キーパーソンに聞く

2019.01.25号 なぜ?フィジカル・ステーションが必要なのか?(前編)

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2019.1.25
カイロプラクティック・ドクター
Scapula 株式会社Bond Company 取締役 CTO
Aub株式会社 Co-founder
株式会社トータルリハビリテーション 代表取締役
一般社団法人腸内細菌検査協会 代表理事
友広 隆行 氏

「フィジカル・ステーション」という極めてポテンシャルある構想を提唱されているカイロプラクティック・ドクターの友広さんにその背景やビジョンを伺いました。
 
(前編、後編に分けてお届けします)

プロフィール
友広 隆行[ともひろ たかゆき]
1996年 サンタモニカ大学一般教養学部卒
1999年 カリフォルニア州立大学フラトン校 人体運動学部卒
2002年 ロスアンジェルスドジャース(米メジャーリーグ)トレーナー研修
 
2003年 南カリフォルニア健康科学大学ヘルスセンター インターン
2004年 南カリフォルニア健康科学大学カイロプラクティック科卒
2005年 侍ベアーズ(米独立リーグ)チームドクター兼ヘッドトレーナー
 
2008年 帰国 北原脳神経外科病院にて自由診療科立ち上げ
2012年 (株)トータルリハビリテーション設立 代表取締役 保険適応後のリハビリテーション施設運営
 
2015年 (株)Bond Company設立 取締役 CTO就任 病院から院外薬局の距離で簡単に運動指導が行える施設 Scapula あざみ野荏田店を運営
2015年 元サッカー日本代表の鈴木啓太氏とともにAub(株)設立、トップアスリートの腸内フローラ解析&分析を行い、新しいコンディショニングや健康の指標を提唱している
 
資格:米国及びカリフォルニア州ドクターライセンス(カイロプラクティック)、NATA 認定アスレティックトレーナー(取得後現在は保持していない)
 

とてもユニークなキャリアを積んで来られていると思うのですが、そもそもなんで米国で学ばれたのでしょうか?その問題意識について教えてください


小学校2年生からサッカーをしていたのですが、高校2年の時に膝を怪我した際に、医者からサッカーは諦めるように言われました。プロの選手を目指していた私にはとても衝撃的で、とても悲しい思いをしたことを覚えています。
 
高校卒業後は、2年間ほどいわゆるニートのような生活をしていました。その頃世の中はバブルの時代でアルバイトをしていてもボーナスが出るような時代でした。狭い日本から早く抜け出したい、私自身はいったいこれから何をするべきなのかなって10代後半の自分ながら自問自答する日々で、やはり海外に行こうと思ったんです。
 
海外ならどこでもよかったのですが、映画好きだったのもあって、昔から漠然と憧れていたアメリカに行くことにしました。 アメリカで何かしたいことがあったのかってよく聞かれるのですが、実は特に決めていなかったんです(笑)。英語も全く話せなかったですし、2~3年したら日本に帰って来ようかな、くらいにしか考えていませんでした。
 
渡米後すぐに通った英語学校を卒業後、サンタモニカカレッジに進学しました。ある日、大学のサッカー部の練習に行く機会があって、何気なくサッカーをしていたのですが、なんとそこで自分よりも大きな膝の怪我をしながらサッカーを続けている学生と出会ったんです。
 
私は膝の外側半月板を損傷したのですが、その彼は靭帯を3本、両半月板損傷という大きな怪我を負っていました。私は、その重症を負った選手にプレーができて、なぜ自分にはできないのか疑問に思い、まだインターネットのない時代でしたが私なりに色々と調べました。
 
日本の手術の技術は、整形外科、脳外科、心臓外科に問わず、今も当時も世界の5本の指に入るほどの物なのですが、術後、競技復帰するまでのリハビリテーションに実は格段の違いがありました。
 
日本では当時、大きな怪我の手術後、最前線でのスポーツ復帰は考えられず、ほとんどのケースで手術=引退という図式があったように思います。しかし、アメリカでは競技復帰に向けたリハビリを最重要に手術・治療・リハビリが考えられているということが分かったんです。
 
端的に言うと“リハビリありきでの手術や治療“という概念が根付いていたのです。それでアメリカ式の治療の手順に興味を持って勉強し始めたらいつの間にか16年も経っていました(笑)
 
サンタモニカ大を卒業後、カリフォルニア州でスポーツリハビリテーションを専門に行うアスレティックトレーナーの資格を取ることができる学校を探しました。そこで全米大学サッカー選手権で常にベスト16に入るような強豪である、カリフォルニア州立大学フラトン校に思い切ってサッカーのトライアウトを受けに行ったんです。
約300人いる中で2人しか受からなかったのですが、たまたまそのうちの一人として合格することができました。そこでリハビリを重ねサッカー選手としても再びプレーすることができました。アスレティックトレーナーの国家資格も実は2回も落っこちて、合格まで3回かかりましたが、なんとか無事取得することができました。
 
カリフォルニア州立大を卒業後は近所の高校で働いていました。その学校は金属探知機のゲートをくぐらないと入れないような警備体制の厳しく危険な地域だったんです(笑)しかし、そこではほとんど自分の手で子供達に何もしてあげられませんでした。
 
