつくることができれば、「人」は必ずしも高度な知識をもつ専門家でなくてよい。
 
 
 
 
<ご案内1>
本メルマガ内でも紹介した「継続ドライバ」を学び、使えるようになることを目標にしたセミナー(ワークショップ)のご案内です。
 
●セミナー:ヘルスケアにおける「継続支援」集中講座
http://www.ssk21.co.jp/seminar/S_16311.html
2016年11月20日(木) 14:00-18:00
 
●ワークショップ:継続ドライバ活用ワークショップ
http://hbw-store.com/seminar/keizoku061130.html
2016年11月30日(水)15:00-18:30
 
 
<ご案内2>
継続支援の中でも、本事例のような人とICTを使ったヘルスコーチは、今後注目したいですね。スポルツで、この分野に特化し研究、応用しているディレクターが里見将史です。企画・導入に関しての支援をしています。
 
●人を感じる、人が寄り添うヘルスケアサービス「ヘルスコーチング」
http://hbw-store.com/service/keizoku1502-137.html
 
 
 
◆◇◆---------
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
◆◇◆---------
 
≫≫≫「コミュニケーションの本質」
 
コミュニケーションとは情報を伝えることではなく、情報の意味も含めて共有することです!
 
 
◆◇◆---------
【3】今週の注目デジクリップ! <8クリップ>
◆◇◆---------
 
[1]大日本印刷、自宅で手軽に受けられる“歯ぐきの健康 警戒レベル”検査サービス「DNPお口健康ナビ」を開始
http://www.dnp.co.jp/news/10127869_2482.html
検査キットのチューブで採取した唾液とアンケート記入票を郵送するだけで“歯ぐきの健康 警戒レベル”の検査結果のレポートと口腔ケアのガイドブックが自宅に届く郵送型検査サービス。(2016/10/06)
 
[2]ジェイアイエヌ、「JINS MEME OFFICE」をリニューアル【PDF】
http://pdf.irpocket.com/C3046/xAmX/AaK6/M7aq.pdf
http://jin-co.com/
JINS MEME OFFICEは仕事や勉強など、日常生活の中で一つの作業に没頭したい時に自身の集中度をリアルタイムに可視化する集中力計測アプリ。ユーザーの声に応え、これまで以上に集中力を高め生産性・パフォーマンスの向上をサポートする新機能を追加。(2016/10/06)
 
[3]オリックスとソフトバンク、「IoTオフィス体験キャンペーン」を実施
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20161005_01/
IoTオフィスの実現に向けて、オリックスの「クロスオフィス」とソフトバンクの「+Style」のコラボ企画。キャンペーンでは、座るだけでストレス状態をチェックできる、ダイキン工業の「エアリトモ」技術を搭載した座布団を世界で初めて体験できる。(2016/10/05)
 
[4]女性のカラダ・ミカタ宣言コンソーシアム、「女性のカラダ・ミカタ宣言」提供『自分のカラダを見直そう 妊活食レッスン』を開催
http://www.d-healthcare.co.jp/newsrelease/20161006-2/
開催日は、2016年11月17日(木)、12月2日(金)、2017年1月25日(水)。定員は各回35名。生理周期や妊活に関する基礎知識の講座と、妊活に良いバランスのとれた食事を実践する調理レッスン。
 
[5]矢野経済研究所、「2016年版 健康・機能性食品素材市場の実態と展望」を発刊
http://www.yano.co.jp/market_reports/C58110000
高齢者の増加、健康・疾病予防意識の向上、美容・アンチエイジング意識の高まりなどを背景に、機能性を付加した食品の需要が堅調に推移している、など。
 
[6]体内の抗酸化レベルが一目でわかる!世界初のリアルタイムバイオセンサー『One X』
http://mhealthwatch.jp/global/news20161006-2
体内の抗酸化レベルをその場で測定する世界初のリアルタイムバイオセンサー「One X」がIndiegogoで支援募集中。「One X」が計測するのは、体内のカロチノイドレベル。抗酸化の王様と呼ばれ、活性酸素を抑制する他、老化やがんの発生、アレルギーに対しても効果が期待できる成分。(2016/10/06)
 
[7]『HTC Vive』で約6.8キロの減量に成功した“フィットネスガイ”、VRコンテンツスタジオを設立
http://mhealthwatch.jp/global/news20161006-3
自身の経験を元にエクササイズに焦点を当てたVRコンテンツの開発を行う「ATG Studios」を設立。「ATG Studios」は、プレイヤの心拍数を増加させ本当の運動のように感じることなく、あくまで楽しさを感じつつ良好なトレーニングを提供するように設計されたHTC Vive向けVRゲームを作成していく。(2016/10/06)
 
[8]フィットネスバンド『Microsoft Band』、オンラインストアから消える
http://mhealthwatch.jp/global/news20161011-2
Microsoftがフィットネスバンド製品から撤退する公算が強まっている。その最新の兆候は、Microsoft Storeから「Microsoft Band」製品に関する記述が消えたこと。(2016/10/11)
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 
HBWメールマガジンご登録はこちら
一覧に戻る
トップに
戻る