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[海外事例にみる企画ヒント編]2018年11月20日号
   ≫≫≫Author:脇本 和洋
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こんにちは。脇本和洋です。
 
[海外事例にみる企画ヒント編]では、米国での高齢者向け健康サービスを数多く紹介しています。今号では「地域の高齢者による訪問型コミュニケーションプログラム」を提供する「AgeWell Global」という事例を紹介します。
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
---地域の高齢者による訪問型コミュニケーションプログラム「AgeWell Global」
 
【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
---「さらば商圏!」
 
【3】今週の注目デジクリップ!
---国内 スマートスリープトラッカー、海外 AI動向など、9本
 
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【1】特集:海外事例にみる企画ヒント編
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<テーマ>
地域の高齢者による訪問型コミュニケーションプログラム「AgeWell Global」
 
 
今年の[海外事例にみる企画ヒント編]では、高齢者向け健康ビジネスを2回特集しました。その中では、「魅力的価値」が重要であると書きました。そこで今回は、価値づくりのヒントとして「AgeWell Global」という事例を紹介します。
 
・バックナンバー
[海外事例にみる企画ヒント編]
高齢者向け健康ビジネス(ベンチャー)を紹介(2018年5月、6月)
 
 
【紹介切り口】
 
1.事業概要
2.サービス内容
3.双方にメリットある価値の提供がポイント
 
 
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1.事業概要
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■企業名:AgeWell Global
 
■設立:2013年
 
■サービス概要
高齢者による高齢者(ピアツーピア)の見守りサービス。地域の高齢者を「エイジウェルズ(AgeWells)」と呼ぶ専門スタッフとして雇用・教育し、エイジウェルズが地域の高齢者を見守ります。
 
■設立背景
同社は2001年に南アフリカで発足した、HIVに感染した女性や母親のための教育/支援プログラム「Mothers2mothers」に端を発しています。
 
Mothers2mothersでは、HIV感染者である女性を雇用し、トレーニングを行い、メンター・マザーとしてHIV患者女性を支援するピアツーピアモデル(体験者が教えるモデル)を成功させ、2011年には9つのアフリカ諸国で実施されています。
 
同社はこうした成功モデルを高齢者福祉という分野に応用し、高齢者が「メンター(経験者)」として他の高齢者の健康と福祉を見守るというピアツーピアモデルに取り組むようになりました。
 
■顧客ターゲット
・現在のところは、課金相手となる顧客ターゲットはBtoB(医療機関、行政や地域コミュニティ)となっており、直接生活者への提供はしていません
 
■実績:
・ニューヨーク市経済開発公社(New York City Economic Development Corporation)とHealth2.0共催のDigital Health Marketplaceで受賞
・世界保健機関(WHO)のエイジングをテーマにした報告書2015年版の中で参考事例として取り上げられています
 
 
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2.サービス内容
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サービスは2つあります。
 
1.Hospital Discharge Program:
退院後の高齢者(一人暮らしが多い)を定期訪問するプログラム。メンターとなる「エイジウェルズ」は、訪問される高齢者に合わせて同じ疾患をもつ人が選ばれます。退院間近の患者と会い、親しくなりながら体調を確認します。退院後の定期訪問へとつなげて経過を確認し、再入院のリスクを減らします。
 
2.COMMUNITY-BASED PROGRAM:
慢性疾患患者(一人暮らしが多い)で医療費が多額になっている高齢者を定期訪問するプログラム。メンターとなるエイジウェルズは、慢性疾患の種類(糖尿病など)に合わせて同じ疾患をもつ人が選ばれます。定期訪問により慢性疾患の症状が進まないようにします。
 
 
メンターであるエイジウェルズは訪問すると、以下3つのことを行います。
 
■人付き合いの促進(Companionship):
一人暮らしの人を中心に、会話することで地域社会とのつながりを持たせます。
 
■ウェルビーイングの見守り:
健康状態や精神状態、環境といった高齢者の状況を判定できる専用アプリを使い医学的、社会的な健康状態の簡易チェックをします。
 
■早期介入:
ウェルビーイングの見守りで問題があると判定された場合、医療機関や福祉サービス機関などに連絡することで早期介入を促します。たとえば、健康状態に問題があるなら、医療機関に連絡し早期介入してもらうことで入院回数を減らします。
 
・参考>紹介動画URL(エイジウェルズのトレーニングの様子)
 
 
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3.双方にメリットある価値の提供がポイント
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訪問を受ける高齢者にとっての価値、メンターである「エイジウェルズ」にとっての価値を整理すると以下のようになるでしょう。
 
【訪問される高齢者の価値】
・体験者/経験者が寄り添ってくれるので安心できる
・一人暮らしでも会話が増え、社会性があがることで元気になる
・簡易健康チェックで、自分の気づかない体調変化に気づき、新たな病状に初期段階で気づける
 