アメリカの高校はすごく制限が多く、全ての治療に親の許可が必要で、トレーナーの資格だけでは、ほとんど何もすることができなくて、すごく無力感を感じたんです。
そこで自分の身一つ、私の手さえあればいつでもどこでも治療が行えるカイロプラクティックに興味を持つようになったんです。
 
そして、カイロプラクティックを学ぶために南カリフォルニア大学健康科学のドクターコースに進学し、ドクターオブカイロプラクティックを取得しました。在学中に、たまたまドジャースのインターンの仕事を頂く機会に恵まれ、当時プレーされていた野茂さんにもお会いする事ができました。


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卒業した後、4年ほどアメリカで開業して、今のスキャプラやトータルリハビリテーションの原型になっている、カイロプラクティックと運動療法(リハビリ)を中心に診療していました。
 
アメリカにはカイロプラクティック資格(ドクター)を持った人がたくさんいますが、実は学校を無事に卒業して資格を取得できる人はアメリカ人を含めても3割程度だと言われています。苦労した末に資格を取得し、開業までした中で日本に戻ろうと考えた根底には、自分が学んだことを日本で広めたいという気持ちが強くありました。リハビリにおいて当時の日本は20年以上遅れていると言われていたので、それを少しでも取り戻したい、高校時代の私のような思いをした人間が一人でも減るのならと思い、帰国することにしました。
 
現状、日本の医師には(1)手術する、(2)投薬する、という2つの選択肢しかありません。
病院の外来ではまず、来た患者さんを様々な検査を行う事で手術をするかどうかの“ふるい”にかけます。結果1〜2割程度の方は手術、その“ふるい”からこぼれ落ちた残りの8〜9割の方は投薬治療が基本となります。
しかし、私はそこに運動療法という新たな第3の選択肢を増やしたいんです。そのために私は病院から近くの院外薬局ほどの距離に運動療法ができる施設を作りたいとスキャプラを開業しました。
 
現在、日本では国民皆保険制度は年間約40兆円という途方もない額がかかっています。これから迎える世界中に類をみないほどの超高齢化社会に日本は突入していく中で、国民皆保険制度は払う人よりも、使う人(もらう人)の方が多くなるという保険システムそのものの矛盾の中にも突入していきます。
制度そのものが成り立たなくなるわけです。
 
そうなると、システムそのものが崩壊するか、もしくは維持するために払う側の人(すなわち若い世代)の負担がどんどん増えていくしかないのですが、私は予防やアクティブケア(患者自身の能動的、 自主的なアプローチ)も含めてその40兆円をいかに減らすのかをいつも考えています。
 
日本は最高水準の医療を、安価で受けることができる素晴らしい国です。
信じられないかもしれませんが、アメリカではMRIを1度撮影したら10-20万、レントゲン一つでも2-3万、1ヶ月入院したら2,000〜4,000万円ほどの費用が必要になります。
そんな請求が来たらせっかく助かっても明日生きていく事すらできません。だからこそアメリカでは予防医療やリハビリテーションが発展するんだと思います。
 
一方日本は、病気になっても安くて最先端の治療を受けられることが当たり前になっていて、予防にお金をかける方は少ないと思います。そのことが予防に関しては海外に比べて遅れている大きな理由の一つになります。
 
アメリカでは予防を行なう事、リハビリやアクティブケアを行う事は自分を守る術の一つでもあるわけです。
 
そして日本の患者さんの多くはその術を知らないだけなのです。
もう一つ付け加えると、それを教えてくれる施設の存在が日本にはほとんど存在していないのです。
 
私はそれを日本ヘルスケアのブラックホールと呼んでいます。
 
もう少しお話しすると、日本ヘルスケアのブラックホールとは、病院とフィットネスジムや運動施設との乖離の事だとも言えると思います。
 
そもそもスポーツジムは一般の方々には敷居が高い物であるのに加えて、お医者さんに血液検査の結果が悪く、メタボなので運動をした方が良いと言われ、一大決心してジムの門を叩いてみたものの、最近めっきり増えた体重と筋力不足のおかげで、膝や腰に痛みがでてしまい、ジムからだんだん足が遠のいてしまい、最後には全く行かなくなってしまった、というような話をよく聞きますが、これこそが現在の日本のヘルスケアにおける大きな溝になっていると思うんです。
 
さらに付け加えると手術前リハビリや、手術を迷っている方へのケアや指導を行う施設もほとんど存在していません。病院からなるべく近い距離で、例えるなら皆さんが病院に行った後によく使われる院外薬局がある程度の距離で投薬や手術という選択肢だけでない第三の選択肢としての運動療法や痛みを抑えるための治療が行える施設こそがこの溝:ブラックホールを埋める架け橋になるのではないでしょうか?
 
私は安価で高度な医療が受けられる日本の保険制度や仕組みは世界に誇るべき素晴らしいことだと思うので、それを次の世代まで残してあげたいと考えています。そのためにもフィジカルステーションの役割を持つスキャプラのような店舗を増やしていって、医療費の削減、ひいては日本中を元気にする事に貢献していきたいと考えています。

 

 
 
 

 
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