【メンターである「エイジウェルズ」にとっての価値】
・自分の体験を人に教えることで自分自身も元気になる
・自分の経験が役に立つ
・自然と体を動かすこと(訪問すること)で健康を維持できる
 
こうした価値の多くは、人間の欲求をついたものであり、日本での高齢者向け健康サービスの価値としてヒントとなりそうです。
 
もちろん実際に日本で類似サービスを開発する場合には、日本の高齢者の状況に合わせ、どんな高齢者をターゲットにし、どんな人をメンターとし、サービスをどうアレンジするかといったことを検討する必要があります。
 
【脇本和洋】
 
 
【高齢者向け健康ビジネスがわかる社内研修のお知らせ】
 
今回紹介した事例も含め、MCI(認知症予防)、社会性をあげることなどをテーマに、幅広く国内海外事例を紹介します。そのエッセンスを学び、今後の企画のヒントにしていただくものです。ご興味のある方はお問い合わせください。
 
 
 
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【2】健康ビジネスの現場で使えるキーワード
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≫≫≫「さらば商圏!」
 
デジタルエコノミー進化で物理的な商圏が意味を持たなくなりつつあります。ライフスタイルや価値観の共有が新たな経済圏になっていきます。このシフト現象への対応をあなたのビジネスは開始していますか?
 
 
 
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【3】今週の注目デジクリップ! <9クリップ>
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[1]日経デジタルヘルスより、「体調改善機器」の認定制度が始まる
久保田博南の「医療機器トレンド・ウオッチ」。「体調改善機器」という新たなカテゴリーの認定制度が始まった。薬機法の対象となる「医療機器」とは一線を画すヘルスケア機器群に関わる認定制度。(2018/11/07)
 
[2]ウーマンズラボより、2型糖尿病の徴候は診断の10年以上前から現れる 日本人データを解析
新たに糖尿病や前糖尿病と診断された人たちでは、診断の10年以上も前から空腹時血糖値(FPG)異常やインスリン抵抗性の増大といった糖尿病の徴候がみられることがわかった。(2017/11/07)
 
[3]RIZAP、RIZAPのヘルスケア事業 新たに3自治体へ導入決定、計11自治体に
新しく導入が決定した自治体は、福島県 小野町、只見町、田村市。RIZAPは、積極的に多くの地方自治体に対して連携を推進し、全国の自治体が抱える健康課題の解決へ向けて拡大加速中。(2018/11/08)
 
[4]フランスベッド、国内初「RestOn スマートスリープトラッカー」の取り扱いを開始
マットレスや布団などのシーツの下に設置して使用する睡眠センサー。心拍数や呼吸数、寝返り回数などの睡眠データが記録される。睡眠連動型ライト「Noxスマートスリープライト」も同時に展開。(2018/11/08)
 
[5]花王、身体活動量計を用いて、生活リズムと睡眠の関係を解明
花王は、身体活動量計を活用して、職域(働く)世代の日常生活における身体活動量の変化パターン(生活リズム)と睡眠の関係を解析。その結果、生活リズムが睡眠に関連していることがわかった。(2018/11/09)
 
[6]メディカルチェックスタジオ、「スマート脳ドック」の受診者が1万人を突破
「スマート脳ドック」は、頭部MRI・MRA・頸部MRAの診断が行えるツール。脳血管の破裂リスクとなる脳動脈瘤、脳の血管がつまる脳梗塞、脳腫瘍などを調べることができる。(2018/11/12)
 
[7]ギークス、ITフリーランス向け福利厚生プログラム「フリノベ」、「ユーグレナ・マイヘルス」と提携
ITフリーランス向け福利厚生プログラム「フリノベ」利用者に「ユーグレナ・マイヘルス」の遺伝子解析などを優待料金で提供するサービスを開始。今回の提携により「フリノベ」のサービスラインナップは35種類に拡充。(2018/11/12)
 
[8]『ヘルスケアIT 2019』セミナー 無料講演の申し込みスタート
1月23日(水)14:30-15:15/K会場にて、フジクラで健康経営を進める浅野健一郎氏と弊社渡辺武友にて、海外や他社の事例を交えながら、健康経営、働き方改革を題材としたディスカッションを行う。(2018/11/07)
 
[9]『mHealth Watch』注目ニュース:AIが健康を促進するために使用されている5つのユニークな方法
AIを活用することで、ある程度の期間を前提にしたサービス設計が可能になります。今こそ現場で培ったノウハウをオンラインサービスに活かすときだと思います。そろそろ本気でAIの活用、検討してはいかがでしょうか?(201811/19)
 
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